七十一【念動力使い】
「恵華!」
チッ。何だってんだ……なんとなくここに来ただけで、間に入って必ず助けるとは言ってねぇし。
それに、こんな訳分かんねぇ事に首突っ込んでたから体中傷だらけになったんだろうし。
何か胸が気持ち悪ぃ、何だこの感じ……怖ぇ。
恵華が中に入って行ったにも関わらず、突然小心となり追いかけもせずにその姿を壁の外から見ているだけのクロウは、恵華の吐き捨てた言葉を思い出しながらも、自分は間違ったことは何も言っていないと頭の中で言い訳の様に繰り返していた。
「ストーップ!なにやってるの!?危ないじゃないですか!!」
「!?」
恵華の叫ぶ声と共に念動力の攻撃は止まり、辺りの宙に浮いた小石や割れた木材が地面に落ちると、フードの子も足を止め恵華を見て呆然としている。
「君、そんな凄い能力使ったらこの子死んじゃいますよ?」
恵華の言葉に少女は浮いた体を地面に下ろし頭を傾け、誰だ?という顔をしている。
何気なく恵華は周囲を確認すると、茅屋とも言い難いボロ屋に生活感があった痕跡がある。
フライパンやポット、衣類などもそこら中に散らかっているが、念動力のせいなのだろう、全て使えない程にボロボロになっていた。
何でこんな所で争ってるんだろう?それに……これだけの事が起きて音もうるさいはずなのに、何で誰も外にいなかったのかな?
「おねぇさん綺麗なドレスだね。中央区の人?何でこんな西の果てに来たの?」
念動力を使う少女が恵華に話しかけてきた。
中央区とは、先程ガイア達と別れた城とその周辺であり、そこから遠く離れた北西にある場所がこの貧民街。
外からでは埃が舞っていたこともあり、しっかりと外見を確認できなかったが、近くで見てみるとこの少女もフードの子と違ってドレスを身にまとい綺麗な格好をしており、とても貧民街の住民とは思えない。
「え〜っと……国門の方に居たんだけど、微かに音が聞こえてね!何だろうと思って来てみたんですよ!」
恵華は必死に考えながらも苦しい返答をしてしまっていた。
国門には警備兵以外はほとんど居ない場所で、今の恵華の様にドレスを身にまとい、見るからに中央区の住民が一人で居るのは非常におかしい。
けれども、フードの子供が居ることもあって、クロウの存在を話して良いか分からず仕方がなかった。
すると嘘を見透かされたのか、少女は不気味な笑顔でクスクスと笑いながら恵華方へ歩いて近づいてきた。
「おねぇさん……種族は何かな?わたし達と少し感じが違うね……どうやってここまで来たの?探知能力でも持ってるのかな?」
質問をしながら少しずつ近付く少女は、恵華がこの世界の人外種とは異なる人種と勘づいている様子。
「け……私は、えっと――」
少女の迫力と質問の内容に恵華は動揺してしまい、何も返せなくなってしまった。
必死に誤魔化そうと言葉を考えるが、恵華は嘘がつけない性格で何も出てこない。
「私、恵華って言うの!あなたは??なんてお名前ですか??」
考えるに考えて出てきた言葉が自己紹介。
少女は何も答えず、そして表情を変えずに近付いてくる。
恵華の間合いまであと一メートルというところで、咄嗟に後ろへバックステップし下がった恵華。
すると、その動きで戦闘慣れしているとみた少女は、突然両手を広げ出し、恵華の周囲に無数に落ちている木材の破片や小石を浮かせ、一気に恵華に向け飛ばし始めた。
「!!」
危ないと思った恵華は、持ち前の運動神経と人間離れした素早さで四方八方に動きながら全て当たることなく回避した。
「へぇー、おねぇさん凄いね。それだけ動けるなら手加減なんていらなかった……ね!」
少女は再度能力を使い、先程よりも速さを増して周りにある様々な物を恵華に次々と飛ばした。
それでも恵華は、それ等の軌道をしっかりと見極めギリギリながらもかわし続けた。
持っていたバッグを置いて、大きな家具や小石のみの飛来は受け流すようにグラビティ・ウォールでサラりと受け流し、恵華の身体能力は凄まじいものだった。
しかしながら避けるのが精一杯で少女に近く事ができず、フードの子供と同じ様に防戦一方となってしまっている。
それでも諦めずに隙を狙い避けるに達して立ち向かう姿勢は、後ろで負傷した足を押さえながら見ているフードの子供も驚いていた。
それに苛立ちを覚えた少女は、更に念動力を加速させて物を飛ばし始めた。
くっ!これはヤバいかもですね……。
流石の恵華も避けきれる速さの限界か、三割程は勘でやっと避けられる程の危うさとなり、このままだと体力切れで潰れてしまうと危機を感じた。
それを外で見ているだけだったクロウといえども、恵華の危機的状況に思わず動こうとしなかった体が反射的に動き立ち上がった。
しかし、体は動こうとするが気持ちがついていかずにまたしゃがみ込んでしまった。
腰に入れている銃を取り出してはみるが、相手は念動力使い。
殺せる保証は無く、しかも相手は子供。
……どうすりゃ良いんだ。
すると、恵華の真下から地中に埋まっていた小石が床を突き破り飛んでくると、それには対応が遅れ、数発足や肩を強打してしまい、頬や額も掠めてしまった。
当たってしまった箇所は激痛が走り、額からは血が流れ片目を塞いでしまう程に。
それでも恵華は根性で避け続けるが、動きが段々と鈍くなり、側転などで手を使い避けるようになっていった。
「うざったいね……ちょっと疲れるけど、これでおしまい」
少女は両手を上げながらそう呟くと、微々たる振動がボロ屋を震わせ出した。
何だろ?足が……地面から振動が……!?
足伝わる振動に地面を警戒していると、突然床を突き破り出てきたのは大きな岩石。
少女は地中深くから人の四、五倍はある大きさの岩石を念動力で引っ張り上げ浮かしている。
「よく分からない力も使うみたいだけど、これはどうかなぁ?……死ね」
「ヤバいですね……」
見た事もない程大きな岩石で何の物質で固まっているかも分からない物を飛ばされると、グラビティ・ウォールで止められない。
恵華は焦るが、後ろにいるフードの子供の事も考え、一か八かでグラビティ・ウォールを使おうと決心した。
すると、少女は岩石を頭上まで持っていき、両手を恵華に向けると同時に物凄い速さで岩石をぶっ放した。
「お願い!!」
恵華は岩石なら鉄を多く含んでいると、両手を前に出し、グラビティ・ウォールで減速させられる事を強く望んだ。
すると、今まで後ろの方でしゃがみ込んでいたフードの子供が突如恵華の目の前に現れ、そのまま恵華を抱えて横に飛び、岩石を避けようとした。
しかしながらそれを正面から見ていた少女は、フードの子供が力む事が困難な負傷した足の方向へ飛ぶのを察し、瞬時に岩石をその方向へ逸らした。
「ダメ!離れてください!!」
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