六十八 【キャンディー】
「貴様も今は人種なのだ。人として振る舞い、人として楽しめ」
ガイアは貰ったキャンディーを周りの目を気にもせず普通に舐めている。
魔王様がまるで本当の人種に見える。この五千年で何があったのでしょうか……。
キャンディーを舐めるガイアをジハードがジッと見つめていると
「ん?嬢ちゃんは坊やのお姉さんかい?なんだ、早く言いなよ!ほらっ、あんたにも」
「いえ、私は……」
店主はジハードをガイアの姉と勘違いをして、もう一つキャンディーをジハードに差し出した。
姉と言われた事に対してガイアの反応を見ると、特に不快にも思っていない様子。
二人は傍から見れば十代前半の弟と後半の姉に見えても仕方ない程の外見。
ガイアが人として振る舞うのならば、ジハードも今の自分は人種だと心がけるよう努力しなければと思い「ありがとうございます」と動揺をしつつもキャンディーを受け取った。
この様な物を食べるのは初めてなようだったので、しばらく貰ったキャンディーを見つめた後にペロっとひと舐め。
「……甘い」
ガイアはその姿を見て静かに微笑み、二人並んでキャンディーを舐めていた。
すると、突然大声で笑いながらクロウが二人の前に姿を現わした。
「ダァーハッハッハ!!お前等何それ?ペロペロキャンディー?」
「何で笑うんですかぁ??二人並んで仲良さそうですねぇ!微笑まぁ〜♪」
キャンディーを同じタイミングで舐めているところに丁度クロウと恵華が戻って来た……のではなく、二人を隠れて一部始終見ていたようだ。
「いや、別に食うのは良いけど、何で二人並んで同じタイミングで舐めてんだよ?っつーかお前等が姉弟って……ブァーハッハッハ!!(笑)」
爆笑するクロウ。
すると、段々とよどんだ重々しい空気が周囲を流れる。
絶えずに笑うクロウに我慢の限界がきたガイアは魔法を使い、赤い光の輪を複数人生み出しクロウの肩から足首まで全て拘束。
ジハードは聖神気法で口元を喋る事ができないように、紫色の長いテープの様な物を出し拘束。
「んーっ!んんんんーっ!!」
口から足までバインドされたクロウは地面に倒れ、塞がれた口で叫びながら必死に転がり何とかしようと暴れるが、そんな事で解ける訳もない。
恵華が「すごーい!」とはしゃぎながらも、一応巻きついたバインドを解こうとするが、繋ぎ目もなく為す術もない。
辺りを歩いていた通行人がその場で立ち止まり、拘束されたクロウを見てなぜか笑い声が。
「子供なのにうまく能力使って凄いねぇー!」
「大人がぐるぐる巻きにされてるー!(笑)」
何だ何だと人が集まり、バインドされたクロウを見て周りは喜び、ガイアとジハードに拍手喝采。
町の民は魔法を魔導具無しで使う者を知らず、神聖法など現代に生きる人外種が知る由もなかったので、二人はバインドの特殊能力持ちだと思われたようだ。
その中拘束されて倒れて惨めなクロウはどうして良いか分からず、暴れるのをやめてガイアに念話を送った。
「「おい……人が群がり過ぎだ!早くこいつを解け!恥ずいわ!!」」
「「まぁ良いではないか。黒龍の顔を見ろ」」
ガイアに言われジハードを見ると、先程まではいつもと同様に凛とした顔つきであったが、今は何とも言えない緩んだ表情。
照れてはいるが、少し喜んでいるような表情していた。
人種に褒められ、喜ばれ、自分の周りに人が集まり注目されている事に慣れていないからなのだろう。
クロウはしばらくジハードの表情に見とれていた。
可愛い……微笑ま〜……っじゃねぇ!!
「「分かるけど、これ解けや!もう良いだろ!!」」
クロウは必死になって念話を送るが、いつの間にかガイアとジハードは人々に囲まれそれどころじゃなくなっていた。
「可愛い子だねぇ〜!お嬢ちゃんの種族はどちら?」
「え、あの……」
あまりにも多い人種に囲まれたジハードは、流石に困り果てて疲れてしまい、この場から離れたいとガイアに念話を送った。
ガイアも傍に寄ってくる者達に次々頭を撫でられ、不快には思わなくも辛くなっていった。
すると途端に走りし、人と人の合間を抜けてクロウの元へ行き拘束を解除した。
「小娘と共に何処か適当に転移しろ!俺と黒龍は自らの足で追う」
そのやり取りを見てジハードも口元の拘束を解き、クロウ完全に身動きがとれるようになった。
ガイアが何を焦っているのか分からずも、そのまますぐに恵華を掴んでその場から転移し消え去った。
――転移した先は国の外。
クロウとジハードが潜った国門の前だった。
ん〜適当って言われて転移するとこういう事になるのね。
人の生命力を辿らず、安易に場所だけをなんとなく思い浮かべた結果が、転移魔法を使って空間を開いた地点。
国門の目の前に空間が開いたため、突然現れたクロウと恵華に警備兵二人が驚いていた。
転移して来た事情を説明すると、街の中で攻撃的な能力、珍しい能力はあまり使わないようにと注意を受けた。
クロウ達はいくらレイチェルの友人でガナフ国王と面識があるとしても、他所者の以外の何者でもない。
数多くの人外種が居るこの国の中で、素性を知った者にどのように見られ、どのように思われるか分からない。
まだ国民に知れ渡っていないジハードにも慎重に行動をするよう話さなければと、転移せずにクロウと恵華は国門を通り中へ入って行った。
数ある中からこちらを見て頂きありがとうございます。
気が向いたらブックマーク、評価など頂けたら幸いです……!




