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五十 【心配募らせ】

 タスリーフに転移して、ものの数十分でアジトへ戻ってきたクロウとガイア。

 空間が開いたのは、クロウの部屋でなく恵華の部屋に開き戻って来ていた。


 戻る事を考えたのに俺の部屋じゃなくて恵華の部屋……恵華のことを考えてたからか?


「さてと、あいつ等リビングかな……これ、やっぱ気になるな」


 部屋を出ようとドアの方へ歩いていると、デスクの上にある写真立てがクロウの目に止まった。

 それはクロウが目覚めて初めて恵華の部屋に来た時に疑問に思ったクロウと恵華のツーショット写真だった。

 クロウは今と同じ姿で白髪だが、結膜は白いので融合を解いた後なのだろう。

 隣には夢の中で見た黒髪ショートで綺麗なドレス姿の恵華。

 ブランドンの本邸らしき場所で二人並んでいる。


「「おいガイア、この頃恵華と俺に何があったのか知ってんだろ?」」


「「……残念ながら貴様等の事は知らんな。

 この頃はまだ貴様の意識を同期する事も身体を乗っ取る事も難儀であった時期だ」」


 この写真は一年以上前の写真のようだが、この頃はまだクロウとガイアの生命力と魔力の波長がまだ合っていなかったために、クロウの身体に入る事が出来てもすぐに追い出されていたようだ。


 それでもこの写真を見るに、融合していたということは、写真を撮ったきっかけくらいは知っているはず。

 クロウは知っている事だけでもとガイアにしつこく尋ねた。


「「小娘が脱走した事が発端で、ある事件が起きた後だ。

 細かい事は知らん。あの小娘に聞け」」


 脱走?恵華が?


 上手く話しを流されたが、ガイアは多分事の全貌を知っている。

 それなのにも関わらず口を閉ざすのは恵華のためなのだろう。

 クロウは恵華に何度が出会いの話しを持ち出したが、自分で思い出せとはぐらかされた。

 どれ程の出来事があったのかすぐに知りたいところだが、ここでガイアに聞くだすのは筋違いだろうと詮索をやめた。


 話しを切り上げて、一度自室に向かい転移した後の部屋を見に行った。

 すると、部屋は何ともなっていなかったが、中身の抜けたガイアがソファーからベッドへ移されていた。

 多分リルルとミルルが移したのだろう。

 自室を確認し終えたクロウは、そのままリビングへ向かい部屋に入ると、まだ全員バラけずに一箇所に集まったまま残っていた。


「クロ……ガイアか?」


「いや、俺だ。悪かったな……とりあえず治癒魔法は成功して恵華は無事だからよ。

 転移した先もタスリーフだったから皆安心してくれ」


 そのままタスリーフで出会った者に眠ったままの恵華を任せて戻ってきた事を話したが、恵華の身に何が起こったか分からず説明もまともに出来ないので、ガイアがリルル達に言ったことに合わせ誤魔化した。


 全員恵華のことを心配しつつも、どうして良いか分からずにリビングに残っていたようだ。

 突然クロウが暴走し、恵華と共に転移し消えて行ったという事となっているのだから皆心配して当然だろう。


 ところが、なぜかクロウが戻って来たのにも関わらず全員静まり返っていた。

 その中で、目を細め怒りを表にしたエリザがクロウに駆け寄り胸ぐらを掴み出した。


「……魔法を使うためだとか何だか知らないけど、血を飲ましたお前が暴走してどうすんだよ?

 しかも向こうに恵華を置いて来た?はぁ?

 何考えてんだぁ!あぁ!?」


「悪かったな」


「な……チッ!

