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四十八 【血を与えた後の謎の声】

 クロウはリビングいるガイアを呼びに眠った恵華をおいて部屋を出た。

 ドアを開けると、ガイアは部屋の前でクロウが血を与えるのを何もせず大人しく待っていた。


 なんかウケる……まんま子供だな。


 そのまま部屋の中に入りベッドで寝ている恵華を確認し、ガイアはホッと胸を撫で下ろす。


「あやつらと同じように気を失ったか」


「あぁ、同じだ……この後どうなるか分からねぇけど、治癒魔法の為だ」


 不可能とされる治癒魔法。

 恵華の生命力核にクロウの魔力が浸透すれば可能となるかもしれない。

 望みは薄いがやってみる価値はあるとガイアも納得した事。


 そして次に恵華が起きた時に備えて魔法を発動する準備を始めた。

 ガイアは部屋のソファーに座り、瞑想するかのように目を瞑り肩の力を抜いている。


「お前何やってんの?寝るの?」


「黙れ、今行ってやる」


「ぉう?」


 行ってやると言った数秒後、ガイアの体から黒い霧が出始めた。

 霧は真っ直ぐクロウに向かってくると、体内に吸収されていくように入っていった。


 融合するならするって言えよ……あ〜きたきた。この至る所から犯さてるようなこの感じ。


 気持ち悪がりながらもガイアの思念体を受け入れ、霧が入り切るのを待っていた。


 そんな中ベッドで寝ている恵華は、夢でも見ているかのようになぜかうなされている。

 夢と現実、どちらなのかはっきりしないような感覚に恵華の意識は戻りつつあった。

 しかしながら、目覚めたくても目覚められないおかしな感覚が襲い、起き上がることも目を開けることも出来ない。


 クロ様とガイアの声が聞こえるのに……金縛り!?もぉ〜息苦しいなぁ〜。

 なにあの光?凄く眩しくて……暖かい……?



――ヤットミツケタヨ――



 ……誰?


 "やっと見つけたよ"。

 その声が恵華の耳に届くと、突然横になっている恵華の体は浮き上がり、金色に輝くいくつもの魔法陣の様な模様が恵華の周りに四方八方から展開した。

 その異様な光に気付いたクロウはベッドの方へ振り向き驚く。


「なっ!

 ガイア!何だこれ!?すげぇヤバそうだぞ!早く入れや!!」


 横になった体は起き上がり、何か開眼したように目からも光を発し両手を広げ何かを呟きだした。


「我、人体崩壊及び生命力破損に癒しを齎せ……」


 恵華の声は聞いたことのない声と二重に重なり発せられているように聞こえた。


 破損!?癒し!?何を……うっ!痛った!遅ぇんだよボケ!


 クロウの体に黒い霧が全て入り込むと、更に赤い稲光の入った黒い霧が後を追うように全身を覆った。


 恵華は恵華で何かを呟き終えると目を開けていられないほどに体が白く発光し始めた。


 クロウは黒く。恵華は白く。


 狭い部屋の中でこれから頂上決戦でも始まるのではないかと思わせる光景だ。


 クロウの方では霧が晴れ、ガイアと融合したクロウが姿を見せるが、恵華はまだ白く発光したまま変わらず変化はない。


 融合したクロウの意識はガイアへと移り、目の前の光景に唖然とする。


「どうなっている!?何だこれは!!

あれは……魔法陣?そんなはずが……」


 全く予想だにしなかったこの状況でガイアにも為す術もなかった。


「「おいガイア!あれは魔法陣じゃねぇのか!?こんなもんお前にしか分かんねぇぞ!」」


「「言ったであろうが!魔法の発動は俺と貴様以外誰にも出来ん!

 仮にいたとしてもこの宇宙(せかい)に存在するはずがないのだ!」」


「「ならあれは何だ!何かぶつくさ言ってんのは恵華じゃないっぽいぞ!?」」


 二人は生命力核を通じて意思疎通し、脳内で言い争いをしていると、


[バンッ!]


「わっ!……クロウ!何が起きてるの!?」


 勢い良く部屋のドアが開かれると、膨大な生命力に気付いたリルルとミルルが駆けつけてきた。

 二人がリビングから血相を変えて出て行ったことでエドガー達も後を追って来ていた。


「貴様等!扉を閉めろ!阿呆共を近寄らせるな!!」


「ガイア様!?に、にゅあい!」


 ミルルはクロウの身体にガイアが入っていることが分かると、部屋に向かって走ってくるエドガー達に「危ないから来ないで」とドアを閉め鍵をかけた。


 ガイアはまだ恵華に何が起こっているか把握出来ていない。

 この発せられている光が何なのか、恵華の身体に入っている者は思念体なのか。

 何にしても、普通の人間をこの部屋には入れない方が良い。


 どうすれば……しかしこのもう一つの生命力は一体何なのだ?

 クロウの魔力が浸透し強化された小娘の生命力が邪魔で分からぬ。


 光り輝く恵華の中にもう一人の生命力が感じられるようだが、何者か分からない。


「ガイア様!恵華は……恵華はどうなっているんですか!?爆発でもしてしまうの!?」


「そういう類いのものではない!やはり貴様等も部屋を出ろ!まだどうなるか分か――!」


 攻撃的な感覚は一切しないが、得体の知れない光に安全である保証がない。

 爆発はないとは思う中でガイアはクロウの突発的な行動を思い出していた。


 そうか、この小娘以外の被害を考えるからどうにも動けないのだな……よし。


「「おいクロウ!自身以外の者と空間転移する際はどのような想像をするか教えろ!」」


 どうやらガイアは恵華と安全な何処かへ転移しようと考えているようだ。


「「恵華と飛ぼうとしてんのか!?だったら俺がやった方が確実だろ?代われや!」」


「「駄目だ!貴様は魔力量の抑え方を知らぬ!それにこれは元々貴様の身体でやろうとしていた事の一つなのだ!早く教えろ!!」」


 またの魔力切れで瀕死状態になっては困ると、この状況でもクロウに魔法を使わせようとしないガイアは、他人を自身と同じ魔法をかけ空間転移する際に何を想像しているかクロウに尋ねた。


「「そんなもんイメージだよイメージ!余計なこと考えねぇで目的の場所が浮かんだら二人一緒に消えて飛ぶって考えるだけだ!」」


 それだけの訳が……いや、自分の魔力が宿っている相手となら一人も二人も変わらないのか。


 ガイアは一呼吸入れてた後に、瞬時に移動し恵華の背後へ回り込んだ。

 そして背中に触れたまま空間転移発動に集中し魔法陣を展開させ、座標と恵華と転移するイメージを強く念じ膨らませた。


 くっ……何だこれは……放出される魔力量が多過ぎる上に抑える事が出来ない!

 今の此奴の魔力量のせいなのか、他人との転移にこれほどの魔力が必要なのか分からぬが……行ける!


「おい!これはクロウが暴走して恵華と転移した事にしろ!良いな!任せたぞ!!」


「え!?分かりました!ガイア様は何処へ!?」


 リルルの質問には答えず、クロウと融合したガイアは恵華と共に転移し消えて行った――。

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