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ショートショート サボテンの独り言

作者: レイジ

サボテンの独り言


 私はサボテン。 一般的な成人女性に飼われている。 私はメキシコ原産の種で、ヒョウモンサボテンという。 美しい豹柄と、長い棘が人気の、気高い品種だ。 ショップでも一番目立つ棚に置かれた。



 しかも私には神通力があり、思ったこと、命令したことを人間に伝えることができる。 店で女を見た時、ピンときた。 こいつ使える女だな、と。 すぐさま念じた。 私を買えと。 もちろん、その通りに使える女は私を購入したのだが、それは大きな間違いだった。



 あろうことか女は、サボテンに毎日水をやったのだ。 危うく溺れるところだった。 神通力はあっても未来予測はできないらしい。 とにかくそれからは、節度を守り1ヶ月に1回水をくれている。



 それはありがたいのだが、ここのところ水をくれない。 私はそこに不満を持っている。 いや、不安なのかも知れない。もう2ヶ月にもなる。水遣りを忘れたのかと思ったがそうではない。

隣のフリージアの水は取り替えている。 さっきから念じているのだが、一向にこちらを見ない。おい!みろ!このカラカラな土を。



 そうかそうか、そんなに花が好きなのか。だったら見せよう。 私の本気を。 私の品種、ヒョウモンサボテンにはなんと、花が咲くのだ。 小さい体から咲く、可憐で美しいるり色の花。 さっきのフリージアよりも心を打ち、感動に震えるだろう。



 だがその花を咲かすには、あと一滴水が足りない。 だからなおさら水が欲しい。 ああ!もどかしい!あと普通に喉が渇いた。 はあ、もう心が折れそう。



 あっ、また他にお花に水をあげている。 ここぞと言わんばかりに念じる。 お願いとどいてええ。 お水くださあああい。 もう限界なのおおお。



 無駄だった。 見向きもしない。 どうして神通力が使えなくなっったんだろう。 こうなれば奥の手を使うしかない。 ヒョウモンサボテンにしかできない技だ。 女が目の前を通ったのを見計らってひと吹き。 棘を目標に向かって飛ばすことができるのだ。 弾丸のように。 これで私の存在に気づいてくれるだろう。



「なあにぃ。これ。いったいわねぇ。何かのトゲかしら。それより何だか喉が痛いかも」



 何と。私の命の危機より、のどの調子を優先したの? 風邪薬とか飲んじゃって。 もう万策尽きた。 もう無理。 生存無理。 あきらめきったその時、一滴の水がかけられた。救急隊員からのものだった。



「意識ないですね。とりあえず生食点滴します。あっ、ちょっとこぼしちゃった」



ん、飼い主が倒れている。救急車が来ているようだ。



「原因は何だろうな?手がかりはあるかな?」



はぁい!あります。 風邪かもって言っていました。 強く念じる。



「おそらくこれだろう。 植物のトゲによるアナフィキラシーショック。 初期のじんましんや喉の腫れがサインなんだが。とにかく、エピネフリンが必要かも知れない。 急いで運ぼう」



 ・・・。やってしまった。飼い主を病院送りにしてしまった。 注意を引こうとしただけなのに。 棘には毒性はないのに。 まさか、アレルギーを起こすとは。 申し訳なさで一杯で消え入りそうだった。 そういえば、念も全く通じていなかったなあ。 ってことは今までのは気のせいで、私を買ってくれたのは、飼い主の意思ということになる。



 神通力がないことに気づいた私は、ますます罪悪感に駆られた。 とりあえず私はもらった生食で花を咲かせた。 帰ってきた飼い主が少しでも安らぐように。



ヒョウモンサボテンは架空のサボテンです。


てっきり棘を吹き出す種はあるのかと思いましたが、JOJOからの受け売りでした。wikiで調べてもありませんでした。

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