表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/183

六十五 【通貨】

 

 入り口の向こうで見える光景にクロウは目を疑った。


「なぁガイア。お前手の平サイズの小さな妖精はいないって言ってなかったっけ?」


「あぁ、その通りだが?」


「じゃあ……こいつ等は何?」


 広場から入る町の入口には首の無い兵士が門番をし、宙を舞う妖精達がクロウ達の周りを飛び回り笑いかけている。


「きゃー!妖精さん!?可愛いー!こんばんは〜!」


 恵華は妖精達に興奮して走り回り、クロウは辺りを見回しながら困惑している。

 その姿を見てジハードがクロウの隣に来ると、手のひらを上に向けて前に出し始めた。

 すると、周りで飛び回る妖精がジハードの手の平の上や肩に乗ってきたりと集まってきた。


「可愛らしいですね。これは光を生成できる能力に他の者何か他の能力を重ねていますね。

 マナの運ぶ妖精に似ていますが、実際にはこれ程小さくはないですよ」


 この飛び回る妖精達は光で形作られたもので、妖精に見えるだけの光の塊。

 祭りの為に人外同士で能力を重ね作り出し、町の人々を楽しませているようだ。


 本当の"妖精"の大きさを知ってるはずなのにあえて俺が知っている小さな"妖精"を作ったって事は……元は人間として地球で暮らしてた奴等って事だよな?


 地球で伝わる伝説や空想物語を知りつつ、能力を持った者がこちらで幻影として形にしている。


「能力ってのはすげぇな〜!このデュラハンみてえな兵士も能力か……良いねぇ!!」


 クロウも恵華と同じように興奮し、早く人外種の者と絡みたいと足早に街に入って行った。

 歩きながら街並みを見て行くと、西洋風の建物が並び、部屋の灯りは全て点灯している。

 平原から見た国の綺麗な灯りは、街灯だけでなく建物の灯りを含めた全ての町の光だった。

 暖色に統一された街並みは歩いているだけで心が和み、クロウの今置かれている現状を忘れてしまうほど。

 街の中に入って行くと段々と人が姿を現し、沢山の露店も視界に入ってきた。


「うおー!すげぇ!祭りじゃ!!何かおもろい物売って――あれ?

 っつーか金ねぇじゃん?ドルって使えんの?」


「もぉ〜クロ様(笑)使える訳ないじゃないですかぁ〜。

 レイちゃんからこの国のお金くれたんで大丈夫ですよ☆」


「あの姫様気が利くじゃねぇか!」


 クロウがジハードを迎えに行っている時に、恵華がこちらの世界の菓子や小物などの買い物がしたいと話しをしていた。

 そこでレイチェルがこの国の通貨の説明と、「皆さんで存分に楽しんでね」と袋一杯に多すぎる位の額を恵華に手渡してくれていた。


「えっと……これいくらあんの?」


「リルルちゃんが言うにはアメリカで車が買える位って言ってましたよ」


 どんだけ……アホかあいつ。

 袋の中から物を取り出し、恵華に硬貨の説明を受けた。

 日本の紙幣に部類される"金"銀"銅"の硬貨に、更に小さな銅硬貨は小銭に部類される小額通貨となるようだ。

 日本の通貨単位に似ていてとても分かりやすく、すぐに覚えることができたが、その中にカード型の金属なのかも不明な物が四枚入っていた。


「この虹色の石?何だ?」


「これはこっちの世界で発掘された宝石らしいですよ?」


 タスリーフで発掘された中の珍しい鉱物の一つ"モナソナイド"。

 様々な光を何億何千万年という年月吸収し続けた石を更に研磨して小さく磨かれた石。

 通貨以外での取引で金や他の価値ある宝石を使われるのは地球でもある事だが、

 タスリーフでは金、銀、銅硬貨以外の取引は原則禁止。

 しかし、例外として王族や貴族が高額品の取引で使う際にモナソナイドなどが認められているようだ。

 価値としては一枚金貨百枚分となり、商人が国に返還すれば換金として金貨と交換も可能だと言う。


 っつーことは日本円で五百万ちょっと……物価が高いのか?


「じゃあ……使うかどうかは置いておいて、モナソナイドは一人一枚ずつ持って、硬貨も四分割するか」


 クロウは一人通路から外れて路地に入り、人気の無い所で硬貨を分けていた。


 大体分けられたな。端数は恵華にやるか……あっ!?


 路地に置いてあった木箱の上で硬貨を分けていたら、突然クロウの脇から手が伸びてくると、硬貨を数枚盗られてしまった。

 驚きながらも振り向きざまに裏拳を放ったが、人並外れたスピードで走り逃げられてしまった。


「う、うるぁぁー!!……クッソ!早過ぎんだろ!!」


「クロ様ー!どうしましたかぁ!?」


 クロウが硬貨を分けている間、露店を適当に見まわっていた恵華達が怒鳴り声に駆けつけて来た。

 事情を説明すると、ガイアは警戒しなかったクロウが悪いと言う。

 どこの世界も同じで、どんなに国が発展しインフラ整備され住み良い国や町になったとしても、

 社会形成されれば富裕層があれば貧困層は存在する。

 現状は大陸でただ一つしかない町なだけで、地球ならば都と行って良いほど広大な町。

 宿無しの路上生活者だけでなく、物乞いや国を頼らずに盗みを仕事にする者も多い。

 クロウの金銭を盗み取り逃げて行ったのはフードを深く被った子供だったが、

 後ろ姿しか見る事ができなかったため、顔は確認できなかったようだ。


「あのガキ〜……まぁ、生命力は何となく覚えてっから会ったら分かるだろ」


「どれくらい盗られたんですかぁ?」


 恵華に言われ確認してみると、銅貨を四、五枚だけで、金貨と銀貨は一枚も盗られていなかった。

 子供が銅貨以外を持っていると面倒な事でもあるのか、しっかり見定めて掴んだのだろう。


 確かに日本でもあんな小さいガキが一万円札なんて持ってても使いづらいだろうし、まぁ〜そんくらいなら良いかな。


 そもそもクロウが警戒を怠ったのが悪く、盗られたのも少額だったので見逃そうと考えた。

 するとジハードが、逃げた子供の生命力跡を辿ると言い出し、後を追う気になっていた。


数ある中からこちらを見て頂きありがとうございます。

気が向いたらブックマーク、評価など頂けたら幸いです……!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