六十七 【五千年振りの会話】
「俺はいずれ……本来の体を取り戻したいのだ。
何年かかるか、どのような形でそれが実現できるか今はまだ分からぬ。
だが、その為に俺に課せられた呪いの元凶を跳ね除ける者が必要なのだ」
ガイアはジハードを真っ直ぐ見ながら真摯な姿勢で話す。
体を取り戻すとは、以前クロウにも話していた"本体"の話なのだろうか。
体を取り戻すという悲願を果たす、現在はその為の準備期間だとガイアは言う。
「無茶です!あの時も無限界を越える為に魔王様はどれ程の言霊を使われたかお忘れですか!?
クロウは魔王様の末裔かもしれませんが、寿命の短い普通の人種となんら変わりのない者……五十年そこらでは魂の数が足りません!不可能です!!」
"無限界"とは何なのか。
そしてジハードの口からガイアが今の身体を依代とする際にクロウに使わせた言霊の能力ついて言及し始めた。
「貴様は知らぬ事。
彼奴にはこれまで幾度となく驚かされた。
独自の能力"限界突破"を魔法に重ねることができ、魔力を他人に与える事も自ら可能とした。
彼奴は言霊だけに頼らずとも魔法と限界突破、そして"覚醒"。
今俺の中にある他の呪われた能力を使える様になれば……俺の因果を断ち切ってくれるやもしれん。
もうこの先……輪廻転生を繰り返させてもクロウのような者は訪れはしないだろう」
ガイアはクロウに何かを期待しているようだ。
黒い霧の中で言っていたガイアの"因果"。
この先クロウの可能性を鍛え上げ、ガイアの力の全てを与え、全てを断ち切らせる。
これはガイアの末裔にも深く関係があり、この先必ずクロウにも呪いが降り掛かると言う。
それを聞いてジハードは酷く苦悶の表情を浮かべていた。
普通の人間が別の世界からやって来た者に末裔と告げられ、特殊能力や魔力を与えられ、それ等は全て祖先の悲願を果たす為。
今はまだ気楽に過ごせているクロウを思うと痛ましく無残で仕方なかった。
肩を落とし黙り込んでしまったジハードに対し、ガイアも言葉を失ってしまう。
ガイアも明確な道筋は決まっておらず、現状は目の前の問題を片付けながら決めていく。
地球での問題やクロウの置かれている状況下で、実際には何も目処が立っていなかった。
するとジハードは、クロウに会い、クロウファミリーなどの話をしてくれた恵華に出会った事で、自分の中では他人事では無くなっていた。
ジハードはガイアが呪いを受けた経緯とその大部分を知っている。
だからと言って、いくらジハードでもその呪い自体には対抗する手段も、解決策も無い。
「……魔王様、クロウは私を修行相手に選んでくれました。
どこまで鍛えられるか分かりませんが、あの人種を私が見定めさせてもらいます。
魔王様には悪いですが、もし見込みが無ければこれから先、クロウやその周りにとって良い事は何もありません。
それに、魔法という大きな力を持ってしまい、自害を考える前に暴走してしまう恐れがあります。
その時は私の手で葬り去ります。必要であればあの地球を囲う銀河諸共……構いませんね?」
「……」
ガイアの成し遂げようとする事に対し、それに値しなければクロウだけでなくその周りの人間全て殺す。
ジハードはガイアの為を思い、力になろうとしている訳だが、なぜ"殺す"必要があるのか。
呪いに関わる因果関係により、クロウ以外にも影響を及ぼす事だからなのだろうか。
しかしガイアは、そこまで言われても何も言い返せなかった。
それはジハードの優しさからくる苦渋の決断である事を分かっていたからである。
そもそも龍神族は守護龍となる事もあるが、何事にも深く干渉する事はなく"護る"よりも"抹消"を行う方が多いのが龍神族。それは神の気まぐれ。
かつて何も力を持たない人種と共に時を過ごしたのも気まぐれであったが、ジハードは一つの事件によって人種と関わるを避けてきた。
この大陸とタスリーフ国を護っているのは、この世で唯一慕うガイアの頼みであったからだった。
しかし、こちらの宇宙へ来て地球に降り立ち、多少なりとも人種と関わりを持ってしまった事に始まり、
タスリーフ国に住む人種やクロウに対し情が湧いてしまっていた。
「まだ私はクロウの人格というものが分かりませんしそれほど興味もありませんが、恵華の話を聞くに例外なく親しまれる人間だと認識しています。
そうすると地球にはクロウが守るべき者達が多いと見受けられますので……その者達は要注意ですよ?」
「分かっている。それ等全てを踏まえた上で俺は彼奴の前に姿を現したのだ。
案ずるな、彼奴の周りには監視をしつつも肉体や精神面に世話する者も多い。護り守られうまくやっていけるはずだ」
クロウよりもクロウの周りにいる者に注意を促すジハード。
それに対してガイアはクロウファミリーを信じてきっているような言い回しをする。
何処からくる自信なのだろうか、クロウの記憶が欠落する前から恵華やエドガー達を見て知っているから言える事なのだろうか。
ジハードはため息を吐きながら「どうなっても知りませんよ」と未だ見ぬクロウの可能性を受け入れ、ガイアと共に見守る事を決めた。
「それにしても二人はまだ戻りませんね……そういえば、魔王様はなぜ人間と番いに?」
忘れていた質問をジハードは思い出しガイアに問うと、少し動揺した素振りを見せながらも平常心を立て直し答えようとした。
しかし
「そ……それは、大した事ではない!彼奴は俺に――」
「おぅ坊や!見ねぇ顔だな~、それ欲しいのか!?しょうがねぇなー……ほら!持ってけ!」
話の途中で割り込んできたのは店の店主。
ガイアが立っている目の前には、露店に並ぶ様々なキャンディーが並んでいた。
子供の姿をしているため、何気無く見ていた店主が気を利かして串に刺さったキャンディーをタダでガイアに渡した。
「な……そこの人種、この御方は――」
「良いのだ黒龍。分からぬ者が正しい……おじちゃんありがとう!」
突然本当の子供の様に振る舞うガイアに驚くジハード。
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