1章 校内戦②
1章 校内戦②
今日の放課後、桜川穂花と知り合えた俺はウキウキな気分のまま、学校を後にしようとしていた。だってあんな美少女と知り合えた上にそれだけに留まらず窮地を救うということまでしたのだ。もしかしたら惚れてたり?などと考えていると、後ろから声をかけられた。
「すみません、先ほどは事情聴取に協力して頂きありがとうございました。」
何だ、さっきの風紀委員か。てっきり桜川さんかと思っちまった。
「いえ、こちらこそ先ほどはどうも。で、ええとどの様なご用件で?」
「先ほど、能力を不正使用した者どもは捕らえましたが、結構な人数がいたのでホントに大丈夫だったのかなと気になって後を追いかけてきてしまいました。」
こいつ、平凡な男子高校生かと思ったけど、あまり隙がない。しかも飄々としてやがる。
「いえ、ご心配には及びません。怪我とかはないですよ。」
「それはよかった、あの人数を相手に怪我一つないなんて強いんですね。」
何かを探る様な目で、俺のことを見ているのが少し気味悪く感じたので、俺は適当な理由をでっち上げ、立ち去ることに決めた。
「すみません、これから塾があるのでここで帰りますね。」
「それは引き止めてしまってすみませんでした。あ、後これから何か困ったことがあったら僕に相談してください。」
そう言われ名詞のような物をもらった。名前は佐々木阿良太と書いてあり学年はひとつ上の2年生だった、他にはLINEのIDも書いてあった。何となく嫌いだなこいつ、それが第1印象だった。
『ええ、先ほどの彼強いですよ。風紀委員に入れたら面白いかもですね。』
『そうか、骨のある1年生が欲しいからな。頼んだぞ』
『了解です』
家につき、俺は今日のことを考えた。おかしいのはジャミングノートをあいつらが持っていたことだ。これは裏のルートでしか手に入らないはず。なのにどうしてだ?何で高校生が持っている。街中にも能力の不正使用を禁じるため能力探知機は至る所にあるが、このジャミングノートがあれば近場の能力探知機は反応しなくなる。
「とりあえず報告しておくか」
そう思い、俺はあるグループラインに報告のラインを入れた。
翌朝、学校に登校するし自分の机に座ろうとすると
「あっ、青葉くんおはよう!」
この声は顔を見なくてもわかる。
「おはよう、桜川さん」
そこにはまるで天使かと錯覚するような顔があった。程なくして先生が怠そうに入ってきたので桜川さんは自分の机に帰って行った。
「ええー今日も問題を起こさずに過ごしてほしいと思います。あ、青葉お前ちょっと職員室来い。」
ヤベー昨日のことだろ、これどうしよう。
「青葉昨日の事はあまり問題にならなかったからよしだ。今日はお前にお客さんだ。」
「え?お客さんですか?」
と言われ後ろを振り返ってみると
「昨日ぶりですね、こんにちは青葉くん。相談を待つのもあれなのでこっちからきちゃいました。」
そう、第一印象が良くなかった先輩ともう一人
「はじめまして、青葉くん。私の名前は田中麻衣、この学校の風紀委員長をしている者だよ。」
美しい黒髪のセミロングの胸は少し控えめな、凛とした顔立ちの美女が立っていた。いや、女性だからこんなに細かく見ている訳ではないですからね?
「まず青葉くん、昨日はありがとうね。風紀委員の代わりに生徒を守ってもらって。」
「いえいえ、当たり前のことをしたまでですよ」
「ところで先輩方、そろそろ授業始まりますけど?」
「あー大丈夫だよ、許可は取ってあるからね。」
は?風紀委員の権力強すぎないか?どーなっとんねんこの学校は。
「そ、そうですか。では一体何の用件で?」
嫌な予感しかしないんだが、突っ込まないことには話が終わらないからな。早く終わらせたい。
「それはね、青葉くん。君に是非、風紀委員に入ってほしいんだ。」
昼休みになり翔太とご飯を食べていると
「どーした彪吾?そんな顔してよ」
けたけた笑いながら俺をみるな、殺すぞこいつ
「風紀委員に誘われた」
「それは光栄な事じゃないか、確かうちの風紀委員てすごいんだろ?」
そう翔太の言うとおりうちの学校の風紀委員は確かにすごい。精鋭揃いだが特にあの風紀委員長の田中麻衣は別格だ。あの美女は全国高校能力選手権(能力を使って戦うインターハイのようなもの)で個人戦ベスト8の成績を持つ猛者。しかもその猛者が率いてるせいか、伝統かはわからないがこの学校の風紀委員の権力はかなり強い。
「だけど、忘れてないか?俺Dランクだぜ?」
「確かにそうだけど、でも知られてないだろ?だってランクと能力の詳細は個人情報だからな」
「そうだけど、気がひけるだろ?」
それにあんまり目立ちたくないからなあ……
「まあ嫌なら断れよ、そん時は手伝ってやるよ相棒」
「おお、翔太!」 「2万で」 「しね」
にしても面倒だな、どう断ろうかな。とそんなことを考えていると