 悪魔みたいな目して普通に謝りやがって」


 エリザも分かっていた。

 クロウは恵華の体の怪我を早く治してやりたいがために行った事。

 それを最終的エリザも納得してクロウを止めずに部屋に行かせた。

 恵華への心配が募り、やり場のない気持ちをクロウにぶつけるしかなかった。


 しかし、それでも結果的に恵華は怪我が治り、何事もなく眠っているということで何も言えなくなり、舌打ちをしてクロウの胸ぐらを投げるように離した。

 エリザは元の場所へとソファーへ戻り、隣に座っているミルルに抱きついて顔を伏せてしまった。


 クロウファミリーに加入して間もないエリザ以外の者は何も言わないが、実際に不安な気持ちは全員一緒であった。

 アンナ達もクロウに言いたい事は一つや二つありそうなものだが、クロウ単独行動で驚かされる事にはエリザにはない慣れがあった。


 今はガイアが身体を持ち、会話も出来ることもあってまだマシと言える。

 それまでは散々クロウの単独行動に困らされ、ブランドンファミリーを含めて組織全体で尻拭いをしてきた。


 暴走をしたと言っても何も壊れず、何処ぞの誰が死んでこちらの誰かが怪我した訳でもない。

 今回エリザ以外は、そこまで気にする程の事でもなかった。

 しかしながら、実際に仲間の恵華が巻き込まれて意味不明な転移までしてしまい、皆に心配をかけている。


 その中でエドガーだけは恵華に関して周りが知らない事を知っていることもあり、クロウが何かを誤魔化していると気付いている様子だった。

 それでも、下手に口を出しクロウの肩を持ってしまうと気取られかねないので、どうにも口を挟めない状況に悔やむエドガー。

 クロウは嘘でも説明をしてやりたいが言葉が出てこない。


 騙す……ってのとは違うけど、何て言えば良いか分からねぇ……クソッ。


「…………」


 沈黙が続く中、リルルとミルルは二人で目を合わし気まずい様子。


 にゅ〜、本当の事言いたいけどガイア様に悪いし……クロウの目が怖い。 


 ガイアに言われた事をそのまま皆に伝えただけの事だが、話した本人達には罪悪感が。

 クロウも心配をしている仲間に対して虚言を吐く事に躊躇しているのか、皆の顔色を伺いながら煙草を吸い始めて口を開こうとしない。


 ミルルの時と同じ感じになっちまったな……。


 すると、助け舟のつもりなのか、痺れを切らしたのか分からないが、ガイアの意識が表に切り替わった。


「「ガ……ガイア!てめぇ!!」」


「「黙れ、貴様等は本当に面倒だ。

 今回は俺がリルル達に命じた事によってのこの状況だ。俺が話す」」


 周りには目で見ても分からないがガイアはクロウと意識を代わり説明始めた。


「おい貴様等。

 思うことは分かるが、今回初の試みで血を与えた後に俺との融合による魔法を使った。

 俺からしても相手への魔法、何より治癒魔法に対しても初のこと。

 そして此奴は俺の末裔の中でこれだけ大きな魔力核を持てた者も初のことだ。

 今此奴に関して俺にも分からぬ事が増え続けている現状だ。

 あの小娘が関わり、このような状況となってしまったが、これからはもっと様々な事がありうる。

 此奴が……クロウがやった事で物事がうまく片付くこともあろう。

 貴様等がこれまで以上に助けられることもあろう。

 それに対し後始末など苦労もあろう。

 此奴がそばにいて良かったと思う事があろうが……だが全てその逆もまた然り。

 次に魔法で助けられるのは自分かもしれんし、次に魔法で酷い目にあわされるは自分かもしれん。

 しかし、此奴と共にいると決めた以上は全て受け入れ全てを覚悟しろ!

 先程の事に関しては俺にも責任があるが、クロウは小娘を思ってやった事。

 なぜだか俺にも分からぬが、記憶をなくし、今此奴には貴様等しかいない。

 ……レイチェルを連れて転移する前、魔力がなくなる前兆が見えたせいか、なぜか急に小心となったのか分からぬが、貴様等に会いたいと言って向こうでの修行も辞めようとしていたのだぞ?

 俺には仲間というものが良く分からぬが……貴様等は此奴の家族なのだろう?

 此奴を信じろ。良いな……肝に銘じておけ」


 どういう風の吹き回しなのだろうか。

 ガイアはクロウファミリーに対し説教を交えた心打たれる話しをして全員聞き入っていた。


 ……ガイアの野郎、どんな顔して表に出れば良いんだよ。

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