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三十四【願いを込めた石】

 サラの遺品を無事城へ持ち帰り、ガナフ国王が手に持つ輝きにレイチェルは気付いた。


「その綺麗な石は何ですか?」


「おぉそうだ!これを取りに行ったのだ」


 昔、初めてサラを城に招いた時に贈ったブレスレットだと説明した。


 そして明日に国内でレイチェルのためのパーティーが行われるが、そこで改めて渡してしまうと面倒が起こるかもしれない。


 サラは片時もブレスレットを身から離したことはなかったので、身内や民衆が覚えていないとも限らない。

 なのでレイチェルがこの世界に来た当初に国王からの贈り物とすることにした。


「そんな、良いのですか?遺品をあの場所から出すことは厳禁と聞いておりますが……しかもサラ様の大事な物を私なんかに」


「元々考えていたことなのだ、構わない。

 ただ、サラの遺品との事は周りには伏せておいてくれ」


 レイチェルはガナフ国王の気持ちを受け、赤く輝くブレスレットを見つめながら「ありがたく頂戴します」と受け取った。


「懐かしい物を持ってきたものだな。

 あの頃は一時的に身体を借りて貴様達の婚礼の義へ行ったのだったな」


 ガイアは二人の結婚式に人外種の身体を借りて出席していた。


 えぇ〜!ガイアが!?そんな事にわざわざ出向くようには見えねぇけど。


 クロウは目を見開きガイアを見ながら驚いている。


「見に行っただけ?ガイアは何か祝いはやらなかったのかよ?」


「俺はこの石に魔力を込めてやったのだ」


 結婚式に出席したガイアは、ガナフ国王からの贈り物となるブルーライフストーンを魔導具に変え、特殊な防御魔法を込めたようだ。


 命の危機が訪れ、それにサラの生命力が反応すると魔法が発動する仕組みのようだ。


 なーるほど。この色は魔力の色ってことか……。


「あの時はありがとうございました。

 しかもわざわざ大衆の前なのに魔法を使っていただいて良い余興にもなり、婚礼後も私もサラも感極まりずっとガイア様に祈りを捧げていました」


 何も道具を使わずに使えるという魔法は特殊。

 何より魔導具なしに魔法を扱える者は異世界にも存在しないとされている。


 魔法を知っている人外種は多いが、ガイアは魔法を使えることを隠していた。


「隠してた?何で?」


「言っているでだろう?魔力を体に宿す者はこの世界では存在しないからだ」


 そういやはぐらかされたけど創造主がどうたら言ってたな。


「お前って何なの?やっぱ向こうじゃ神的存在なんだろ?でも悪魔で魔王……結局何なの?」


 クロウの質問にガイアは何か考え始めたような顔をするが、すぐに素に戻ると、


「今の貴様に話しても仕方のない事だ。

 それより貴様もこの石に何か魔法を込めてやるが良い」


 またしてもガイアは自分のことを話さなかった。

 クロウは自分のことを末裔と言っているのになぜ話さないのか、できれば話したくはないのか気にかかる。


 とりあえずはガイアの言う通りクロウもブレスレットに魔力を込めようと思い、レイチェルに腕を出してもらった。


「……っつーかよ、何で"ブルーライフストーン"なの?」


 クロウは名前が気になりガナフ国王に尋ねると、タスリーフで初めて青く輝く奇妙な石を見つけた者がアクセサリーとして身につけ、肌に離さずに持っていた。

 するとその者が亡くなった時、眩しい程綺麗に青く輝いていた石が光を失いただの石と変わり、二度と光る事はなくなったという。


 魔導具に詳しい者が調べると、その石は身につけた者の生命力に反応する事が分かり、"ブルーライフストーン"と名付けられた。


「ふーん。っつーことはこれ、今魔力抜いたらただの石なんじゃねぇの?」


「いや、まだ光を失っていない。

 そのブレスレットは元々私の物だからな……それをサラに渡したのだ。

 だから私の生命力に反応している。

 私が死んで光を失うと同時に、込められた魔法が発動して消えるようになっているのだ」


 それって意味ねぇんじゃ……そんなことねぇか。


 ガナフ国王が死ぬと、魔力も自動的に発動して消え失せてしまう。


 ガナフ国王が突如亡くなった場合、何かしらの事件に巻き込まれた可能性が高いため、その後を継ぐサラが一番危険な可能性が高い。


 そのような事が起こった時のため、強制的にサラにだけ何にでも適応する魔力防御がかかるようになっていた。

 何よりそうしておけば、ブルーライフストーンが盗まれ他人の手に渡ったとしても意味がないので問題ないからだ。


「へぇー考えたねぇ〜。

 そんじゃあ俺はガイアとは違う"防御魔法"が発動するようにしようかな?

 それと王妃の物だったってバレないためにも少し形を変えよう――」



 その時、突然クロウの頭の中で夢で見た光景が脳裏浮かび映し出された。


 え?何だ!?

 ……これはレイチェルの部屋?

 やっぱ来たことあるんじゃ……いや、違う。


 しかし、妙なことに多少異なる部分もあり、辺りがぼやけて鮮明に見えない。

 部屋の中央に見知らぬ男の背中が見えてくると、声が聞こえてきた。


「「反撃する手段の一つでも備えていれば……」」


 クロウ自身の声だった。

 何の話しか不明だが、その言葉と共に夢の光景は消え失せた――。



 レイチェルに……反撃手段……。


 クロウはなぜか今まで感じたことのない恐怖心が迫ってくると、考えを改め始めた。


「……やっぱ同じ防御じゃ芸がねぇな、

 俺は"攻撃魔法"を込めるわ!次いでにおっさんの生命力との繋がりも変えちまおう!」


「そんなことができるのか!?

 可能であればレイチェルの生命力に反応するようにしてくれまいか?」


 クロウは訂正し、レイチェルに殺意ある攻撃を受けそうになった際に相手を消滅させる魔法を込めようと考えた。

 そして、できるならブルーライフストーンと生命力の繋がりをガナフ国王からレイチェルに切り替えることに。


「レイチェル、好きな形はあるか?星型とかハート型とか、何でも良いよ?」


「え?えーと、ハートが好きです……羽の付いたハート!」


 羽付き?エンジェルハートって感じか?


 クロウは円形状のブルーライフストーン自体の形を魔法で変えようとレイチェルに要望を聞き、仕上がった形状を思い浮かべながらブレスレットに両手を添えだした。


 ん〜……石がハートでプラチナで羽を付けて……。


 頭の中でしっかり形状を思い浮かべ、魔法陣を展開。

 すると赤く光る手の中で形状変化を起こさせた。


「……よし。

 次は生命力の繋がりの移行、攻撃魔法とそれに必要な条件を石に込めるぞ」


 淡々とこなすその姿を見て、ガイアは少し関心しながらも不可解にも思っていた。


 なぜ此奴は失敗もせずに今ここまでできるのだ……魔法を教えた当初は魔力を練る事もおぼついていたのに。


 ガイアはクロウと魔力の同期を果たしているため、クロウの魔力量は分かっている。

 空間転移、膨大な魔力を放出する魔力砲、瞬間移動、そして今。


 これら全てをクロウの魔力量で、数時間で一気に使えば命に関わる程だった。

 ガイアは不思議に思いクロウの見ていると。


 [キーーーーン……]


「ぐぬぬぬぬ!よっしゃー!完……せ……」


 ブレスレットから手を離し開くと赤く輝くハートのブレスレットは綺麗に仕上がっていたが、なぜかクロウの様子がおかしく一点を見つめたまま放心状態となっていた。

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