五十九 【転移魔法の断念】
ジハードに許しをもらい、やっとクロウは魔法の準備に取り掛かった。
代わりに大陸の見回りをさせられるジハードの分身を造ろうとしているのだが、
そのままのジハードを頭で想像して良いものかクロウは悩んでいた。
「「なぁ?同じ生命体を造るって事だよな?そんな簡単な事?」」
「「何を悩んでいる?生命体と言っても疑似体だ。生きた者は造れはせんから安心しろ」」
そう……だよな!そんじゃあ普通にそのまんま同じ者を想像しよう。
クロウは魔法で生き物を生成してしまう事に抵抗があった様だが、ガイアにそれは不可能と言われ安心した。
目を瞑り魔法陣を展開させ、大きな龍のジハードが大陸を飛び回っている姿を必死に想像した。
こんな曖昧な想像で良いのかな?まぁただの分身だから大丈夫か。
大体のイメージが固まり、目の前の何もない平地に両手を前に出し魔力を放出。
すると周囲から赤い粒の光が集まり出し、大きな球体となっていくと、急に光は弾け飛んだ。
弾け飛んだ光の中からジハードとうり二つの大きな黒龍が姿を現した。
す……すげぇ。本当に似たもん造れた。
「素晴らしい……人外種の千差万別ある全ての能力を超える力、魔法。
本当に神の力を使える人種が現れるとは、さすが魔王様の末裔ですね!」
「……ジハード、お前何で……いや、何でもない」
クロウはジハードに何かを聞こうとしたが、またガイアにはぐらかされると思い質問を止めた。
ガイアと融合を解いた後にジハードに色々聞いてやろっと。
ジハードの疑似体の出来を確認するために近づいて話しかけるとしっかりと受け答えができ、
本人と何が異なるのか分からないほどの分身が出来上がった。
しばらく大陸の見回りを任すので、ジハードが直々に見回るルートや注意を伝え、その分身は飛び立った。
分身はいつまで形を保っていられるのかガイアに聞くと、クロウ自ら魔力を込めて"消えろ"と唱えるか、
魔力が尽きるかのどちらからしい。
「「魔力が尽きれば貴様の生命活動も尽きる。
だが、貴様の魔力量ならその心配はないだろうな」」
今のクロウの魔力量なら、ジハードみたく強力な分身を十日間戦わせても命に問題は無いようだ。
「なら大丈夫だな!よーし、ジハード転移するから掴まれ……って、血を飲まさなきゃだめか」
自身以外の生命体に魔法をかける場合、クロウの血を飲まさなければならない。
ガイアが元々不可能と言っていた他者を巻き込んでの魔法をこの方法でクロウが可能にした。
したがって、ジハードにも飲ませて生命力核にクロウの魔力を浸透させなければならなかった。
クロウは何も考えず、血を出すために指を噛み切ろうとした瞬間
「「クロウ!やめろ!……やめておけ。此奴に魔力を与えると何が起こるか分からん……」」
クロウは口を開けたまま静止状態。
聞くと、ジハードは龍の中でも龍神族の末裔で、ある力を継承していた。
その力は"聖神気法"という力だそうだが、それは太古の聖人達に神が齎したものらしい。
クロウは魔力との違いが分からなく、同じ"神"が関わっているのなら良いのではと思うが、
"魔法"は神々が自由に使える力で、"聖神気法"は神が下界の神使に与えた力のようだ。
ガイアはその二つの力が混ざり合うとどうなるか見当も付かないと言う。
「「……俺の理解できる範疇をぶっ超えてるからやめとくわ」」
まぁ理解の範疇なんて記憶飛んで目覚めてからすぐに超えたんだけど……。
ジハードにガイアが言った事を伝えると、同じように止した方が良いと言う。
聖神気法は魔法ほど万能ではないが、人外種が個々に持つ特殊能力とは天と地の差があるようだ。
「魔力と神気力は似て非となる力です。試してみたい気持ちはありますが……」
ジハードも興味はあるが、試すにも今それをする必要は無いと転移魔法で行くことを断念したが、
ここから国までの五キロメートル程度なら一瞬で走っていけるとジハードは言い出した。
それに国門の手前までなら龍の姿に戻り飛んでいくという手もあって、全く問題は無かった。
「こっからタスリーフまで一瞬で……そうだ!龍になって背中に乗っけてくれよ!」
「私の背中に?フフフ……よろしいですよ?貴方は私の名付け親ですしね」
な……名付け親?まぁ良いや、とりあえずよっしゃ!
ドラゴンの背中に乗って飛ぶ!これこそまさにファンタジー!!
ジハードは龍の姿に戻ると頭を下げて上体を低くし、そこにクロウは背中に飛び乗った。
「振り落されないようにしっかり掴まってくださいね!行きますよ!」
翼が上下に風を扇ぎ出し、ゆっくりと上昇したと思いきや、一気に全速前進。
「うぅわぁぁぁぁ!!ジハード早過ぎ!何も見えねぇし!!」
低空飛行で物凄い勢いで移動するジハードに、クロウは掴まっているのがやっとだった。
なぜこんなに早く飛ぶのかと思っていると、突然スピードが落ち始めた。
ジハードに文句を言おうとクロウは顔を上げると、すぐそこにはもう国門が。
「顔痛った!……おるぅら!話しでもしながらもっとゆっくり飛んでも良かっただろ!?」
「あら?ゆっくり飛んだつもりでしたけど、ごめんなさい(笑)」
こんにゃろ〜……キスさせようとしたことまだ根に持ってたな。
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