三十三【守護龍・ジハード】
クロウとジハードは他の龍についての話しで盛り上がっていた。
二人の楽しそうに話している姿にしびれを切らしたガナフ国王は、ゆっくりと立ち上がり話しに割って入った。
「あのー……すまない。
クロウは黒龍と話せるのか?もしそうなら私を紹介してくれぬか?」
「ん?あぁ、悪ぃ」
クロウはガナフ国王にも魔法をかけてジハードとの会話をできるようにした。
するとジハードは姿を知らなかっただけで、王の存在はガイアから聞いていたようだ。
ガナフ国王が大陸の調査で国外に出たところを襲った事も覚えていた。
「あの時は見知らぬ軍勢がこの大陸にたどり着いたと早とちりしてしまい、思わず挑発してしまいました……申し訳ない」
ジハードは建国当初からガイアにこの大陸の守護を任されていた。
なので国外で見慣れない生物を発見するとすぐに警戒態勢に入り、大陸から追いやるか、事によっては排除していた。
ガナフ国王の時も排除としたようだが、軍勢の中で国章が目に入り、この大陸の者だと分かり問題ないとすぐに退散したようだ。
「そうであったのか。それは誠にすまないことをした。
調査も考えようであるな。
これからは黒龍……いや、この大陸の守護龍ジハード様に分かるよう旗でも掲げよう」
ガナフ国王は詫びを入れ、ジハードもガナフ国王の顔と生命力を覚えた。
「しっかしなぁ〜、この世界もそうだけど、いきなりドラゴンって(笑)
なぁガイア、お前の体は元はあの妖精種じゃん?
手の平に乗るくらいの妖精とかはいないのか?」
クロウは人外種の話しを聞いてから驚きの連続だったので、ここまでくると空想生物は大体存在するのではないかと興味が湧きだしガイアに尋ねた。
「何だそれは?そんな生物が存在する訳なかろう。
阿呆が」
「……あっそ」
存在する訳ないって、お前の存在がすでにおかしいんだっつーの。
クロウのテンションが下がりつつも、レイチェルが待っているのでそろそろ城へ戻ろうとクロウとガイアは魔法陣を展開させた。
「それじゃあまたなジハード!近いうちにまた会いに来るからよ!
その時はこの世界を案内してくれや!」
「フフッ……クロウ、貴方の手の平には乗りませんが、"魔"を司る妖精は人種と比べて比較的小さく可愛らしいですよ」
魔の妖精。
世界に流れるマナを扱う人外種。
それを風の妖精の力を借り、その星に魔力の拡大拡張させる役目を持つ妖精。
生物は体の中で純度を高めて"魔力"にする。
しかし、この世界にはマナ自体が存在しないため、風の妖精と同等の扱いとなっているようだ。
「何だそりゃ!?そんなんいるのか!!
見てぇ!今すぐ見てぇ!……って、やる事あるしまた今度詳しく頼むわ!そん時会わしてくれ!」
「もちろんです、お待ちしていますね。
その時は魔王様も共に参りましょうね?」
「あぁ、分かった」
魔の妖精か〜。マナを集めるってどうやるんだろ?
っつーか、こいつを魔王って呼ぶ奴に初めて会ったな……こいつってマジに魔王なのか。
ジハードと再会を約束し、クロウはガナフ国王の肩を掴んだ。
「ちょっと待てクロウ!結界を張り直さなければ!
それに血を飲まなくても良いのか!?」
「大丈夫だよ。一度俺の魔力が国王の生命力の"核"にまで浸透したから。
だからジハードとも魔法で話せるようになったろ?
俺の勘だとそういうもんだ!……たぶん」
ガナフ国王は不安でしょうがないままペンダントを扉にかざし結界を張り直した。
しかし、クロウはまたミルルの時と同じような行動をとっているが、ガイアは止めようとはしなかった。
クロウの言っている通り、一度体に魔力が浸透すれば簡単に消えることなく生命力に蓄積され、極小さな魔力核が生成される。
ミルルの容態を診に行った時すでにガイアはその事を理解し確認していた。
「そんじゃ行くぞ!ん〜……ルーラ!」
クロウは普通に転移せずに別の呪文を突然を叫び、レイチェルの元へ転移した。
――その頃レイチェルは屋上から動いておらず、ずっと黒龍のいる方を眺めながらクロウ達を待っていた。
あれが黒龍……リルルから聞いていたけど見るのは初めて。
クロウ達は無事なのかしら。
ガイア様もいきなり消えてしまうし。
すると、遠くの方で光がちらつき、その光はレイチェルの方に高速で移動してきた。
赤く光る丸い球体が目の前に降りてくると、光は徐々に消えて中からクロウとガナフ国王が現れた。
「お、おかえりなさい!今のが空間転移?リルルの時と違って空を飛んできたように見えたけど?」
「マジで!?何だ今の?景色がすげぇ早く動いたと思ったら城に着いたぞ?」
クロウは自分が何をやったのか、どのように移動したのか分かっていなかった。
レイチェルは赤く光った先で突然球体が飛んできた事をクロウに伝えた。
なんじゃそりゃ?マジでルーラ使ったってことか?
クロウは自分が使った魔法が何か考えていると、空間転移魔法でガイアが戻って来た。
「貴様、空間転移でなく瞬間的に移動となる事をしただろ?」
ガイアはクロウがしっかりガナフ国王と空間転移を成功させるか転移せずに留まり見ていたようだ。
瞬間移動?……なるほどねぇ。
ふざけて"ルーラ"を口に出して頭の片隅で考えちまったからかな?
「ルーラとか言っていたな?それもマンガという物からの知恵なのか?」
「まぁそうだね。っつーか瞬間移動って(笑)
ルーラは少し違うぞ?別物だ。
お前ドラゴンボール知ってっか?」
「ドラゴン……何だ?黒龍の話しか?
それとも龍人族の胸元を指しているのか?」
……もういいや。




