二十八 【血混じりキッス】
現世界の恵華の部屋。
「フーンフフフーン♪綺麗に描けたにゃ〜……!?」
突如、恵華の部屋に魔法陣が出現し、空間が開くとミルルを抱き抱えたクロウが現れた。
「ぅわっ!クロ様!?……とミルルちゃん!?」
目の前には部屋のデスクで絵を描いていた恵華が驚いている。
なぜか屋敷内の恵華の自室に空間が開いたようだ。
うーん……飛ぶには飛べたけど目標地点はズレるなぁ。
クロウはアジトの玄関前を頭に浮かべていたようだが、頭の片隅で恵華の部屋を考えてしまったためにズレが生じたようだ。
すると、ミルルが脱力したように自分で立とうとせず、恵華と再会したのにも関わらず何も言わず黙ったままだった。
「ミルル?どうした……!?」
ミルルの顔を見ると、熱でもあるかのように顔を赤くし気絶してしまっている。
こ……これやべぇのかな?
「恵華!こいつこのベッドで寝かせるぞ!
あとなんか頭冷やせる物持ってこい!ちょっと俺戻るわ!頼むぞ!!」
「は、はい!ってクロ様何処へ!?」
恵華の問いに答えずにクロウはまたすぐに転移魔法で戻って行った。
空間が開くと戻るには戻れたが、また少しのズレが生じて城の屋上に空間が開いた。
ん?……ここじゃねぇよアホ!お?まだあいつ等あそこにいる!
ガイア達はクロウを待っていたようで、先程と同じ場所にいた。
すぐにまた転移すると、次はガイアの目の前で空間が開き体当たり。
「――っと、ガイア!アジトへ飛べたけどミルルの様子がおかしいんだ!診てくれ!」
「くっ……貴様!!転移する前に何をしたのだ!!」
「あぁ!?少し俺の"血"を飲ませただけだ!」
「!?」
ガイアはそれを聞いて考えこむように黙ると、何かを納得したのか、
「なるほど、貴様考えたな。ではミルルの様子を診てくる。
俺が戻るまで何もせずにここで待っていろ」
そう言ってガイアは転移魔法でその場を後にした。
ガイアのあの様子を見るとミルルは大丈夫なのか?
「クロウ!ミルルは!?ミルルはどうなったの!?」
リルルはミルルを心配して酷く興奮状態となっていた。
クロウは転移後の状況を説明すると、
「……いくらクロウでもミルルに何かあったら許さないから!」
心配かけて悪いことしたな……。
クロウは何が起こるか不明なのにも関わらず、勢いでミルルと転移した事を深く反省しリルルに謝罪した。
「ごめん、悪かった。もし何か後遺症でも残るようなら俺が全身全霊で必ず元に戻すから……信じてくれ」
クロウの謝罪を受けて、その後リルルは口を開かなかった。
「……」
沈黙が続き、どうして良いか分からないレイチェルは何か話題を持ち出そうと悩んでいると、クロウとリルルの間に空間が開きガイアが帰ってきた。
「ガイア様!ミルルはどうでしたか!?」
思ったよりも早く帰ってきたガイアはなぜか戸惑った様子。
それを見てクロウは何かあったのか聞くと、
「な……何もない!ミルルは特に異常は見受けられなかった。
っと言うより酷く健康だ」
ガイアが転移した時には、ミルルは恵華との再会を喜び抱き合っていたところだった。
体調に問題はないか確かめたが、クロウが焦り帰ってきた理由が分からない程健康だったようだ。
それよりもガイアが不可解に思ったのがミルルの生命力。
太古の龍人族を思わせる程飛躍的に向上しており驚いたという。
「ふぅぅ~……良かった~」
リルルは胸を撫で下ろすと、レイチェルもリルルを抱き寄せ「無事でよかった」と喜び安心した。
クロウも安心し、改めてリルルに謝罪した。
「……今回は何もなくて良かったけど、もう勘弁してよね?
魔法実験したかったらアタシにして!」
「いや……もうこんなんはなしだ。安全の確証がない限りやらねぇよ」
クロウは反省したようで、転移する前の活気はなくなってしまっていた。
その様子を見てリルルはクロウに近寄り、袖を掴みながらモジモジとしている。
「もうミルルが無事ならもういいから!
早くミルルの所にあたしも転移させて?
き……キスするんでしょ?」
リルルは顔を赤面しながらミルルにした事をクロウに頼むが、あの行動は手や腕を噛み切って舐めさせる行為の説明が面倒でやった事だと言う。
するとクロウは指を噛み切り「ほら、舐めろ」と指をリルルの口元に持っていった。
「……嫌なんだけど。は?気持ち悪いんだけど。
は?なんかムカつくんだけど」
ほらな?指出されて舐めろなんて俺も嫌だし軽く卑猥だ。
すると、ガイアにすぐ戻ると言ってクロウは指から出ている血を自分の口に入れて舐め取り、リルルに顔を近づけた。
「にゅっ!」
[バチンッ!]
驚いた拍子にミルルの様に「にゅ」と口にしたリルルは、思わずクロウをビンタしてしまった。
っ痛〜!このガキ〜……歳いくつか知らねぇけど。
「きゅ、急に来ないでよ!心の準備ってものがあるんだから」
「はぁ?準備?何をこんくらいのことで……うるせぇんだよ」
クロウはビンタを貰った頬を手で押さえつつ、無理矢理片腕で抱き寄せて再度顔を近づけると、今度は恥ずかしがりながらもリルルは受け入れ目を瞑った。
そしてキスをするとクロウの口から流れくる唾液混じりの血を飲み込み、ミルルと時と同じように魔法陣が現れ、その場から消え転移した。
すると、レイチェルが次は自分も同じ事をするのかと考え赤面していると、その様子を見ていた兵士が忠告しにきた。
「姫様、このまま行かれては困ります」
驚きの連続でレイチェルは自分の立場を思い出した。
「あの……ガイア様、転移も方法も私は構わないのですが、一言"お義父様"にお伝えしなければ」
「分かっている。あの阿呆が戻ったら共に行く」
ガイアとレイチェルはクロウが戻り次第国王の元に行くことに。




