三十 【国王にキス?】
「細かい話しは後で良いではないか!
クロウ!せっかく会えたのだから一杯付き合いなさい!」
ガナフ国王はクロウと親しい仲だったのか不明だが、何も覚えていないクロウからするとただの気さくなおっさんという印象が付いた。
ガイアとレイチェルは、先に転移魔法でアジトへ行く許可を貰いに来ていたようだが、ガナフ国王にクロウが魔法の使い方は思い出したと話すと俄然テンションが上がったようで、クロウが来てから話しを進めようと言っていたようだ。
「っつーか魔法には頭使うからせっかくだけど酒はやめとくわ。
それよりレイチェル借りても良いのか?
ウチの連中に会わせてやりてぇんだよ」
「ガイア様もクロウもついているのだ。
それは一向に構わないのだが……クロウ、折り入って頼みがある。
魔法の力を私にも見せてはくれまいか?」
なぜかガナフ国王はクロウの魔法が見たいと言い出すが、クロウは意味が分からなかった。
異業の力は人外種なら珍しいものでもないはずだ。
しかし、ガラフ国王は人外種の特殊能力でなく"魔法"が見たいようだ。
「こっちの宇宙にはない魔力。
ガイア様しか使えないとされる魔法を人であるクロウが使える……以前から興味深かったのだ」
こっち?また不思議な言い回しをするおっさんだなぁ。
「過去の俺は知らねぇけど、今はまだ転移魔法しか使えてねぇよ?」
するとガナフ国王は少し考えた末にレイチェルを見ると、転移魔法で頼みたい事があると言うと席を立ち上がり「皆ついてきてくれ」と部屋を出ることに。
兵士同行でガナフ国王の後について行くと、そこは屋上だった。
扉に兵士を待機させ、四人で外へ出るとガナフ国王は海の方を指し始めた。
「あそこに私をクロウと共に転移してくれ」
ガナフ国王が指をさした先には、一度クロウが別の屋上から見た建物だった。
この位なら見える距離だし余裕だろうけど……え?転移?
一瞬、転移する前の"キス"が頭を過ぎり、気分が悪くなるクロウ。
あぁ〜、でも指からでも血を出して舐めさせれば良いだけか……おっさんに……俺の指を!?舐められる!?嫌ァ!!
クロウの脳裏にガナフ国王に指を舐められる光景が。
「いや、待て!別にこの距離なら転移魔法使わなくたって行けるだろ!?」
クロウの言う通り屋上からも見える距離。
車や馬がこの世界にあるのか分からないが、歩いてでも行ける距離だ。
クロウが断ると、ガナフ国王は転移魔法で行かなければ困るとのこと。
その場所に行くには兵士も引き連れて行かなければならない。
道中の猛獣に襲われないためと言う事もあるが、国王が国外に出る際は兵士の同行が義務ずけられている。
なので外で何をやるにも他人に見られてしまうそうだ。
「……あそこに何かあるのか?何の建物なんだよ?」
「クロウは一度会っている。あそこには私の妻、"サラ"の墓がある」
クロウが何かの建物と思っていたのはまさかの墓だった。
そこには毎年王妃の命日に王族と城の兵士を連れて訪れているのだが、ガナフ国王は誰にも悟られずに城へ持って帰りたい物があるようだ。
「お義父様?あそこには遺品しかないのでは?」
「あぁ確かに。
しかしサラが亡くなった時はレイチェルはまだここに居なかったであろう?
それに、このタスリーフにはお前の知らない物が沢山あるのだよ」
何か事情があるようだが、それよりもクロウはガナフ国王に自分の血をどう飲ませるかを考えていた。
「クロウ、頼み願う」
「……」
クロウは考えた末に、こうすればと良いのかとガナフ国王に指示を出した。
「しゃがんで顔を上げたまま口を開けてくれ」
クロウは転移するための説明をし、口の中に直接血を垂らすことに決めた。
必要ならばとガナフ国王はすんなり応じてしゃがみ構えた。
クロウは指をかじり血をにじみ出させ、上から口の中に血を落とした。
すぐにガナフ国王の腕を掴み墓の方に目をやると、魔法陣が展開し転移した。
空間が開いた先は建物の丁度目の前。
目の届く場所は正確に空間が開いてくれるな……やっぱりか。
転移は成功したが、やはりガナフ国王も顔を赤らめ気絶していた。
「おーい!おっさん!……しばらく寝かしとくか。
しかし何だここ?でっけー墓石に小屋?倉庫?」
城から見た通りの建物が建っていた。
ガナフ国王が目覚めるのを待つには退屈な場所で、海はあるが断崖絶壁の崖上で眺める事しかできない。
クロウは暇を持て余し、勝手に小屋の中に入ろうとして扉を開けようとした。
しかし、
[バチンッ!]
「痛っ!」
扉に触れた瞬間強烈な電撃が走り、手のひらが焦げてしまった。
痛った〜……何だこりゃ!電気が流れるようにセキュリティでもつけてんのか!?
勝手に入ろうとした罰を食らったと思い、クロウは諦めて周囲を見渡す。
ちらほらと見たこともない猛獣が走り回っていた。
とても凶暴に見えるが、なぜかこちらには見向きもせず向かって来ない。
何でこっちには来ねぇんだ?
あんなんからすれば俺等なんか良い餌だと思うのに。
不思議に思いつつ猛獣が走り回っているのを眺めていると、
「うっ……あぁ〜、何だ?私は気絶していたのか?」
ガナフ国王は目覚め、すぐに状況を確認するため立ち上がった。
「起きたか。どうだ?生命力が上がった感じはあったりするか?」
「言われてみれば……確かに!力がみなぎる感じがある!
凄い……これなら若い頃の自分にも勝るわ!ハッハッハー!!」
ガナフ国王は生命力の向上に子供のようにはしゃいでいた。
ミルルとリルルに続いてこのおっさんの力量も上がったのか……やっぱ俺の"血"が原因だろうな。
クロウは血の付いた自分の指見ていると、ガナフ国王は小屋の扉に向かって身につけているネックレスを外してかざした。
すると扉に魔法陣のような模様が浮かび上がり、それが消えると自動で扉が開いた。
聞けばこの周辺と建物自体に魔法結界が張られていた。
魔法で猛獣は近寄れず、王以外は開けられないようだ。
魔法ってことはガイアが結界を張ったってことか。
「そういう仕掛けか……んで?ここは何なんだよ?」
「ここは先代が作った遺品倉庫だ」




