7.それぞれの道~盲目に慣れよう~
『と、言うわけで神眼の使い方を教えに来ました』
「何がというわけで、なのでしょうか」
『アレンさん、私そちらにいませんよ』
アレンの元にやってきたグレイソレアが、一言目で、というわけで、を使ってきた。アレンはグレイソレアにツッコミを面と向かってしたつもりが、どうやら違ったらしい。
「ハッハッ。アレンよ。お主の目の前におるのはヴェーじゃ」
「えっと、ではグレイソレアさんはどちらに?」
「あっちだよ」
目の前にいるレイヴェニアが笑いながら、訂正を入れる。サーシャがアレンの手を取り、グレイソレアの方を向かせた。
『私の神眼によれば、アレンの両目に存在している魔眼、というか神眼はまだ生きています。鍛えれば物の輪郭くらいなら見ることができるようになるでしょう』
「おぉ!」
グレイソレアの言う事を聞き、アレンは希望を持ち始める。
『まずは神力を感じることから始めましょう』
「神力。はい」
神力がどういうものなのか分からないが、アレンはやる気満々だ。グレイソレアはこの後の修行で少し酷なことになると知っているため、それを言った方がいいのかどうか悩む。いや、やる気満々だし、いっか。
『まず、神力は外部からではなく、内部からの力を具象化させたものです。そのため、心の裡にある力に気付くことが大事です』
「心の中ですか。どのように探せば……」
『ウフフ』
アレンが少し下を向き、悩み始めた。グレイソレアは口元を手で覆い、上品に笑った。
何をどうするのか、とワクワクしていると、グレイソレアが夢見視を発動させた。
「あれ?」
夢の中では視力が戻っていた。
これが僕の中。おそらくこの中で神力の元となる力を探してこい、ということだろう。
「よし、いいだろう。僕だってやればできるってとこ見せてやろう!」
拳を強く握り、天を見上げた。
「ようこそいらっしゃいました」
そちらに顔を向けると、そこには銀の髪の少女が立っていた。どこかで見たことがある。どこだ?
あ、兎だ。兎の夢見視だ。あの時に視た少女だ。
「まさか、グレイソレア様」
「? そうですよ?」
何に疑問を持っているのだろうか。グレイソレアには分からない。
「だって、銀」
「え? 私、普通に銀髪では?」
「いえ、黒髪ですよ」
「え?」
「え?」
グレイソレアに汗が流れる。
「私、黒髪なんですか?」
「は、はい」
グレイソレアが膝から崩れた。
「私はずっと銀髪のつもりでいました。まさか黒髪になっているとは。い、一体いつから」
後日、フォンに確認すると、会った時には銀髪だったが、十年戦争後には黒髪だったとのこと。
「ま、まぁいいでしょう。では、修行を始めます」
咳払いをしたグレイソレアが修行の開始を宣言した。
ちなみに、アレンが力を見つけるのに、10年以上要することになり、輪郭を感じられるようになるのはさらに先の話である。