三十一 【サラの墓】
この墓は王妃のサラだけでなく、今まで王位についた歴代の王族全員の墓でもあった。
先代の王が城に保管されていた王の遺産、個人の遺品となる物をできるだけ墓の近くに置いてやりたいという思いでこの小屋を建てたようだ。
「ふーん、そんで?何で誰にも見られずにここに来たかったん?」
「実は明日、レイチェルが私のところへ来て丁度一年となる。
そこでサラの遺品から一つ渡したい物があってな」
どうやらガナフ国王が昔、サラに贈った物をレイチェルに渡したいようだ。
身内の遺品なら持ち出すところを見られても構わないだろうとクロウが聞くと、ここに保管した物は全てこの世には存在しない物として持ち出すことは禁止とされている。
なので亡くなった王家の者達が全て冥界に持っていけるようにとの願いで、国外でも唯一ガイアの結界が張られ護られた建造物だった。
説明し終えるとガナフ国王は中に入り、クロウは王族でないので外で待つことに。
しばらくしてガナフ国王が出てくると、手には赤く輝く石の付いたブレスレットを持っていた。
「これは"ブルーライフストーン"。
サラが初めて城に来た時に贈った物だ」
「ブルー?ブルーって色の?すげぇ赤く光ってるけど……」
するとガナフ国王は笑い、それはレイチェルに渡した後に説明すると言って墓石の前で祈るように手を組むと、サラへ話しを始めた。
「サラ、一年前に紹介したレイチェルが立派に成長している。
もう私にとって大事な家族となった。
だから君に渡したこの石をあの子に受け継がせたいと思う。
サラもどうか、あの子を……レイチェルを守ってくれ」
わざわざ新しい物でなく、王妃への贈り物を受け継がせるとは、レイチェルは相当大事にされているのだろう。
王妃を覚えていないクロウも手を合わせてサラの冥福を祈り目を瞑る。
この墓石、海風に晒されてるからか結構汚れてるな。これくらいの事は簡単にできるだろう……イメージ……。
クロウは魔法陣を展開させると、大きな墓石がみるみるうちに綺麗になっていった。
……良かった、できた。
「おぉ……クロウ、感謝する。
サラ達も喜んでいるはずだ」
「なら良いけどな。そんじゃ、戻るか」
用が済み、ガナフ国王の肩を掴んで転移魔法を使おうとしたその瞬間、
「ギィィィィィィ!!」
何かの鳴き声の方を振り向くと、とてつもなく大きな飛龍だった。
「っん何だぁ!黒いドラゴン!?」
「黒龍!なぜ……ガイア様の結界でこの辺りには近づけないはず!」
ガナフ国王は一度、国外に出た時にこの黒龍に出会した事があるようだが、この辺りでは千年前にガイアが結界を張ったおかげである程度脅威となる生命力を持ったモンスターは近づく事ができないようだ。
しかし、突如現れた黒龍にガナフ国王は驚きを隠せず固まってしまっている。
「おいおっさん!どうすりゃ良い!?
このまま気合いで転移するか!?」
「いや、駄目だ!ここにこいつが入ることができた理由が分からなければ帰る訳には……国に張ってある結界も解けているのかもしれないのだ!そうなれば――ん?」
ガナフ国王は人が密集する町でなくこちらに黒龍が来た理由が分かったようで、なぜか頭を抱えだした。
すると小声で何かをボソボソと言い始めた。
「……クロウすまぬ……」
黒龍が翼で巻き起こす風のせいでガナフ国王が何を言っているか分からないクロウは聞き返す。
「はぁ!?聞こえねぇ!何だよ!?」
「すまん!ここの結界を張り直すのを忘れていた!!」
「……はぁぁぁあ!?あんたアホなの!?」
小屋から出てきたガナフ国王はブレスレットをクロウに見せた後、結界を張り直すのを忘れたせいで黒龍が入って来れたようだ。
何でそんなん忘れてんだよこのおっさん!
っつーかここらの結界をこの扉一つの結界解除しただけで全部解かれんの?
なんてガサツな結界だとクロウはガイアを恨んだ。
しかし、黒龍は目の前まで来ているが攻撃を仕掛けてくる気配はない。
飛んだまま降りてこようともせずにジッとこちらを見ている。
とりあえずガナフ国王も腰を抜かして動けないようで、この場を何とかしなければならないと思ったクロウは、魔法を使おうと攻撃魔法のイメージを思い浮かべ始めていた。
と、とにかくいきなり火なんて吹かれたらたまんねぇ!
できるか分かんねぇけど……特大かめはめ波くらいのをぶっ放つ!!
クロウは頭の中で必死に漫画やアニメで見たものを思い浮かべた。
魔法陣が展開すると両腕に魔力が集まりだし、肉眼で確認できる程の強力な赤い魔力オーラが出現し始めた。
それが腕から手のひらに移動するとプラズマが発生し、クロウは漫画と同じ構えに入った。
思い通りに魔力が感じられたクロウは、更に魔力を練り始めた。
いけるぜ……夢にまで見た事が……できる!!
「かーめーはーめー……」
気合いを入れ、黒龍に向かい一気に魔力波を放とうとした。
しかし、
「波――」
[ドカッ!]
クロウは後ろから後頭部を何者かに蹴られ、顔面から思い切り倒れ込んでしまい魔法陣と共に両手に集めた魔力も消えてしまった。
「何をしようとしているのだこの阿呆が!」
クロウに蹴りを入れて攻撃を止めたのはガイアだった。
ガイアは黒龍に近づくと、なぜか魔法陣を展開させ魔力を放出し始めた。
すると、黒龍はガイアの目の前に降りてくると頭を下ろし、ガイアは撫で始めた。
「貴様等、驚いているだけで状況判断も出来ないのか?」
痛ってぇ……何だ?こいつのペットなのか?




