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二十九 【国王との再会】

 ――クロウとリルルは恵華の部屋に無事転移することができたが、ミルルと同様にリルルも顔を発熱をしたように赤くし気絶してしまっていた。


「にゅっ!?お姉ちゃん!」


 その姿に驚いたミルルはリルルを抱え「お姉ちゃん!」と呼び続ける。


 クロウが転移して連れてきた時ミルルも同じ状況だった事を伝えると、気絶したことを覚えていないと言う。


 恵華が言うにはミルルを連れて来てすぐにクロウが転移して行った後、ものの数分で何もなかったかのように目覚めたらしい。


「なら大丈夫なはずだ。

 とりあえずベッドに移すわ……あ、そういえば」


 クロウはリルルを抱えてベッドに移すと、こちらの様子を見に行ったガイアの様子がおかしかった事で恵華にその時の状況を伺った。


「ミルルちゃんから後から聞いて……あれがあいつだったなんて!

 もぉー!電話くれた時に教えといてくださいよぉ〜!」


 ガイアがミルルの様子を見に恵華の部屋に転移してくると、恵華は今のガイアが子供の身体に入っていることを知らずに「何ですかこの子!?ミルルちゃんの友達ですか!?可愛い!!」と車椅子から飛んでガイアに抱きつくと頭を撫でまくっていたようだ。


 ガイアは何とか恵華から離れてミルルの無事を確認していたが、すぐにまた恵華にまた抱きつかれ離れようとしなかった。


 それでもなんとか振り解いて逃げる様に転移したようだ。


「ハハハッ!そうか!なるほどねぇ〜!」


 ガイアが戻った時のあの顔は困った表情だったのか……ウケる。


 クロウはガイアが恵華に抱きつかれて焦り困っていた場面を想像して、いつまでも笑いが止まらなかった。


 すると、


「う……う〜ん、うん?あれ?

 ここどこ……ミルル!」


 恵華が言った通り、ミルルと同じくリルルもすぐに目を覚ました。


 ミルルの姿を見て飛び起き、お互いに顔や体を触り合いながら無事を確認し合い安心すると、リルルは自分の体の異変に気付いた。


「ガイア様が言っていたことは本当だわ。

 力が……みなぎっている感じがする」


 ガイアが言っていたミルルの生命力が向上していたというのは本当のようで、リルルは今すぐにでも体を動かしてみたいと(うず)いていた。


「そっか(笑)まぁ気持ちは分かるけど今は抑えろ。

 力が上がった原因が分からんし、次はレイチェルを連れて来なきゃ」


 クロウは今すぐに戻ってレイチェルを連れて来ると言って魔法陣を展開させた。


「レイチェル姫は姫様なんだから"キス"するなら兵士も誰も見ていない所でね?」


 リルルがクロウに忠告し、確かに良く考えれば簡単にして良い事でもない。

 相手が姫となれば兵士にも警戒しなくてはならない。


 ……っつーかキスしなきゃ良いことだろ?

 あいつには直接出た血を舐めさせよう。


「へ?リルルちゃん!何の話し!?クロ様!キスって何ですか!?」


 恵華が声を張り上げて騒ぎだした。



 あぁー面倒くさ。


 クロウは聞こえていない素振りをして転移し消え去った。


 戻ったクロウはまたしても目標地点がズレて城の屋上に。


 ん〜どうしてなんだろ?二回目の恵華の部屋には普通に行けたのに。


 考えられるのは城の外というざっくりとした座標とガイアの魔力やレイチェルの生命力をうまく掴めなかった事にあるのだろうとクロウは予測した。


 考えながら周りを見渡すと、少し離れた所に海が見えた。


 すぐ近くは海か……ん?なんだあれ?


 離れているため良く見えないが、海の近くに何か建っている。

 所々では何の動物なのか分からないが、大きな生物が走りまわっていた。


 ……安易に転移するのはやめよう。変な所に落ちたらたまらん。


 クロウは人が生きられない場所や凶暴な生物の前に空間が開いたらと考えゾッとした。


 屋上からガイア達を確認しようと見下ろすと、先程居た場所に兵士の姿しか見受けられない。

 あれ?どこ行ったんだろ?


 兵士の目の前に転移し二人がどこに行ったか尋ねると、クロウの帰りが遅かったので先に国王の居間へ向かったようだ。


 国王の所に?何で?


「そんじゃ悪ぃけど、国王の所まで案内してくれねぇかな?」


「仰せつかっております。こちらに」


 兵士はクロウが帰って来たら案内するようレイチェルから指示を受けていたようで、クロウは城の本館内を通された。


 広い城内を歩き長い階段を上り、国王の居間はとても遠かった。


 ……だる。次国王の所に行くことあったら転移魔法使お。


 長い道のりを歩き国王の居間に近づいているのか、兵士の配置が多くなっていった。


 さすがに警備が厳重で国王の居る居間に着くと、扉の前にも兵士が立っている。

 レイチェルから兵士達への伝達が行き届いているため、すんなり扉を開けられ通された。


 するとそこにはガイアとレイチェルに国王と思われる男が丸テーブルを囲っていた。

 ガイアが子供の姿のせいか、家族の団欒に見える。


「おぉクロウ!久しいな!っと失礼。

 まぁとりあえずこちらに来て座ってくれ」


「……」


 席に着くと、さっそく記憶がないクロウに自己紹介を始めてくれた。


 国王の名前はガナフ。

 見た目は人間だが、祖先は獣人族で特殊能力も継承していると言う。


 ガナフ国王は自分で十四代目となるようだ。


 若いな。四十歳前後このおっさんがレイチェルを……っつーかたったの十四代!?


 クロウが不思議そうな顔をしていると、ガナフ国王は笑いだした。


「ハーハッハッハ!初対面の時と一緒だな!そうだ、

 この私が十四代目というのはこの国が"タスリーフ"内に建国してまだ千年足らずだからだ」


 タスリーフ?


 タスリーフとはこの世界、この地球の裏側の名称だそうだ。


 そしてまたこの国もタスリーフ内で初めて建国したという事から"タスリーフ"という国名がついた。


 人外種の中でしっかりとした知恵を持った者だけが集まった時に決まった名称。

 千年前についた世界名と国名だとガナフ国王は言う。


 知恵?考える力も無い人外種もいるのか……ってたった千年!?


 クロウはなぜか千年という国史の浅い事に疑問を持ち、ガイアを見る。


「おいガイア、お前がこの世界に来て何年だ?」


「なぜその質問が今出るのだ?……五千年程になるな」


 ……何で人外種にこだわりまくってる奴が五千年も居るのに、何で建国してまだ千年しか経ってねぇんだよ?

 っつーかこいつ、何年生きてんだ?

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