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五十七 【龍神の涙】

 

 早速ジハードにガナフ国王からのパーティーへの招待を伝え、祭りを一緒に回ろうと話した。

 招待に加え、クロウからの誘いに対してジハードは嬉しそうに微笑みながらも俯きながら


「ありがたいお話なのですが、結界がありますので私が町へ入る事は不可能かと思われます。

 それに……中には感知能力がとても鋭く、私の生命力を恐れる者もいますので」


 ジハードは自分の強大な力に気付き、祭りの雰囲気を壊してしまう事を考えて遠慮している。

 現在国の周りにはガイアの魔法で結界が張られているため、ある基準以上に生命力の高い者、

 国に属する者以外は町から入る事は勿論、空から入る事も出来ない。

 あれ?何で俺と恵華はガイアの結界に引っ掛からねぇんだ?

 結界についてガイアに尋ねると、クロウはガイアの末裔で同じ魔力を持っている。

 したがって、ガイアの魔力結界もクロウ自身で張り巡らせたのも同様のため

 引っ掛かることなく城に入れたらしい。

 恵華も同じように生命力核にクロウの魔力が浸透しているので問題無く入れたようだ。

 するとクロウは結界の話の中で何か閃き、

 突然何も言わずに転移魔法を使いその場から消えた。

 ジハードは困惑し、どうすれば良いか分からずクロウの生命力を探っているとすぐにクロウは戻って来た。


「これで大丈夫だ!ガイアの魔力結界に俺の魔法で上書きしてきたからよ!

 それに、大々的にお前がこの大陸を守っている事を民衆に伝えようとしていたしな」


「それは……え?どういう事ですか?」


 クロウはサラの墓に飛び、魔力結界に黒龍・ジハードが町や城へ出入りできるよう上書きした。

 とは言うものの、魔力結界にジハードの強大な生命力が引っ掛からない様にした訳ではない。

 基準値を超えた生命力体でも入れるようにしてしまうと、

 意思の疎通が図れもしない得体の知れない者まで結界を突破できるようにしてしまう。

 そこでクロウは、ジハードが人の姿に変身している状態ならば、

 国民として認識されるように結界に細工した。

 それにより、ジハードのように強大な生命力を持った人外種が現れ攻め込んで来たとしても、

 結界に引っ掛かり国の中入る事は出来ないので問題はないと言う。


「「ほう、そこまで……貴様の魔力量と現代の人間ならではの想像力のおかげなのだな。

 あの時、思念体のみでの俺の魔法では大雑把な事しかできなかった。良くやった」」


 なんだこいつ?褒めてんの?

 ガイアも国のあるこの大陸を守っていたジハードには結界に引っ掛かる対象にはしたくなかった。

 しかしながら今とは状況も違い、思念体だけのガイアの魔力量、魔法にはできる事には限りあり、

 事細かい想像で生み出された魔法には魔力不足となり発動すらできなかったようだ。


「だから良いじゃん?国王がオッケーしてんだからよ?恵華も懐いてるみたいだし、行こうぜ!」


 それでもクロウの誘いに踏ん切りが付かずにいるジハード。

 なぜそこまで躊躇うのか。

 クロウは不思議に思っているが、ガイアには分かっていた。

 ジハードはうまく自身の姿を変化させられるようになって何千万年と経つようだが、

 人種(ひとしゅ)に紛れるという事がとても苦手で、共に何かを共有したり、共に生活する事もあまり経験がない。

 過去には苦い経験もあり、人に対し後ろめたさまでもあるジハードはどうしても気が引けてしまう。

 此奴はまだあの時の……仕方あるまい。

 その姿を見てガイアは意識を表に出し、クロウに代わりジハードを説得し始めた。


「黒龍よ、俺だ。臆する気持ちは痛いほど分かる……あれは約二千万年前の事だったな?

 貴様が過ちと思うあの一件、あの時俺は()()から見ていたから知っている。

 しかし、あれは貴様に何も非は無いはず。俺からすれば全て人種達が勝手に自滅したに過ぎん。

 もし同じ事が起きようものなら、今は俺や俺の魔力を一番濃く受け継いだ此奴もいる。

 臆することはない、今日は何も考えず"龍人"としてこの国の民と共に楽しむが良い」


「魔王様……」


 ガイアの言葉に少し気持ちが軽くなったようで、ジハードは目を瞑り、心の奥底の気持ちを整理する。


「「二千ま……お前等何年生きてんだ!?過去の一件って!?っつーかお前が天界って……」」


 ガイアはクロウを無視し、言いたい事を伝え終えるとすぐに意識を引っ込めクロウと代わった。


「「オエッ……いきなり意識をパッパ変えんな!まだ慣れねぇから気持ち悪ぃんだよ!

 あと、黒龍じゃねぇ!ジハードだっつってんだろ!!」」


「「騒がしい奴め……良いから早く黒龍の分身を造らんか阿呆」」


 こいつ……でも、ジハードは過去に人に混じって色々あったって事だよな?

 そんなん何も知らねぇのに俺は軽々しく……チッ、クソッ。

 自分の軽率な行動に悔やみながらジハードの顔を伺うと、とても穏やかな表情になっていた。

 クロウはその表情を見てなんとかガイアの言葉で気持ちに整理がついたのだろうと思い

 ジハードの隣へ行き肩を並べた。

 二人の目線の先には、遠くに街灯などで橙色に輝く町があり、クロウはそれを眺めながら

 とても別次元の強さを持つ者とは思えないほど細く折れそうなジハードの肩を自分に抱き寄せた。


「ジハード……ガイアが言う通り何も考えずに楽しもうぜ!まだお前とは短い付き合いだから

 人と過去に何があったか無理には聞かねぇよ。でも……それでも人が住むこの大陸を守って

 未だに信じ難い俺の先祖に従順で恵華にもすぐ好かれちまってるお前を俺は好きだ!……可愛いし。

 何かあれば俺が魔力全放出してでも何とかしてやるからよ!!な?」

 

 ジハードはクロウの言葉と体を抱き寄せられた事にひどく驚いた。

 今まで生きてきた大半は龍の姿で過ごし、過去に人の姿でいた時も、

 今の今まで自分からではなく"人種から触れられる"という事がなかった。

 好意的に抱き寄せられたジハードは思わずクロウの胸に顔を埋め強く抱きしめた。

 クロウは驚きながらも冷静を装いジハードに何か声をかけようとしたが、

 体が震えていることに気付き、無言でジハードの体に腕を回し優しく抱きしめ返した。

 ジハードは女であるが、悲しい事に龍神として生まれたことから何かに縋る事、

 ましてや人種に甘えるなど許されずジハード自身も考えられない。

 しかし寛大なるガイアと、会ったばかりで龍神と知りながら自分に優しくするクロウに

 体が勝手に震えるほど嬉しくなってしまい、

 どうして良いか分からない初めての状況に、悲しくも嬉しく複雑な心境の中で、

 ジハードは二千万年ぶりの涙をクロウの腕の中で流した。


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