「あ、青葉くん!やっと見つけたよ」
おっ天使きた
「やあ、桜川さん。どうしたの?て、もしかしてなんか用事あって探してた?」
「うん、今日の朝呼び出されてたから気になっちゃって……」
マジか、気にかけてくれてたのか。嬉しすぎて思わず顔がにやけてしまう。
「それで何があったの?」
「風紀委員にならないかってさそ……」 「えっ!?ホントに?かっこいいね風紀委員!!凄いよ!」
決めた、オレ フウキ イイン ナル。
放課後、早速朝の返事を伝えに行くために風紀委員の根城、視聴覚室に行くと
「待ってください、その判断は早すぎます!!」
「でも私と佐々木の見立てだとかなり強いぞ。」
「しかし、Dランクなんですよね?」 「まあそうだが……」
あーなるほどね、風紀委員は俺のランクを調べて色々揉めてる最中か。まあ朝の俺なら引き返していたが今は違う。桜川さんがカッコいいと言ってくれたんだからな!(風紀委員がカッコいいのであってお前のことではない)
「失礼しますー」
「あ、青葉くんわざわざすまないが今はちょっと……」
「そちらの先輩が反対なされてるんですよね?」
そう俺が言うと、そのさっき反対していた先輩は俺の方を向き
「ああ、そうだ。Dランクごときに我が学校の風紀委員は務まらん」
「なら証明しますよ」
田中先輩は先のことを察したのかニヤニヤしながらこちらを見ている。
「どうやってだ!!」
「この学校では模擬戦が認められていますよね?田中先輩」 「ああ、風紀委員長の許可があれば行うことができるぞ」
「では、模擬戦を行いたいです。誰でもいいので」
「なっ!!ふざけているのか!お前ごときでは!」
「だから、戦って証明しますって。俺が強いって」
「いいだろう、当然模擬戦の相手は俺が務める。」
「はい、お願いしますね。先輩」
「田中風紀委員長〜トレーニング室の使用許可とってきましたよー!」
途中からいないと思ってたら、先を見越してもうそんな行動してやがったのかあの先輩……やっぱ苦手だわ。
トレーニング室を手配した張本人の佐々木阿良太は細い目でこちらを射抜くように見つめていた。
「では、これより模擬戦を始める!」
「審判は私が務めるのでオーバーアタックなどの行為はしないように」
田中先輩がそう言うと、俺の相手となる先輩が
「俺は2年C組の斎藤司だ」
「1年B組の青葉彪吾です」
「それでははじめ!!」
開始の合図とともに俺は能力を発動した。そして相手を見据えると相手も同じように能力を発動していた。なるほど、あれだけ大口叩くだけはあると思っていた。斎藤先輩の周りには炎が発生し竜巻のように蠢いている。炎を発生させ操る能力と検討をつけた俺は相手に高速接近することにした。
「斎藤先輩は炎を操る能力ですか?」
「そうだが、お前のそれはなんだ?」
「まあ、試合が終わったらいいますよっっ!!」
俺は斎藤先輩の後ろに高速で移動し、それに気づいた斎藤先輩が後ろに火炎弾を飛ばしてきたが俺はそれを一閃し懐に入り込んだ。だが斎藤先輩も瞬時に体の周りに炎を纏わせようとしたが
「俺のが速い」
高速の居合術で斎藤先輩の腹に刀を叩き込み斎藤先輩が膝から崩れ落ちたところで勝負は決した。
「そこまで!!勝者青葉彪吾!」
試合が終わり、田中先輩が近づいてきて
「青葉くんの能力はあまり見ないタイプの能力だね」
「ええ、能力名は『月の刀』(ムーンソード)で自分の半径5メートル以内に刀を1本発生させその刀に自分の身体エネルギーを流し込み強化したり、斬撃を飛ばす能力です」
「その説明だと何でDランクなのかわからないのだが……普通にCランク相当はあるだろ?」
「いえ、デメリットとして太陽光が照らしている場所、例えば日向では使えません」
俺は少し微笑みながら言うと田中先輩は納得したように
「それは、まあ何ともなデメリットだね」
と同じく微笑みながら言ってきた。すると斎藤先輩が起き上がり
「峰打ちじゃなかったら死んでたな、強いな……」
「いえ、でもこれで風紀委員入りも認めてもらえますよね?」
「ああ、強い奴は歓迎する。」
ガッチリ握手をされた。いや急に変わりすぎだろこの先輩
と言う訳で無事俺は風紀委員入りを果たした。風紀委員の顔合わせは来週なので今日は帰っていいと言われ、帰路につこうとすると、
「あ、青葉くんそういえば言うのを忘れていたよ!」
「どうしました、田中先輩」
「来週あたりに学年サバイバル、通称校内戦があるのは知ってるよね?」
あー五十嵐先生がなんかちょろっと言ってたやつか
「はい、知ってますけど……」
「風紀委員はその校内戦で上位20位以内に入れなかったら除名だから、頑張ってね」
おい、マジかよ。てか校内戦の詳細知らねーよまだ……。
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