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二十二 【言えない事実】

 ガイアは恵華の親しい人間を殺した。


 理由はその女達が人外種を拉致監禁していた事。


 事件当時、恵華はガイアが女達を殺した理由を知らなかったが、その後にエドガーやオリヴィエに事情は聞いていた。


 しかし、それでも恵華は納得できず、ガイアに直接話しを聞きたかったが"貴様の為にやった"としか言わなかった。

 その言葉の意味が分からないままで、恵華はガイアを敵視している。


「話しを聞いただけじゃ俺にも分からねぇ。

 ガイア、これからは目に見えて言葉を交わせるようになったんだ。

 恵華との(わだかま)りをなくしてあいつ等とも仲良くして欲しい。

 説明してくれ」


「ほう……貴様それで本当に記憶がないのか?

 まぁ良い、だが少し酷な話しになるぞ?

 あの小娘はそもそも――」


 クロウの気持ちが伝わったのか、ガイアは全てを話してくれた。


 しかし、内容は全くの予想外。


 ガイアが車を投げ飛ばした後、女の頭に触れた時に恵華の過去に関わる重要な出来事やブランドンが引き取った本当の理由が明らかとなった。


 女達はブランドンファミリー以外に人身取引をしていたが、他の組織から人外種の注文も請け負っていた。


 目標を指示され、主に能力の有無を問わず女性人外種の拉致を繰り返していた。

 同じ女同士なら警戒心は緩むという使われ方をしていたようだ。


 それだけでも十分ガイアが手を下す理由となるが、ガイアが恵華に言った"貴様の為"と言った理由にはならない。


 これは恵華自身に直接関係があり、それを話すと必ずショックで困惑してしまう。


 ……これはあいつにどう話せば良いんだよ?


 ガイアが恵華に何も語らなかった意味が事の全貌を聞いて分かった。


 過去の記憶が欠落しているクロウは恵華についてほとんど知らない。


 分かっている事は人間離れした運動神経持った元気な女の子。


 このまま話しをしてもフォローができそうにないクロウは、恵華に内容をできるだけ端折り伝えることにした。


「もう日が変わる時間だけど電話してくるわ。

 ガイア、帰ったらさっき話した通り合わせてくれよ?」


「分かっている。

 でなければ俺も疾うに話しているだろ」


 クロウは小屋を出て行き、外を散歩しながら恵華に電話をかけた。


「――もしもし?起きてたか」


「はい……なんだか眠れなくて」


 えーっと、悟られないようにすんなり話さないと……。


 エドガーを含め、三人で話しをまとめてた。

 恵華の疑問となっているガイアの言ったことに関しては、女達が恵華に謝っていた言動に関してガイアが制裁を下したとした。


 "本当はあなたを取引に使う予定じゃなかったの"。


 実際に恵華への謝罪は全て虚言だった。


 高値で取引される人身売買に味を占めた女達は、恵華がホームステイしに来た時点で取引に使おうと決めていた。


 散々な事をやっていた挙句に普通に虚言を吐く人間に対し、全て見透かしていたガイアは耐えられずに――と、この程度の裏切りのショックで済むように恵華に話した。


 すると恵華は、


「そうですか……あの……いえ、ありがとうございます。

 そんな理由が本当にあったなら納得するしかないですね」


 クロウはうまく話しをしたつもりだが、恵華は多少怪しみながらも納得した。


 恵華には悪いけど、いつか話さなきゃいけねぇ時がくるまでは……。


「恵華、俺にとってガイアは今必要不可欠みたいなんだ。

 自分の事も分からねぇ上に、記憶も全く戻らねぇ……だから頼む。

 仲良くしろとは言わねぇけど受け入れてくれ。

 それと見た目もな!」


「わか……え?見た目ですか!?どういうことですか(笑)」


 多少の雑談を含み、エドガーは先にアジトへ戻り自分とガイアは寄る所があるので遅れて帰ることを伝え通話を終えた。


 クロウも体を休めるために来た道を戻ると、小屋の前でガイアが赤く光る魔法陣の中心で立っていた。


「お、おぉ〜……魔法陣だ。

 言霊とは色々違うけど、傍から見るとこんなんなのか」


 目を瞑ったガイアを眺めていると、魔法陣以外にも不思議な光景が見えてきた。


 何だ?ガイアの後ろに何か浮いてきたぞ?


 ぼんやりと見えるそれは幻影なのか、背の高い男の姿が見えた。


「おい!ガイア!!」


 敵だと思い、思わずクロウは声をかけてしまった。


 するとガイアが目を開くと、幻影と魔法陣は段々と薄暗くなり消えた。


「やかましいぞ、何事だ?」


「あれ?今お前の後ろに男が見えたような……」


「男……分からぬが魔力を練ることで俺の本体が見受けられたか」


 ガイアは魔力を温存するため、少しの魔力消費で魔法が使えるように練り込み、濃度を調整していたようだ。


 本体?……練る?……分からん。


「今更だけど魔力って何なんだよ?っつーか魔法でどこまでできるんだ?」


 クロウはアンナやエドガーも普通に口にしていた魔力。


 過去に使っていたかもしれないが、今のクロウからすればさっぱりのこと。


 するとガイアは過去にエドガー達に魔力について軽く説明したことがあると言う。


 クロウは自身もその事を後からクリスに聞いて魔力の認識はしていたようだ。


「本っ当腹立つなぁ!何で記憶がなくなったんだよ!誰の仕業なんじゃ!!」


 クロウが荒れているとガイアはため息を吐きながらクロウに手のひらを向けた。


「なっ……!」


 突然クロウの体の周りに赤く光る輪が現れ、体と腕を拘束されてしまった。

 驚いたクロウは腕の力で拘束を壊そうとするがビクともしない。


「阿呆、そんな事で解ける程魔法という物は貴様のように惰弱ではない。

 そうだな……これからは俺もこの体を持てたことで事情が変わったからな。

 良かろう、指導も含め教えてやる。人間以外の持つ"能力"と神にしか持ち得ない"魔法"について」


 クロウは拘束され苛立ちながらも少し胸が高鳴っていた。


 特殊能力の不明要素、自分も知らずに持っていた魔力についてやっと解明される。


「じゃあ始めに魔法について教えてくれよ?他でこれやられたらヤバいじゃん」


「だから阿呆と言っているんだ」


「あぁ!?どういう意味だ」


「魔法はそもそもこの世界で俺にしか使えない力だ」

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