五十二【思念通話】
ドクは唐突に意味不明な事を言い始めた。
「俺と同じ?は?」
部屋を出ようとしていたクロウは足を止め、振り向いてドクの顔を見ると
少し悲しげな顔を浮かべていた。
「お前さんが目覚めて不思議に感じたことは多々あっただろう?
それはわしも経験済みという訳じゃ」
クロウはドクが言っていることが唐突すぎて理解が遅れる。
「……っつーことは何?俺が知ってる"ニッポン"が存在するって言ってんのか?」
「あぁ、実在する」
はぁ!?"ロベリカ"に来たはずが"アメリカ"になっていたと思ったのも俺の頭がおかしかった訳じゃなかったってことか!もしかしてこいつに話しを聞けば……でも、ちょっと待てよ……何か引っかかる。
そうだ!覚えてねぇけど、恵華は日本で俺と会った事があるみたいに言ってたよな……何じゃそりゃ!?
「訳分かんねぇこと言ってんじゃねぇぞオラァ!
俺の中で辻褄が合わなかった事を今更……痛っ!」
クロウはパニックになり、ドクに掴みかかって声を張り上げた瞬間頭に激痛が走りその場で倒れ込んだ。
ドクが近づき大丈夫か言いながらと体を揺すると、クロウは何事もなかったかのようにすぐ様立ち上がった。
「戯けが……」
クロウの意識はガイアに切り替わっていた。
タスリーフに転移もせず、ドクの話しで動揺したクロウに苛立ったガイアは、クロウの意識に魔法をかけて眠らせ表に出てきた。
「お前さんか。すまないのぉ……」
「礼はいらん。この件に関しては俺自身も手を"加えた"のだ。貴様はやるべき事をやれ。
問題が次々に起きたおかげで忘れていたわ……この件はあのジジィを交えていずれ此奴に俺から話してやる。
その時此奴がどうするかは知らぬがな」
ドクはひたすらガイアにすまないと言って落ち込んだように椅子に腰かけた。
この老いぼれも皮肉なものだ……自分でない自分が撒いた種を拾う為生きているのだからな。
事情を知っているガイアはその姿を見て、面倒な事が起きないようにと願う。
研究室のドアを静かに閉めてエレベーターに乗り込むと、
「「……!……うるぁ!てめぇ!ガイア!!お前何か俺にしただろ!!」」
な……此奴、もう目覚めたのか!?
ガイアの魔法からものの数分で目覚めたクロウは表に出せと騒いでいる。
軽度な魔法をかけたと言っても普通のノンレム睡眠程の効力はあるはずなのだが、あまりの覚醒の速さに驚いた。
更にクロウは無理矢理自分の意識を表に出しガイアと切り替わった。
そのタイミングでエレベーターがリビングのある三階へ着くと、クロウはまた扉を閉めようとCLOSEボタンを連打しまくっている。
「「お……おい!貴様!どうするつもりだ!?」」
「あぁ?ドクを問い詰めに行くんだよ!」
「「阿呆が!さっきの話しは俺がしてやる!まずは目的を果たせ!」」
は?こいつも事情を知っていやがんのか。
クソッ、どいつもこいつも……。
でもそうだな、まずあいつ等と転移して恵華の所に行かねぇと。
ガイアの言うことを聞き入れてエレベーターの扉を開けた。
まずは三人をタスリーフに送り届けるためにリビングへ行くと、全員まったりとティータイムに入っていた。
クロウが魔法を使っても問題ないと分かると、三人がすぐに帰ってしまうという事でこちらの事やタスリーフの色々な話しをして盛り上がっていた。
「盛り上がってるところ悪ぃけどそろそろ行くぞ。
恵華も心配だからな」
クロウの声かけでレイチェル、リルル、ミルルはソファーから腰を上げ、三人はクロウファミリーに深々と頭を下げた。
とても短い時間だったが三人共こちらの世界に来るのは久しぶりのこと。
次は時間を取って皆で町に出て買い物などをして遊ぼうと約束した。
「よっしゃ!んじゃ行くかー……っつーか、こっちとの連絡手段はどうしよう?」
「「魔力を使って此奴等の誰かに思念通話すれば良い。難しい事ではないから安心しろ」」
なるほど!何でもありの魔法様万歳だなぁ……ん?
「「こいつ等から俺に連絡する手段はねぇの?魔力を少し貸しとくとかよ?」」
確かにクロウ言う通り、殲滅部隊に関わる事や何か動きがあった場合に
こちらの世界からの連絡も必ず必要となるはず。
それに対し、魔力結晶を生成して思念通話が出来るよう作り出せば良いとガイアは言う。
簡単に言いやがって。
クロウは何かを持っている様に手の平に集中し、頭の中で結晶を思い浮かべた。
ん〜……よく分かんねぇけど、クリスが持ってるような物を想像すれば良い訳だよな。
必死に考え集中していると足元に魔法陣が展開され、手の平に赤い光が発生し始めた。
光は徐々に強くなり、突然パッと消えると手の平には赤い魔力結晶が出来上がっていた。
形は丸くビー玉ほどのアクセサリーには丁度良い大きさだった。
「おぉー!作れた!綺麗な赤……何これ?」
「「貴様の頭は阿呆の塊か?それは魔力を固めて出来たただ魔力結晶にすぎんわ。
それに何らかの魔法の発動を促すようにしたければ貴様に思念が伝わるように改めて魔力を込めて魔導具のなる"魔光石"を作れ」」
ほぉ〜なるほど!……っつーかこいつ俺のことアホアホ言い過ぎじゃね?
魔力結晶自体は微々たる魔力は宿っているが、思念通話など魔法の発動には至らないほどの魔力のようだ。
常に肌に離さず持つのなら、クリスの能力を抑えたり魔除けのような護身符の効力程は齎すが、"使う"となるとそこからまた魔力形成をしなければならない。
クロウは改めてその石を握り、思念通話をどのように行うか考えながら魔力を込めた。
魔法陣が展開され、先程と同じような光が握られた手の中で光り出す。
こうして……こうして……どうじゃ!
頭の中で考えた通り魔力を込められたのか、光が消え手を開くとなぜか大きさは変わらないが形が少し細長くなっていた。
「よっしゃ!じゃ〜エドガー、これを握ったまま頭の中で俺を呼んでみそ!」
「わ、分かった」
エドガーは魔光石を受け取り、それを握りしめ頭の中でクロウの名前を呼んだ。
「……」
「……早く呼べよ?」
「え?さっきから何度もクロウって呼んでるぞ?」
へ?ウソん?
見た目は良い物が出来たが思念が全く伝わらないクロウの魔力の入ったただの石となった。
これに関してはガイアも原因が分からなくもう一度作れと言うが、クロウはしっかりと思念通話が出来るイメージを魔力に乗せて作ったのでいくつ作っても同じと言う。
ん〜、石自体は問題ないとおもうんだよなぁ……ん?もしかして!
何かが引っかかり、突然エドガーから石を取り上げると、クロウは石を握りしめて自分自身で魔光石を使って思念を送った。
「「え〜……スキンヘッドのツルピカエドガー君?聞こえますか?」」
「おぉ!聞こえるぞ!クロウの声が頭の中に響いてきた!ツルピ……」
やっぱりな……。




