五十一 【出発前に】
ガイアは話し終えると、すぐにクロウへ意識を戻し引っ込んだ。
えぇーここで!?……嘘だろ?
すると周りから沢山のこちらを凝視する視線が。
途端に恥ずかしくなり、顔を赤く染め出た言葉が、
「い、今のはガイアだから!自分で普通あんなん言わないでしょ!?勘違いしないでよね!!」
否定するための咄嗟に口から出た言葉がなぜかオネェ口調のツンデレ。
すると全員吹き出し笑い声が湧き、エリザに限っては爆笑しだした。
クロウの一番近くにいたクリスは、なぜかクロウの目に指を指しながら笑っている。
「もう、なんか真剣にムカついてたのがアホ臭くなってきた(笑)
もう恵華が無事なら良いから早く会わ……そういえば何で恵華連れて戻って来なかったんだよ?」
確かにそうだよな。え〜と、何て説明すれば……。
誰でも不思議に思う質問をエリザにされてしまった。
もちろんクロウはその返答に何も考えていないが、小細工も面倒になってありのまま答えても問題ないと思い、誤魔化さずにジハードという人体や生命力に詳しい黒龍に一旦預けてきたと説明をした。
すると、やはりリルルとミルルはジハードを知っているので久しぶりに会いたいと二人はしゃいでいる。
二人は基本城外へ出ても町やその周辺のため、ジハードと会うことはほぼないようだ。
「見て分かる通り俺は今ガイアと融合してる状態だ。
とりあえず今なら魔法使っても問題なさそうだから先に三人を向こうに送ろうと思ってよ」
「そう……なるほどね。
そういえば、クロウがその見た目でまともに会話するのは初めてよね?前まで今の姿になったら、でた!って感覚だったからちょっと不思議」
誰もツッコまなかったがクロウは融合状態によって目の強膜が真っ赤に染まり、普通に見れば恐ろしい見た目だ。
エドガーは妖精種の身体にガイアを入れ込んだ際、この姿でクロウの意識が表にあるまま普通に会話をしていたが、アンナが言うにはその他の者は今の姿でガイアでなくクロウとの会話は初めての事だった。
今までガイアに身体を乗っ取られた時は、クロウの意識を表に出すことは出来なかったので、どうも皆慣れない様子。
「お前その目でクワッ!って見開くな!怖ぇんだよ(笑)」
クリスが先程から笑っているのはクロウの真っ赤な目。
この見た目でオネェ口調を使ったことがツボに入ったようだ。
そんなことでいつまで笑ってんだこいつ。
「目と毛はしょうがねぇだろ!でもどうにかなねぇのかな?……とりあえず、皆本当に悪かった。これから自分自身をもっと知って暴走なんかないようにするからよ。恵華を巻き込んだのは俺の失態だしよ。ごめんなエリザ」
エリザの頭を撫でながらの謝罪するクロウ。
「いっ……」
エリザは一瞬睨みを利かしてすぐに手を叩き離すと思いきや、以外にもされるがまま撫でられていた。
クロウに頭を撫でられるなど幹部の頃では考えられない事だったので以外な行動に固まってしまっていた。
「これからタスリーフにこいつ等三人と転移してそのままガイアと修行してくる。恵華も向こうでしばらく安静だ。っつーか魔法と能力実験?まぁ自分の力と魔力について知るためにって事でね。自分のこと良く分からねぇ状況の中で下手にうだうだするよりまずこれが最善だと思うし。
もうお前等に心配かけねぇようにするからよ。お前等はお前等であの訳分からん部隊の事を頼んだ」
クロウは皆に微笑み、自分が居ない間はこちらの世界を頼むと仲間に任せた。
すると、ハーッと大きく息を吐くきずっと口を閉ざし傍聴者となっていたドクが「待つんじゃ」と言ってクロウだけを地下室に連れて行った。
ついて行った先はアンナを助けに出る前一度入った研究室。
その時にここでクロウは自分専用の銃と特殊能力に備えた意味不明なTシャツをドクから渡された。
改めて見ても何の為かも分からない物が並んでいる。
ほとんど実験の時に使ってたって言うけど……全部だっせーな。
「とりあえずはお前さんはこの前と同じ、パイソンとバリアシャツを持っていくと良い。それと……恵華にもグラビティー・ウォールを持って行ってやれ」
ドクはクロウの体を心配して、銃とシャツに恵華が使う特殊兵器グラビティー・ウォールをタスリーフでもし戦闘があったとしても魔力の使用を抑えるようにと渡した。
グラビティウォールはスケルトンのテープが長い物一本と短い物が四本のセットだった。
何じゃこれ?これで重力操作出来んの?
っつーかいきなり何なんだ?
突然のドクの行為に気持ち悪くなったクロウ。
「何なんだよ突然?っつーか、もう分かってんだろ?俺はあんたの事それほど信用してねぇんだぞ?」
クロウはドクから過去の話しを聞いた時、世界の話しを聞いた時、ずっと疑っていた。
クロウはブランドンの屋敷から戻って来てからまともにドクと会話を交わしていない。
ドクもクロウが会話を少し避け気味だったことも伺えていたが、もちろん理由が。
ドクがクロウに話した過去話しにはどうも矛盾があり、タスリーフに関しては一度観測出来ただけと話していたが、それも矛盾した話しである。
リルルとミルルの一件を聞きブランドンはガイアに委ねている過去がある。
タスリーフの存在をブランドンは認識していたのにも関わらず、なぜそんな事を言うのか。
その頃にはドクはもう既に組織に属していたはず。
ブランドンへの怒りや不信感は電話での会話で多少緩和されたが、ドクだけはクロウの中で信用し難い人間の一人となっていた。
話しを思い返すにこいつは何かを隠しているに違いねぇ。
ドクはクロウからの不信感からくる疑いの赤く鋭い眼力に圧倒され黙り込んでしまった。
何も話す気がないならと、クロウはドクから渡された三点のアイテムを持って部屋を出ようとした。
「待て……わかった。思うことはあるかもしれんが、わし自身重要な点しか知らん箇所も多いのじゃ。
それ故、わし自身でも何を話したか忘れるくらいにな」
今までの夢や彼方からの声に通じるかもしれない興味深いことをドクは話し出した。
「あ?何言ってんだ?意味わかんねぇ」
「お前さんと同じじゃ……わしは向こう側の人間なんじゃ」




