二十四 【転移先は風呂場】
数時間の睡眠を取り朝を迎えた。
村の人間に妖精種の少年とガイアの事を伝えた後、ガイアはクロウに転移魔法の"感覚"の説明に入った。
「感覚?そんな簡単なもんなのか?」
「魔法は想像力だと話したであろうが。
だが、貴様は記憶がないからな……今回は俺の背中に触れ、龍人族の"生命力核の形状"を感じ取れ。おのずと座標が浮かび上がる」
なんじゃそりゃ!?簡単に言うなよ……。
クロウはガイアの背中に手の平で触れようとしたが背丈に差があったので、しゃがむのが面倒でニヤけながら頭の上に手を添えた。
[ポンッ]
「貴様、なめているのか?」
「いいから早く龍人族探せよガイアちゃん(笑)」
此奴め……死ぬ寸前まで鍛えてやる。
エドガーもその光景を見てガイアにバレないように笑っていた。
しばらくすると、クロウが「なんとなく頭に浮かんできた」と本当にガイアの感じている龍人族の生命力が感じ取れた。
次にガイアは足元に赤く光る魔法陣を出し始めた。
陣の模様や形を覚え、尚且つ転移したい場所を頭に浮かべながら魔法の発動を促せと言う。
ほいほい簡単に言いやがって。
クロウは目を瞑り、ガイアと同じような魔法陣を思い浮かべた。
思い浮かべた。
思い浮かべたが、足元には何も出てこない。
あ……あれ~?なんでぇ?
「はぁ……」
ガイアはため息を吐いた。
「貴様は本当に戦闘に関わる事に関してゴミカスだな」
「うるせぇんだよ!普通こんなもんすぐにできるかい!!」
イメージイメージイメージ……同じようなものを……。
懸命に龍人族を考えながら魔法陣を思い浮かべると、突然クロウの足元に赤い魔法陣が現れた。
「おぉー!!すげ――」
しかし、魔法陣を出せたのは良かったが感動する暇もなくクロウはその場から消えて空間転移してしまった。
驚いたエドガーはクロウが消えた場所に走り寄り辺りを見回す。
「ク……クロウ!おいガイア!今の大丈夫なのか!?」
すぐにガイアはクロウの魔力を探した。
「ほう~、転移している。
しっかり亜空間を捉えたか。
小僧、貴様はあのジジィが何をやっているか探れ。
あの改造された人間が何処でどう造られたのか……分かったな?」
ガイアはエドガーにそう命じると、クロウを追うように転移し消え去って行った。
本当に大丈夫なのか?前に魔法の使い過ぎで潰れた事も思い出してくれれば良いが……。
エドガーは過去の出来事を思い出し心配しつつアジトへ帰った。
――クロウは空間転移を成功させ、龍人族のリルルとミルルの元へ飛んだ。
しかし、座標を定める事ができないまま飛んだために空間が開いた先はまさかの空中。
一人の女性の目の前で空間が開き、クロウは放り出されるように外に出た。
[ザッパーーン!]
「え!?」
なぜか湯の中へ落ち、クロウの顔には何らかの柔らかな感触が。
あー……何だか懐かしい感触……ん!?
これは間違いない!生乳!パイオツだ!
女性の胸の感覚を湯の中で堪能するクロウ。
そういやニッポンを出る前からご無沙汰だったからなぁ〜。旅行先で白人のおねぇちゃんとよろしくやるはずだったのにこんな事になって……生乳?裸!?ここ風呂場か!?
とっさにクロウは湯の中から顔を上げると、目の前には裸の女の子が。
「にゅっ!?……クロウ!?何でいきなり!?ど、どうしたの!?」
この子はクロウのことを知っているようだが、とりあえず裸の女の子の上に跨っているのですぐにどこうと立ち上がる。
すると、
「はぁっ!?どっから入ってきた!この変態兵士が!!」
[ドンッ……ガシャーーン!]
後ろの方から声が聞こえクロウが振り向こうとした瞬間、何らかの力で吹き飛ばされてしまい、風呂場の窓を突き破り外へ投げ出されてしまった。
「お姉ちゃん!今のクロウだよ!」
「へ?うそ?何でクロウがここに居るの?」
二人は顔を見合わせて頭を傾げた。
「痛っっっったーー!!って!
うぅわっ!落ちてるぅ!ど……どうするぅー!?」
十メートル程の高さから逆さまに落ちているクロウは必死に状況打破を考えるが、何も出来ずにそのまま地面に落下。
そのままクロウは気絶してしまい、それに気付いた何者かが近付き人を呼び始めた。
「え!?何で上からクロウ!?
ちょっ……誰か!誰か来て!!」
クロウは気絶し、建物の中へ運び込まれた。
――数時間後。
クロウは目を覚ました。
起き上がり周りを確認すると綺麗な部屋のベッドで寝ていたようだ。
「何処だここ?っつーか俺よく生きてたな……っつーか首痛ぇ」
ベッドから立ち上がり窓の外を見ると、そこには信じられない光景が広がっていた。
「……なんじゃこりゃ」
澄んだ空には地球ではありえない程とても近くに星々が見え、恐竜にも思える鳥が飛び交っている。
クロウの居る建物は高い塀に囲まれ、窓を開けて顔を出し上下左右見渡すと中世の城にも見えた。
山を削った場所に建てられているようで、とても高い場所にあり、見下ろすと大きな町が見える。
「これは夢なのか?」
クロウは少し混乱し、落ち着くためにポケットから崩れた煙草を取り出した。
とりあえず落ち着かねぇと……あれ?俺服濡れてなかったっけ?
なぜか乾いた服に不思議に思いながらも開いた窓の前でふやけた煙草を咥えライターを探していると、突然目の前に人が現れ咥えている煙草を取られた。
「前にも言ったでしょ?ここ禁煙。吸うなら表でお願いね?」
見ると背中から翼を広げ、宙に浮く龍人族の女の子が窓の外から現れた。
この子……夢で見た子だ。




