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四十六 【静かなる和解】

 拘束していた男は薬で半分睡眠状態だったはずなのにも関わらず、目を離した一瞬の隙に舌を噛み切り自ら命を絶ってしまった。


「意識も朦朧(もうろう)としてたし、水を飲ませた後に大丈夫だと思って噛ませてた布も外したままにしてたら……ごめん」


 その場に居た幹部はケビンだけだったので責任を深く感じて落ち込んでいる。

 男を拘束していた理由をよく知らないクロウは「気にするな」とケビンを慰めるが、エドガーやクリスはその事をブランドンへ報告する面倒から怒鳴りつけ出した。


 んなぁ〜うるせぇなー……仕方ねぇ。


「そんじゃあ軽く聞きたい事もあるから俺が報告やるよ」


 クロウはブランドンに自分が連絡すると言い出した。

 しかしその役割はブランドン直属の部下であるエドガーがしなければならない。

 エドガーは駄目だと断るが、


「良いじゃねぇかよ?軽くだよ軽く。

 タスリーフに戻る前に少し話すだけだよ」


 何を聞くのか尋ねると、先程の話しの中で出た一つの問題の人外殲滅部隊。

 これだけ少し聞いておきたい事があるとクロウは言う。


 するとガイアがタスリーフから戻った時にブランドンの所へ行けば良いと割り込むが、クロウはタスリーフに滞在している間の事が気になると言う。


 こちらから部隊加入の断りを入れに行く訳でもないので、クロウが不在中に再度アジトに来ないという保証はない。


 ここには人外のクリスが居ることもクイーンに悟られている。

 本当に人造人間の集まりであれば、クロウが居ない間に来られ、いずれはどうなることか。


「少しだよ、あのおっさんと話したいだけ。

 電話繋いでくれ」


「……分かった」


 エドガーは直接ボスの携帯電話に連絡を入れ、呼び出し音が鳴り始めるとすぐにクロウへ渡した。

 電話を受け取るとソファーから腰を上げて、リビングをウロウロと歩き始める。


「……よう、クロウだ。

 てめぇには聞きたい事が山ほどあるけど、まずエドガーに代わって報告だ。

 預かった男が自害した。そんで――」


 電話は繋がり、クロウは普通にブランドンと話し始めた。

 記憶がないとはいえ、組織に入った話しや今までやってきた事の大筋は知っている。

 恨みを持っていてもおかしくないのだが、電話で話している姿からは全く見受けられない。

 なぜなのだろうかとそれを見て全員不思議に感じていた。


「ふーん、そうだったのか……それなら良いんだけど。

 それと一つ、人外殲滅部隊ってのがウチに来たけど知ってるか?

 そいつらは俺を加入したいみてぇだ。

 そんでその部隊はあんたの所で俺が潰した人造人間で構成されているようだったけど、どういう事だ?話せ」


「……」


 エドガー達は電話越しでそのように率直に人造人間の話しを出すとは思わなかったので驚いている。


 すると、ガイアがクロウに近づき耳に当てている受話器に手を添え出した。

 何をどのようにブランドンは話しをしているのだろうか。


「……なるほどね。

 おっさんよぉ、回りくどい事しないではっきり説明くらいしろよ。

 とりあえず俺はしばらく異世界に飛ぶからアジトを離れる。

 あんたはあんたで情報を集めてくれ。

 こっちはこっちで何とかするからよ」


「……」


「分かった。

 あーっと、あんたが保護した龍人族を覚えてるか?

 リルルとミルルに会う事ができて色々話しは聞いた。

 記憶がねぇ俺はあんたが分からなくなってきたくらいだ。

 一体おっさんは人外絡みで何をやってんだろうなぁ(笑)……礼を言うわ。

 エドガーから聞いてるか知らねぇけどウチの悪魔と近々そっちに行く。じゃあな」


 ブランドンとの通話を終えてクロウはソファーに戻り腰掛けた。

 受話器に手をかざしていたガイアも話しを聞いてたのだろうが何も言わない。

 エドガー達は気になり、すぐに話しの詳細をクロウに聞く。


「預かっていた男はその……望み薄だけどルイスを誘う餌にしようとしてたらしいから死んでも問題ねぇ。

 殲滅部隊の事は知ってはいたけど、それが三つで結成されていたのは知らなかったみてぇいよ?

 そんで俺が勧誘を受けてるって言ったらなぜかキレてた(笑)

 これからぶっ潰す手立てを考えるってよ」


「えぇ……知ってたのかよ」


 エドガーは驚きながら肩を落とした。

 殲滅部隊に関してブランドンは把握はしていたが、関与はしていないと言う。

 相手は世界政府だけでなく、マフィアやギャングはもちろんの事、何処ぞの富豪などからの支援で出来た部隊のようだ。


 さすがに世界政府相手だと、ブランドンファミリーも迂闊に手を出せない状況でブランドン自身も関与せずにいた。


 何より、クロウ勧誘の件はブランドンに元々通達がきていたもので、疾うに断った話しだと言う。

 しかし、殲滅部隊が動き出すと人外自身だけでなく、人外を使い仕事をする組織も動くはず。


 そうなった時の協力は免れないだろうとブランドンは言っていた。


「実際のところ、あのおっさんが裏で何やってるか知らねぇけど、奴からして部隊が邪魔なのは分かった。

 まだ何も決まってねぇし、何も詳細も分からねぇ。

 他の組織と協力する事になった時はどうなるか分からんけど、頭には入れておいた方が良いな。

 はぁ……次から次へと。

 色々と邪魔くさくなってきたな」


 クロウの言う通り何かをしようとすれば新たな問題が出てくるこの状況。

 さすがに記憶がないから何も知らない、何も分からないと言ってられなくなってしまった。

 クロウはソファーから立ち上がり短くなった煙草に口をつけると、煙を大きく吸い込み吐き出し、灰皿に強く押しつけて消した。


「スー……ハァ〜!

 やれる事、やろうとしていた事をやっちまうぞ!!

 お前等タスリーフに連れて行って俺は精神と時の部屋に入る!

 クロウファミリーはガイア言った通り殲滅部隊を調べつつ人間が出来る対策を考えろ!」


 クロウは色々と考えるのが面倒になったのか、始めに出ていた問題から順に勢いで片付ける事にシフトした。


 自分が何をしたくてこれからどんな情報が入ってくるのか分からんけど、ブランドンのおかげで少しは理解できたぜ。


 するとクロウは何かが吹っ切れたように「よし!」と言いながら恵華の方を振り向きだした。


「恵華!」


「ふ、ふぁい!」


 急に名前を呼ばれ驚いた恵華は菓子を口に入れたまま返事をする。


「魔法でお前の体治すぞ!

 俺の血を飲ましてやる!!」

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