六十四 【街の灯り】
二人がうるさく騒いでいると、警備兵がその様子を見て目が点になりポカンとしている。
「にゅわー!二人共うるさいよぉ!これは町の職人さんが能力で作ってくれた乗り物なの!
下まで送るだけで別に何にもしてこないから」
ミルルが言うには城が建てられた当時に町の能力持ちが作った物で、その者は今でも商人として町には居るようだ。
城から戻る際は皆町まで階段を使わずこの"乗り物"を使って下まで行くという。
「そんじゃあ城へ来る時はこの長い階段を上がんなきゃいけねぇのか!?」
「それが決まりなにゅっ!誰でもここを登ってくるなら誰が来たかすぐ分かるからね」
王族や認められた者以外は飛行での城への立ち入りは禁止されており、
警備兵から報告を受けていない者が城へ侵入しようとした場合は即拘束され地下牢行きとなる。
「マジかよ。っつーか俺等はそんな中転移魔法使って来ちまってるじゃんか?大丈夫なん?」
「クロウ達はガイア様のお連れ様となってるから大丈夫だにゅっ。
そもそも転移なんて事できるのはガイア様とクロウ以外いないから」
なるほど……ここはここで規律とかしっかりあるんだな。
クロウの中で文明の遅れた田舎国と勝手に思っていた事を反省し、四人はこの謎の乗り物に乗って町まで下って行った。
所々にある外灯に照らされ、木の椅子に座りウネウネと人の歩く程の速度で下って行くが、
階段の方とは違い回り道となるのでそれなりの距離があった。
「遠いなぁ〜。これ……足掛けがねぇし、前に伸ばせたら楽なのに」
クロウがぼやくと椅子の座面が突然変形し始め、言った事を聞いていたかのように足を伸ばし掛けられる程長く伸びてくれた。
「うおっ!足掛け!すげぇなこいつ!!ほぅー楽になったわ!
よしよし……ありがとなぁ〜ウネウネ」
「あっ!クロ様ずるい!恵華もぉ!」
勝手にクロウは"ウネウネ"と名前を付け、
恵華も足を前に伸ばしたいと口にすると、同じように変形し始めた。
ガイア曰くこの丸太は生き物では無いが、可能な範囲で形は変えてくれるようだ。
しかし、城から町に下りる為だけに木材から作られた物なので、他の場所の指定や宙に浮くなどは無理のようだ。
至る物を色々な形で作り出せる能力なのだろうか。
クロウは興味が湧き、町で会うことは出来ないのだろうかなと思っていた。
ゆっくりと町へ近づいて行くと少しずつ賑やかな声が聞こえ、不思議と懐かしい感覚が過ぎる。
上から見下ろす町は暖色の灯りで満ち溢れ、どことなく日本の祭りを思い出させる。
クロウは忘れようとしていた、思い出さないようにしていた何事も無かったあの頃の記憶達が甦ってしまった。
ニッポン……日本の祭りに行きてぇな……。
沸き上がる感情を指で太股を力一杯抓って必死に押し殺す。
そこでクロウはふと思った。
神の力と言われるこの魔法が使えるなら今の置かれている状況などどうとでもなるのではないかと。
邪魔なマフィアを全員一掃する事も、日本に転移魔法を使い戻ることも容易い事だ。
しかし、そこには疑問が上がってくる。
なぜ記憶が欠落する前の過去のクロウはそれ等をしなかったのか。
なぜ同じような境遇となった恵華もクロウにそれ等を望まないのか。
そもそも日本に戻れない理由はドクから聞いただけで事実を目の当たりにした訳では無いのだ。
これには何かあると、ブランドンに会いに行った際問い詰めようと決めた。
大きく深呼吸し、落ち着いた頃合いで改めて町の灯りを見ると、なんとも不思議な街灯だった。
これはローソクなのか?なんか灯りが揺れてるようにも見えるけど……。
今通っている道の壁に掛かる外灯も見てみると、同じように不思議な灯りだった。
勝手な想像で電灯やローソクだと思っていた灯りをよく見てみると、
硝子カバーの中を発光する生き物が無作為に動いていた。
蛍……じゃねぇよな?色も違うし発光が強い。
これも人外の特殊能力で作られた物なのだろう。
もしかすると城や町の建造物は、全て能力で建てられたものかもしれない。
ガイアが手を貸したというぐらいだから、魔法も結界以外にも魔法の力も加わっているのだろう。
そんな事を考えながらウネウネの椅子に揺られ綺麗な灯りで満ち溢れる町を見ていると、すぐそこはもう町と城の間の広場だった。
坂道が終わり広場の中央まで行くと、ウネウネは触手を引っ込め屈むように地面に椅子をつけた。
四人は椅子から降りると、役目を果たしたウネウネは再度触手を出して来た道を戻り帰って行った。
城へ向かう階段の前にいた二人の警備兵がこちらに来ると
「ご報告は受けていますので、貴方方はお帰りの際に階段でなくても能力を使って城へ戻っても構いませんので」と転移や飛行の許可をもらった。
クロウは何気なく城へ向かう階段を見上げ唖然としてしまう。
……高さ的に高層マンション位あるじゃねぇか?下から見ると階段マジでエグイな。絶対転移魔法で帰ろ。
警備兵にジハードの紹介を終えて町の入口を通ると、そこには驚きの光景が。
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