六十二 【玉座の間へ】
準備を終え、城内でのパーティーは玉座の間でガナフ国王への挨拶から始まるようなのだが、
兵士はレイチェルだけでなく国王の命によりクロウ達も共に同行してほしいとの事。
ジハードとの面会が目的だろうと全員で移動することに。
「っつーかよ、俺舞踏会なんて向こうの世界でも知らねぇんだけど何すんの?」
「基本はダンスをメインとしてますけど、普通に食事しながら雑談を楽しむ方も多いですよ」
ふーん、クラブみたいなもんか。
なぜ舞踏会などという行事がこちらであるのかクロウは気になって聞いてみると、
元々レイチェルやリルルとミルルの様に地球で長く生活していた者もこちらの世界には多くいる。
それにより、タスリーフで行われている行事や娯楽などは、地球から持ってきたものが多いようだ。
しかし、クロウが一番気になったのはここで食べる食事。
野菜類はともかく肉類はどうしているのだろうと気になった。
それに関してはレイチェルやリルル達もしっかり把握しているわけではないが、
人種が口にしても問題のない猛獣の繁殖農業あるようだ。
まさか平原で見た訳の分からんモンスター食ってんじゃねぇだろうな……。
最近は医療カプセルや栄養剤の投与だけで、食事を取るのを忘れていたクロウだったが、
猛獣の肉料理と聞いて、パーティーや町の食べ物にあまり期待出来ないと気落ちしてしまった。
「こっちでお菓子系は作ってるんですかぁ?」
「作ってますよ!恵華の好きそうなクッキーやケーキなどもたくさん!」
恵華は普通の食事よりも菓子の方を気にしていたみたいだが、それも問題無く色々と作られているようだ。
人外のパティシエでもいるのか?っつーか材料はどうしてんだろ?
色々と気になることが多々出てくる中、クロウ達は玉座の間へ着いていた。
しかし、レイチェルと同伴しているクロウ達は正規の入り口ではなく、
王族専用の迷路の様な入り口から中へ入り、大きな玉座の真後ろから出ると、
そこにはガナフ国王やその周りに構える者達と対面した。
商人や貴族達を玉座の間へ通す前にガイア達と挨拶を交わすため、
レイチェルと共に来てもらったようだ。
中を見渡すと、そこはクロウと恵華の想像を超え、競技でも出来そうな程広いホールだった。
「……もうここでパーティーやれば良いじゃん?」
「コラ!ここは古くからタスリーフを支えている御方にとって神聖な場所なのですよ!」
アホな事を言ってレイチェルに怒られるクロウ。
それを聞いて声高々に笑うガナフ国王は
「ハッハッハ!……わざわざこちらまで出向いて頂きありがとうございます。
ガイア様、クロウ、恵華、そして――」
ガナフ国王の視線に応じ、ジハードは前に出て自己紹介をした。
「この姿ではお初にお目にかかります。この大陸を護っている龍神族黒龍ジハードです。
以前の事も含め、今朝は驚かせて申し訳ありませんでしたね」
ガナフ国王とジハードが初対面し、お互いに挨拶や詫びを交わすことができた。
ジハードの人となった姿に国王含め、その周りにいる騎士のような者達が驚いている。
姿というよりは人外としてジハードから感じられる生命力に驚いているようだった。
大陸調査の際に感じた生命力と同じだが、見た目とは打って変わり決して敵に回してはいけない強力な力を目の当たりにして、
ガナフ国王の周りに居た皆は思わず後ずさりしてしまっていた。
それに気付いたジハードは、やはり私が居ると怯えさせてしまうと少し悲しげな表情を浮かべた。
場の空気の変わり様に気付いたクロウは騎士達を睨みつつ、何気なくジハードに念話を送った。
「「ジハード、初めだけだ。徐々にこんなもん緩和していく。気にするな」」
思念が伝わるとジハードはクロウの方へ振り向き、無理矢理作った笑みを見せて何事もなかったように国王との会話に戻った。
すると、そのやり取りを見ていたレイチェルはジハードが落ち込んだ事を察し、怒りを顕にして周りの騎士達に向け口を開く。
「御客人に対しその態度は何なのですか?お義兄様、貴方は騎士なのでしょう?
ジハード様はこの大陸を護って下さっている御方です。そんなに怯えてみっともない」
「こ……これはとんだ御無礼を!申し訳ございません」
跪き頭を下げ、無礼を詫びたこの騎士の男はエイキンス。
見た目は若いが、タスリーフ国騎士団の団長を務めており、元王妃サラの弟。
つまりはレイチェルとは家族であり、義理の兄でもある。
立場上、エイキンスの方が上な訳だが、
ガイアが連れてきたレイチェルはサラの立場を継ぐ者として、そしてガナフ国王の娘としそばに身を置いている。
それにより、姫と呼ばれているが実質上は次期女王候補。
エイキンスは王の座には全く興味を抱かず、レイチェルを王に推薦しているため、
現状ではエイキンスでも逆らう事は国王は許さない。
しかし、突然レイチェルが引き取られ義兄妹となったと言えど、仲が悪い訳ではない。
普段から"お義兄様"と慕い、エイキンスもレイチェルを可愛がっているようだ。
「……頭を上げてください。
今夜からしばらくガイア様達もこの城に居られるのです。
貴方達も失礼の無いようにお願い致しますね」
するとエイキンスは顔を上げると同時に、なぜか先程のクロウの睨みを返す素振りをした。
クロウはそれに気付かず、早く祭りの方へ行きたくてしょうがない様子で
「そんじゃあ約束通りジハードと城内回って兵士達にも全員に会わせなきゃな!
リルルかミルル、どっちかついて来てくれ。迷っちまう」
その場に居合わせた王族には一通り挨拶を済ませられたので、
あとは城内外に居る兵士にジハードを紹介すれば、自由に国を回ることができる。
リルルはこのまま残って警護につくと言うので、城内の案内はミルルに頼んで回って行くことに。
終わったらそのまま町に下りて祭りを回るとガナフ国王に伝え、クロウ達は玉座の間を離れた。
数ある中からこちらを見て頂きありがとうございます。
気が向いたらブックマーク、評価など頂けたら幸いです……!




