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六十三【国と兵士】

 

 王族とジハードの対面を終わらせた時点でほぼ約束は果たしたようなもの。

 しかし、兵士や国民にも守護龍ジハードの姿を認識させたいという国王の願い。

 それにはクロウも同感で、ジハードにもっと人と接して欲しいと思っていた。

 なので城の中を回りきった後も町に下りたら多くの人に会い、言葉を交わして欲しい。

 そうすれば人と接する事に抵抗のあったジハードも少しは緩和するだろうとクロウは思う。


 ミルルの案内で警備をしている兵士や城で常勤している料理人などに会ってジハードの顔を覚えてもらい、クロウと恵華や今の子供の姿をしたガイアの顔もほとんど知られていないため、ついでに紹介してまわった。

 ところが城の中はとても広く、端から端まで警備兵が居る所を回るのは困難なものだった。

 長い通路を歩いている時は暇を持て余し、雑談をしながら次の警備配置へと向かっていた。


「それにしてもお城広いですねぇ〜!兵士さん達もお祭り行けば良いのに〜」


「にゅ〜……アタチもそう思うけど、仕事だからねぇ」


 なぜ大陸にこの国だけしかないのにも関わらず、ここまで警備が厳重なのか。


 クロウは不思議に思いガイアに話しを聞くと、

 今ではガイアも把握しきれない程、タスリーフで人外種は増え続けていると言う。


 その昔、ガイアはプラズマ亜空間を見つけ、多くの人外種をタスリーフに送った。

 その頃から様々な種族、様々な能力を持った者達がいたが、和平を好む穏健派や武力行使のみの考えしか持たない過激派が別れ散らばった。

 今現在、大陸外は実際に目で見て確認しなければ何の種族かも分からない程に。

 そのため、穏健派の者達でガイアの手を借りながら国を創り上げたが、平和に暮らす者達を気に入らないがために、人攫いなどの悪事を働く者が度々現れるようだ。


 国に張っている魔力結界は万能ではなく、ジハードからして小さな生命力には反応が遅れる場合もあり、国の中にも国民を守り戦える者が必要不可欠だった。


「なるほどね。っつーかよ、ここの世界に人外種を連れて来たのはガイアだったのか?

 何でお前がそこまでするんだ?」


「今貴様にそれを話しても意味が無い。

 貴様が自ら"人"と"人外"の世話をやく器となった時、話してやっても良いがな……」


 またはぐらかされた……世話をって、俺は神にでもなれってか?


 想像に過ぎないが、クロウは今まで出てきた話しを結合し考えると、ガイアは悪魔で、その中でも自ら"魔王"と言っていたが、色々と腑に落ちない事が多い。


 そもそもがなぜクロウがガイアの"末裔"なのか。

 ガイアは今現状、魂だけがここにあり、前に言っていた"本体"というのも何処かにあるはずだが、

 話しからすると地球やタスリーフにはその本体はないと思われる。


 ん〜、こいつが人間と子供を作るようには見えねぇけど……ジハードは何か知ってそうだな。


 この後に祭りを回る際、クロウはどうにかしてガイアと離れてジハードと二人きりになれるようにしようと企む。


「そういえば、城へのパーティーには顔出さないにゅ?」


「だからそんなん行かねぇって。

 社交ダンスなんて知らねぇし、後で俺達は俺達だけで祝えば良いだろう?」


 クロウは本当にダンスが嫌なようだが、パーティーに行けば古くから国の為に能力や知恵を使い、貢献してきた者達が多く来ているとのこと。

 その者達は地球での"貴族"に当てはまるらしいが、そんな事は関係なくクロウは「嫌じゃ!」と一言。

 城のパーティーに招かれる位の者ならば、その内会う機会などいくらでもある。

 それにダンスをしなくても良いとのことだが、なんだかんだその場のノリでやらざる得なくなりそうで断固拒否した。


「クロ様ってこういう事は仕事以外だとなぁーんにもしませんからねぇ〜」


「ほぅ、分かってんじゃん?記憶が飛ぶ前も俺は俺だったっつーことだな……仕事以外?」


 雑談をしながらも警備配置場所を回り終わったので城の正門まで案内してもらい、

 レイチェルの元へ護衛任務に戻ると言うことでその場でミルルとは別れることに。

 門を通り警備兵に挨拶をして、クロウ達は祭りに行くため町へと繋がる階段へ向かい目の前まで行くと、

 階段が長過ぎて町までの道のりがとても面倒な程遠い。


 色々とこの世界に危険があるのは分かったけど城下町って……合戦でもやってんのか。


 何の意味があってこのように城を建てたのか。

 車か馬でも無いと城の者も辛いのではないかと疑問に思っていながら階段を降りようとすると、

 城の方からミルルの叫び声が。


「にゅーー忘れてたー!町まで距離があるからこっちの方からこれに乗って行ってにゅ!」


 ミルルが指を指す方向には遠回りとなるが、町まで下って行くもう一つの道だと言う。

 しかし、そこにはなぜか大きな丸太のような物が隅に沢山立て掛かっていた。


「何これ?転がる丸太の上を走れってか?」


「にゅっ?何言ってるの?これは"乗り物"だよ」


 ミルルは一本の丸太の先端に手を触れ「町までお願い」と言うと、丸太は突然動き形を変え始めた。

 人が座れる椅子の様な形となり、至る所から草の根の様な物が生えてきた。

 ウネウネとまるで何かの触手の様に動き、それがその乗り物の足となるようだ。


「うぅわぁぁー!何じゃこりゃー!!」


「キャー!にゅるにゅるって凄い動きしてますよぉー!!」


 ただの丸太が数秒で椅子のモンスターに変形し、クロウと恵華は驚き悲鳴を上げ騒ぎだした。


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