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四十七 【彼方からの声を信じて与える血】

 クロウは突然恵華に血を与えると言い出すと、恵華が乗る車椅子を押し始め部屋を出ようとする。

 それをエリザが咄嗟にクロウの腕を掴み止めた。


「ちょっ!どこ連れて行くんだコラァ!お前もしかして……」


「俺の部屋だけど?人が見てる前でやることでもねぇし」


 人に見られないように自室に向かおうとするクロウ。

 魔力を使用して良いか分からない問題と、恵華の体に関しての問題もある。

 しかしそれはクロウとガイア、そしてエドガーしか知らない。

 何が起こるか分からないのにも関わらずクロウは血を与えようとしていた。


「きゃー!クロ様にチューされるぅ〜☆」


 何も知らない恵華はテンションが上がり騒いでいた。

 エリザはそんなことはさせまいとクロウの腕を掴んだまま離さそうとしない。

 他の者は恵華が治るのであればという考えもあるが、クロウの体の心配もあってどうして良いのか分からず止めるに止めれない。


「アホか!誰が口移しって言ったよ!」


 指からでも血を出し、それを舐めさせると言うクロウに恵華はブーイング。


 するとそこでガイアが動き、止めるのかと思いきや一緒に行くと言い出した。

 ガイアは先程クロウが起きてくる前に話した"融合した後の魔法"を確認したくてしょうがなかった。


 しかし、クロウは来るなと断り恵華も一緒になって「邪魔するな」の一言。


 腹ただしい二人にガイアは怒りをグッと堪えて、クロウに融合の話しをした。

 まずは魔法が安全に使えるのか、身体の中でどういう魔力の流れかを確認する為にと説明した。


 それにはすぐに納得したが、血を飲ますところは見せる必要ないと部屋への同行を断り、エリザの手を振り払って恵華と部屋を出て行き自室へ向かった。


 恵華の問題を知っているエドガーは、クロウは何かを思い腹を括っての行動だろうと諦める。

 とは言うものの、もしこれで本当に恵華の怪我が治り普通に動けるようになれば、こちらの戦力は上がる。

 いざという時に作戦も立てやすくなると思った。


 なにより、人の体を治せる治癒魔法など今まで不思議と話しにも出なかった。

 人外種の中でも治癒能力持ちなどは長い歴史をさかのぼっても存在しない。

 成功したとして、もし世間に知れ渡れば世界政府が黙っていないだろう。


 何事もなくうまくいけば良いが……。



 ――クロウと恵華はクロウの自室に入り、準備を始めた。


「そんじゃあまず、よっと……」


 クロウは車椅子から恵華の腰と太股に腕を回し持ち上げ、そのままベッドへ運び寝かせた。


「ク、クロ様!ダメですよぉ!恵華シャワーも浴びてないのに〜!」


「ぁあ!?アホか!

 っつーか、そんな体では自分で風呂も入れねぇだろ。

 そういうことはシャンプーハットが取れてから言え(笑)」


「むぅ〜……でも、何で恵華は横にされてるんですかぁ?」


 血を飲んだ後のミルルとリルルの状況を恵華は知っているので、生命力核への浸透など簡単に説明し、クロウは人差し指を噛み切り血を出した。


「……ミルルちゃん達みたいに口移ししてくれないんですか?」


 チッ、あいつ等に口止めしておくんだった。


 静まり返った部屋で恵華にクロウはなんて答えたら良いか少し困惑してしまう。


 "飲ます"という事をするので突発的に浮かんだのが、血を舐めるのを拒まれたら面倒なので、唾液混じりに口移しをした。


 こんな訳の分からない理由では納得しないだろうと、クロウは恵華に条件を出した。


「今ある俺の頭に浮かんだ疑問を一つ……いや二つ答えろ。

 そしたらミルル達にしたのと同じ事を味あわせてやる」


「ほっ☆なんですかぁ!!」


 一つ目はたわいもない事を質問した。

 クロウは部屋を見渡しながら


「なんで俺の部屋はこんな殺風景なんだ?前の俺はこっちで何も興味を持たなかったのか?」


 この部屋で目覚めてからすぐにクロウ疑問に思ったことだった。


「そぉですね〜、クロ様は基本出かけてばかりでしたので……あっ!でも、音楽は好きでしたよ?

 ギターがあるじゃないですかぁ?

 たまにクリスさん達と地下で演奏したりしていましたよぉ?

 クロ様が作った曲も凄く良くてですねぇ〜、音源もありますから聞いてみると良いですよぉ〜」


 へー、音楽はニッポンでも少しやってたからそれは納得。

 にしても多趣味の俺がそれだけしかしてなかったのか?


 納得はしたが、なんだか腑に落ちない様子のクロウ。

 自分のことや人外種で頭がいっぱいになり、趣味に打ち込む時間はあまりなかったのだろうと思う他なかった。


「そんじゃあ次の質問。

 お前はなんで俺にそんな従順なんだよ?

 きっかけがあるだろ?話しな」


「……嫌です♡」


 記憶をなくし、初めて恵華と会った時にも似たような質問をしたが、大事な思い出となるので自分で思い出してくれとしか言わなかった。

 今回も同じで何度聞いても話してはくれない。


「言え!」


「いやん♡」


「吐け!」


「いーやーでぇ〜す♡」


「言えやぁ!!」


「ちゅーしてくれたらぁ〜♡チュ〜……」


「こぉんの!フン!」


 幾度となく恵華に断られ、クロウは痺れを切らし、口を尖らせてふざけた表情をしている隙に、恵華の口の中に血の付いた指を突っ込んだ。


「ほひゅっ!ひょうひゃらいれふからひゅひほひひゃいに♡」

(しょうがないから次の機会に)


「それは俺のセリフだ。ちゃんと舐めとって飲み込みな」


 恵華はクロウの指から血を舐めとり、ゴクンと喉を鳴らした。


「ん〜……血って鉄臭いだけだけどクロ様のはなんか違いますねぇ。

 美味しい……で……す……」


 血を飲んでから数秒で恵華の顔は赤く染ま

 り、話しているうちに眠るように意識を失った。


 いつかの俺の声……幻聴じゃないと信じるぞ。

 とりあえずガイアを呼んでくるか。

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