六十九 【貧民街】
「っつーかあいつ等追ってくるって言って全然来ねぇじゃん?」
クロウか恵華の生命力を追ってくるものだと思いきや、全く来る気配がない。
町に入ってこれからどうしようかと恵華と話していると、少し離れた所から変わった生命力をクロウは感知した。
何だ?街に居た人外達とはまた違う感じの生命力が二つ……大きいのと小さいのがあるな。
「クロ様??」
恵華はジッと遠くを見つめるクロウに問いかけるが反応は無く、頭を掻きながら考え事をしている様子。
何だか物凄く向こうに行きたいんだけど……行きたくねぇなぁ〜。恵華もいるしなぁ〜。
不思議とクロウは本能的にその場所へ向かおうと考えるが、逆に行かない方が良いという感覚にもなっていた。
ガイア達も待たなければ行けない事もあり、煙草に火をつけて自分が何がしたいのか、どうしたいかと悩んでいた。
すると恵華はクロウの顔を覗き込み、何も言わずに一方向を眺めているクロウに過去何度も見覚えがあるようで、何を考えているか察しがついた。
「……向こうに居る人外の人に何かあったんですか?もし行くんでしたら恵華もついて行きますよ?」
「え?何かあったかなんて……あるのかな?」
先程からクロウは心配そうな表情を浮かべて遠くを眺めていたと恵華は言う。
クロウは対人外種戦闘員として、見ず知らずの人間に何があろうが構う事はなかったが、人外種に限ってはどんな事でも首を突っ込んでいたらしい。
近くで人外種の気配を察知しすれば、時には助け、時には排除する為に駆けつけていた。
恵華からすると、その時と全く同じ顔をしていたので、自覚は無くても体がその時と同じ行動を取ろうとしてるのではないかと言う。
「そういや俺って地球では人外種囲ったり潰したりしてるんだったな。……そんじゃあ行くか?」
二つ感じる生命力の強弱からして、どちらかが殺されそうになっている可能性がいるとクロウは予想した。
しかし、今のクロウはL,B導入剤無しでは限界突破の能力は引き出せず、自らは使う事はできない。
過去の出来事に思えるアジトで見た夢の中の自分強さは無い。
少し不安ではあるが、いざとなれば魔法を駆使してどうにかしようと思い急いで向かった。
転移して来たこの場から離れるため、ガイアとジハードにとりあえず念話を送り伝えようとするが、なぜか応答が無い。
何やってんだあいつ等?
――その頃、
「おねぇちゃん!向こうの遊戯場行こうよ!」
「ねぇ君、どこの区から来たの?」
何も考えず子供の姿で迂闊に異能力を使い、多くの人の目に触れてしまったため、
ガイアとジハードは街の子供達にしっかり服や腕を掴まれ身動きが取れなくなっていた。
二人共すぐにでも移動したいが、周りに大人の目もあるためにどうにも邪険にできず、無理矢理突き放すわけにもいけずにいた。
「み……みなさん!分かったからドレスを引っ張らないでください!」
「俺はこの国の者では無い……ぬ!?貴様!それは和菓子ではないか!?どこで手に入れたのだ!?」
二人にクロウの念話が届く訳もなかった――。
念話が通じなくても、その内こちらの生命力を探って来るだろうとクロウと恵華は目的の場所へと走っていた。
「クロ様!今ドレスにヒールだから魔法でピョン!ってしてくださいよ!
それかお姫様抱っこかおんぶしてください♡」
「アホか!悪ぃけどこのまま行くぞ!感知した生命力の場所に空間転移すりゃ楽だけど、今の俺じゃ座標が定まらねぇ!」
もしも目的とする場所が戦場となっていた場合に、ど真ん中に空間が開いた時の事を考え断念した。
しばらく走って行くと、辺りが明るく見渡しの良かった国門とは打って変わり、街灯のほとんど無い薄暗い道となっていった。
今日は国中が祭りで賑わっているにも関わらず、人気がまるで無い。
所々に木造の平屋が建っているがどこも明かりも灯っていない茅屋がほとんどだった。
城から見下ろしただけでは中心街しか確認できなかったため、分からなかったこの町の現状が伺えた。
城を中心に広大な町を外敵から高い壁で囲い守られているが、遠く離れたこの場所は地球で言うスラム街だった。
「建国して千年足らずのこの国にこんな所が。ガナフのおっさんは何やってんだよ?」
「異世界でもこういうのは変わらないんですね……」
地球にもある貧民街とそう変わらない光景を目の当たりにし、その寂寥感に心苦しくなるクロウと恵華だった。
目的地まで舗装もされていない暗がりの道が続き、たまに感知する浮浪者であろう小さな生命力には気にとめず走っていると、いつの間にか争っていると思われる二つの生命力の近くへ来ていた。
明らかに他の生命力とは挙動がおかしいのだが、外には人気が無いので平屋の多いこの場所は特定が難しい。
この辺りなんだけど、外に居ないなら……めんどくせぇけど一軒一軒覗いていくか。
[――パキッ……ドーーン!!]
「!!!?」
突然大きな木造の建物から爆発音が聞こえると、屋根が崩れ半壊した。
「あの汚ねぇボロ屋からだ!行くぞ!」
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