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三十九【見知らぬ自分】

 J・Dがアジトから引き上げ全ての車が見えなくなると、屋敷の中からリルルとミルルが出てきた。


「何事もなくて良かった……」


 クイーンの言っていた隠れている人外はこの二人のことだった。


 戦闘となった時に備え、隠れて様子を伺っていたようだ。


「お前達……その時はどうなっていたか分からないが、こういう時はお前達に屋敷に残っているあいつ等を守ってくれた方が良いんだ。

 それにクロウとの約束は良いのか?」


「にゅー!みんなを守るためなら良いんだよ!それより、ガイア様が急に意識を失ったんだよ!!」


「は!?ガイアが?」


 全員急ぎ足で医療室に向かい、見るとガイアはベッドで横になっていた。


 クロウの次はガイアが……どうなっていやがる。


 聞くと、女達と共に地下に向かったガイアは、医療室に入りベッドに腰掛けると急に倒れ意識を失い、元々動いていたかは不明だが心臓も止まっていた。


「ふーん、こうして見るとただの可愛いガキだなぁ」


 エリザはガイアの寝顔を近くで眺め、頬をつねったりといじくる。

 アンナとドクはどうして良いか分からないので、とりあえずクロウが目覚めた後にガイアを医療カプセルに入れようと考えているようだ。


「それでどうにかなるもんなのか……ん?」


 突然部屋に黒い霧が出現し、ガイアを覆い始めた。

 まるでクロウの中にガイアが入り込む時と同じ光景で、霧がガイアの体に全て入り込むと覚醒し起き上がった。


「ガイア!突然どうしたんだ!?お前も魔力切れを起こしたのか!?」


「フゥ……そんな事になっていれば俺はこの世界から消えている。

 それより貴様、あやつ等を見て気付いたか?」


 ガイアは思念体だけ表に出し、エドガー達の所へ行っていたようだ。


 屋敷の中から人外の気配を感じ取っていたが、それが何処かで感じた違和感に似て不気味に思い見に行ったようだ。

 ガイアからして見ても普通の人間に見えていたが、微かに人外種の生命力に似ていようだ。


「確かにそれぞれ異様な雰囲気を感じたが……あれはなんだって言うんだ?」


「あやつ等はクロウがジジィの屋敷で潰したあの人間と同じだ」


 なんと、あの三十人程居たJ・Dは、ブランドンの屋敷に居た男と同じ、部隊長のクイーンを含め全員人造人間だった。


 しかし、まともに話しをしていた大臣と呼ばれていた男は普通の人間。

 そしてガイアは異様な生命力にJ・D全員を確認し、うなじにはボタンにも見える何かが埋め込まれていたようだ。


「本当か!?確かに後ろにいた奴等はあの人造人間と同じ雰囲気だった。

 でも……その中であの女だけは人間に近しい感じがあったな」


 まだ分からない事だらけだが、とりあえずはクロウを勧誘している今はまだ敵ではないという事。


「おい女、あれ等がどう造られたか分かったのか?」


「女!?アンナよ!二日で分かる訳ないでしょ?

 色々慌ただしかったんだからまだ何も調べてないわよ」


 アンナはブランドンの屋敷でクロウの着ていた衣服から人造人間の血液を採取していた。


 どう造られたか、どれ程量産されているのか調べようとしていたが、もしこれがブランドンではなく世界政府が造ったとなると調べるのは容易ではない。


「あぁ〜クソッ!本当に面倒だ!!」


 人造人間が組織内だけの事であれば、まだ調べようがあるが、他での可能性が浮上してきたことでアンナも頭を抱えた。

 エドガーは大臣から受け取った連絡先の書いてあるメモを見てため息を吐いた。


「とりあえずクロウが起きてから考えよう。

 今のこいつがどう判断するか分からないけどな。

 ハァ……疲れた。マーシャル、コーヒー頼む」


 全員ブランドンの屋敷から戻ってほとんど休めていなかった。

 治療や突然入った仕事、新たな問題、心配事。

 エドガーに限ってはブランドンとガイアに使われ疲れきっていた。


 クロウはあと少しで目を覚ますと思われる。

 アンナはクロウが起きた時のためのバスタオルと着替えを置いて全員リビングに向かった――。


 しかし……あの部隊長と言っていた黒髪の娘。

 何処かで見たような。


 ガイアはクイーンの容姿を思い返し考え込んでいた。



 ――その時、クロウは深い眠りの中でまた不思議な夢を見ていた。


「「……胸の苦しさがほとんどなくなったな。

 何だ?誰かいる……って、あれ俺じゃねぇか!?

 髪長っ!キモ!また意味不明な夢か?すげぇ殺風景なところだな」」


 前にカプセルの中で見た夢のように、自分自身を映像として見れる不思議な夢。


 クロウは砂漠化した場所で佇んでいる。

 しかし、その姿はまるで別人のように変わり果てていた。

 肌は黒く、眼球の結膜も赤黒く、腰下まで伸びた髪、とても普通には見えない。


「「映画観てる感じだな。ここは何処だ?異世界なのか?っつーか、本当にロン毛キモいな。

 何で毛先の方は白いんだよ」」


 核爆発でも起きた後のような殺風景な場所に瓦礫が散らばっているだけだが、何処なのか全く分からない。

 すると、変わり果てたクロウに人の形をした白い光が近づいてきた。


「……」


 何か話しをしているようだが、声が小さく聞こえない。

 クロウはなんとか話しを聞こうと映像が二人に寄るように念じる。

 すると近づきはしないが、なぜか声だけは耳に届くようになってきた。


「僕ももう能力は使えない。

 ルシファーが死んだ事により君と完全に分離して能力は全て君に継承された。

 "無限界"を越えることはもう不可能だけど、君は後一度だけ言霊を使える。

 それでも嫌かな?」


「……うるせぇんだよ。

 もう使い道が分からねぇ。

 失敗しか浮かばねぇし、もうこの世界に頼れる神も俺の知っている奴も誰もいない……だったらこのまま宇宙丸ごとぶっ壊した方が楽だ」


 クロウは聞いても二人の言っている意味が分からなく必死に推測しようと考える。


 ルシファーって誰だ?

 "無限界"ってなんだ?継承?あと一度の言霊?

 ……これは夢なんだよな?もしこれが……あれ?


 意味不明な夢に惑わされていると、突然映像が小さく見えなくなってしまった――。



 [シュコーッ、シュコーッ、シュ……]


 ……ハッ!?またカプセルの中か!


 クロウは生命力と魔力が回復し、夢の途中で目覚めてしまった。


 クロウが起き上がろうとするとカプセルのセンサーが反応し、中の液体が引いていくと扉が開いた。

 辺りを確認しつつカプセルから出ると、部屋には誰もいない。


「いつこの中に入れられたんだろ?

 っつーか裸!?服は誰が脱がしたんだ?

 ……ひとりぼっちや」


 クロウはいつ気絶したのかよく覚えていない様子で頭を傾げながら医療室から出ようとする。


「おっと、フルちんだった!

 一応女も居るしこのままじゃ〜……どうしよう」


 全裸だったことを確認して、部屋のドアの隣にある鏡の前で立ち止まった。


「白髪似合わねぇ〜、髪染めで戻すか。

 ……ちん毛も白い」

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