三十七【人外殲滅部隊】
クロウが眠っている中、どこかの組織が人外種と共にアジトへ向かって来ていた。
このような事態は過去に何度もあった事だが、アポなしでこのド田舎にあるアジトへ来る者達は、クロウを恨んでの襲撃がほとんど。
「面倒な事になりそうだな……恵華達は地下に行ってクロウのそばにいろ!
いざとなったら叩き起こせ!!
それとガイア!もしもの時はクロウの代わりに人外を頼むぞ!」
接近戦で強い恵華も車椅子を使わなければ立って歩けない程の体。
客人と共に地下へ避難させ、人外の相手をガイアに頼んだ。
しかし、
「能力持ちかも分からぬし、それはできんな。
貴様等の下らぬ小競り合いに俺は関係の無い事だ。勝手にやれ」
「なっ!」
今までにガイアは、クロウの身体を乗っ取り相手を蹴散らす事は多々あったのだが、全てはクロウと人外種を守るためだけ。
もしくは能力を乱用し、目に余る悪事を繰り返した人外を見つけた時。
組織の抗争やクロウファミリーを守るために動いた事は一度としてなかった。
「エドさん、ごめんなさい。
クロ様がいないのに恵華も出れないなんて……」
「気にするな。
どちらにせよ、向こうさんが何処の組織か分からないからな。
堂々と向かって来るのは不気味だが、クロウ狙いなら間違いなくやり合う事になる。
とりあえず仕事は後回しにして全員武器庫に集めろ!」
クリス達はクロウとエドガーが妖精種の所へ向かい出た後、とある仕事の一件をブランドンから担い、今まである男を尋問していたようだ。
「そんじゃ、あいつは拘束して部屋に閉じ込めとくか」
クリスは部屋を出て行き、エドガーもガイアを諦め、それでもなんとかするしかないと動き始めた。
すると、部屋を出ようとしたエドガーをリルルとミルルが呼び止めた。
「クロウがいないんだからアタシ達がついて行くよ?」
「にゅっ。もし能力持ちだったら危ない。
戦闘に優れた人外を侮っちゃダメだよ」
やり合う事になった時は、リルルとミルルが人外の相手をしてくれると言ってくれた。
しかし、エドガーは断った。
エドガーだけはリルルとミルルが異世界へ渡った時の事や、レイチェルが人間の身でこちらの世界を捨てた事を全て知っていた。
なのでこの世界の出来事に干渉してはならないと断った。
「それに下手すると人間も相手にすることにもなるぞ?
お前達はクロウとの約束を忘れたのか?俺達は守られる側の人間じゃない」
「それは!……ごめんなさい」
タスリーフで生活する事が決まった時に、クロウと交わした約束の話しを出すと、リルルとミルルは何も言えなくなってしまった。
話しを終えるとエドガーとクリスは武装を整えるために部屋を出て行った。
「にゅ〜……でもお姉ちゃん、この気配なんかおかしいよ〜」
ミルルは何か普通の人外種と異なる気配も感じ取り不安になっていた。
恵華達は地下へ向かい、クロウの眠る医療室へ。
エドガー、クリス、ケビン、マーシャル、そして部下十数名は表に出た。
残りの動ける部下達は屋敷内から狙撃配置。
エドガー達正門から見えない屋敷周辺の至る場所に散らばり万全の体制で待ち構えていると、数台の車の姿が見えてきた。
エドガーは双眼鏡で車を確認するが、フルスモークで中の人影すら見えない。
クソッ、どこの奴等か全く分からねぇ。
でもウチの傘下じゃないのは確かだな。
ブランドンの傘下であれば、エドガーは大体は把握している。
クロウファミリー以外の派生組織はイカれた人間ばかりで、もしクロウを狙ってきているのなら車だけで真っ直ぐ向かって来る訳がなく、こちらから見えない場所から何かしらのアクションを起こしているはず。
目視できる範囲に来ても何もなく、車は屋敷の前に並び止まった。
車は八台。
ドアが開き出てきたのは、驚くことに全員軍服を着ていた。
軍人!?しかし全員なんだか奇妙だ。
それに……何だ?あの異彩を放った女は。
三十人程いる中に一人異なる軍服着た女軍人。
色白の肌に白髪のロングヘア、瞳は赤く何処となく危なそうな目をしている。
女は先頭に立ち、そのとなりに立つ男が突然クロウを呼び始めた。
「こちらは世界政府から結集結成された"人外殲滅部隊ジェノサイド・デルタ"だ!
ここがクロウファミリーのアジトと見受ける!
政府命令だ!クロウ!ここに姿を表せ!!」
人外……殲滅部隊だと!?
それに何でクロウの居場所を知っているんだ!?
やはりクロウ狙いだった。
しかし、マフィアやギャングの類いでない者が訪ねてくる事は少ない。
しかも、アメリカだけでなく"世界"というのが妙だった。
どちらにせよ、クロウは眠っているため出てこれない。
エドガーは仕方なく自分が出迎え追い払う事に。
屋敷の門の方へ向かい歩いていると、クリス達もエドガーを追って出て来た。
「……お前等まで来ることないだろうが」
「アホか、よく見ろ。相手は完全武装だ。
何をしてくるか分からねぇだろ?」
念のため全員銃のロックを解除し、いつでも発砲できる体制で向かった。
門の前に着き、クロウは不在だと伝え改めてエドガーは要件を聞いた。
「人外種が人間に混じり生活しているのは知っているな?
たが、この半年間で世界中の首都を中心に様々な事件が引き起こり絶えない。
そこで結成されたのが我々人外種を一掃する人外殲滅部隊、通称J・Dだ」
様々な事件って……なぜ今更?
今までは人間が人外種を使い、強盗や殺人などは元々少なくなかったが、その時は人間だけを引っ張りあげた後に人外種を芋づる式に捕まえていた。
しかし、人外種だけで引き起こす事件が世界的に多くなり対処が難しくなった。
それに対抗し世界政府が軍や公安以外の組織からも手を借り、三つの部隊を結成したようだ。
「人外の……殲滅……」
まずいな……ガイアが聞いたら面倒な事になるぞ。




