三十六【魔力切れ】
クロウとレイチェルは地球にあるアジト内へ空間転移して恵華の部屋に出た。
ところが、恵華達の姿はなく誰も部屋に居ない。
何処へ行ったのかと思っていると、突如微かな茜色の光がキラキラとクロウの頭上に現れ、それに気付くとすぐに消えていった。
「なんだ?空間が閉じた光か?
っつーか誰も居ねぇ……恵華の生命力を探って来たはずなんだけどなぁ」
恵華の生命力ではなく、恵華の部屋自体を頭に思い浮かべていたせいなのだろう。
「一度来て覚えた場所なら簡単に転移できるってことか。おっ?顔真っ赤!」
一緒に転移してきたレイチェルが顔を赤らめてクロウの腕の中で気絶していた。
ひとまずベッドにレイチェルを寝かせ、クロウは恵華達を探すことに。
えーっと、誰かしらの生命力を感知して転移すりゃいいや。
クロウは目を瞑り、屋敷内に複数感じる生命力中から恵華やリルル達を探していると、誰かがこの部屋に近づいてくるのが分かった。
その時、突如クロウに異変が。
これは恵華とミルルの生命力か?
っつーかさっきと同じでまた胸の辺りが……うっ!!
突然強い胸焼けのような感覚が襲うと、クロウはその場で倒れてしまい気絶してしまった。
[ガチャッ]
「みんなの絵もありますよぉ?パソコンに入って――クロ様!?」
部屋に入って来た恵華とミルルは、気絶して倒れているクロウに気付き、エドガー達を呼んで医療室に連れて行った――。
[シュコーッ……シュコーッ……]
あぁ〜気持ち良い……何だろ、胸がスーッとする。
クロウの意識が戻り、目覚めると医療カプセルの中だった。
またこれか……なんか外がうるせぇな。
「何でこんな事になってんだ!説明しろ!」
医療室でエドガーが怒鳴り散らしているのが聞こえてきた。
「俺にも分からないのだ……此奴の魔力量は急激に上がっていたので余裕があったはず。
だが、少し前のクロウの魔力量でできる範囲を超えていたのにも関わらずに自身以外との転移魔法を繰り返し、魔力砲まで放とうとしていた。
本当ならばタスリーフで倒れていてもおかしくはなかったのだが……」
ガイアと……これはエドガーとクリスの声か?
「じゃあ何で止めなかった!また死にかけてんじゃねぇか!」
「だから言っておるだろう!
こちらに転移する前はクロウの魔力にまだ余裕があったはずなのだ!」
クロウが倒れたことに対してガイアを問い詰めていた。
「ちょっと二人共うるさいわよ!クロウが起きちゃうでしょ!」
死にかけてた?俺のこと?
それに"また"って……どういう……やべぇ、眠ぃ……。
クロウはまだカプセルに入ったばかりだったのか、これ以上会話を聞いていられない程に疲労し、すぐにまた眠りについてしまった。
――その頃リビングでは
恵華、エリザ、リルル、ミルル、そして最後にクロウと共に一緒に来たレイチェルの女子だけがリビングで集まっていた。
アンナはドクの助手をしているため、医療室でクロウを診ている。
全員医療室でクロウが起きるまで待ちたいと言ったが、すぐには目覚めないとドクに追い出されてしまった。
「レイちゃん落ち込まないで下さいよぉ!
クロ様は大丈夫ですから!」
「……恵華は強いね。ありがとう。
でも、私がみんなに会いたいなんて言わなければこんな事には……」
クロウが倒れたのは自分のせいだとレイチェルは落ち込んでいた。
転移してこちらに来てからもう三時間。
リルルとミルルもこちらの世界に来られてはしゃいでいたのも一変し、二人共静まり返り落ち込んでいる。
「にゅ〜……アタチに魔法が使えれば何かできそうなのに」
「そんなに落ち込むなってミルルちゃん。
あいつは殺しても死なないような奴だから大丈夫だよ……本当綺麗な髪だねぇ〜」
エリザはミルルのピンクの髪が気に入ったようで、初対面からずっと髪を撫でている。
レイチェル達は昼過ぎにこちらの世界来て、もう日が落ち始め夕方に。
お義父様に今日中に戻ると言ったけど……って!何考えてるの私!
クロウが死にかけたのに!バカ!
ガナフ国王がレイチェルのために開催する明日のパーティーの事が頭を過ぎり、この状況でそんな事を考える自分に自己嫌悪していた。
すると、ガイアとエドガーが部屋に入ってきた。
「クロ様の容態はどうなんです?」
「安心しろ、もう大丈夫だ」
今はバイタルは安定し、魔力自体はほとんど回復したようだ。
あとはそのままカプセルの中で生命力の回復を促していれば、その内目を覚ますだろうとアンナは言っていたので二人安心して部屋に戻ってきたようだ。
「ねぇ、クロ様は何で魔法を使うとこんな事になるの?」
恵華は過去にクロウが倒れた時の事を思い出しガイアに質問したが、これはガイアにも分からないようだった。
魔法を使えば魔力は減少する。
空間転移や物体の形状変化などの魔法を使っていたが、それでもクロウの魔力量には余裕があった。
しかし、レイチェルと転移後のクロウの魔力残量は0に等しいほどになっていた。
「なんでそんな急に……クロ様が魔法を使うって命に関わることだったってことなの!?」
「喚くな!俺も今は何も分からないのだ」
なぜクロウの魔力があれほど減少したのか。
何かがあったとすればブルーライフストーンに魔法を込めた後の沈黙状態。
魔力が底をついたのかと思ったガイアは、クロウ魔力残量を確認したが問題はなかったようだ。
「気にかかる事はあるが、クロウ自身に聞いてみなければ分からん。
目を覚ますまでそう時間はかからないであろう」
とりあえずは心配要らないとガイアは言うが、全員浮かない顔で静まり返る。
すると、ミルルが俯いた顔を上げて何かを察知した。
「何か来た……」
すると部屋のドアが勢いよく開けられ、慌てたクリスが入ってきた。
「どこの奴等か分からねぇけど、車でこっちに向かって来てるぞ!」
ブランドンファミリーで連絡もなしにこちらに出向く者はいない。
つまり、クロウファミリーのアジトを狙って来た組織の可能性が高い。
「チッ……屋敷で療養している奴以外の人数確認して配置につかせろ!
車だったらどこの奴等か分からないのか!?」
「こっからじゃ分からねぇ、だけど……」
「何だ!?」
「この感じ……人外所有の組織だ」




