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十九 【村で眠る妖精種】

「あの事件はざっとこんな感じだな

 ……クロウ?」


「……グゥー……グゥー……」


 えぇ……寝ていらっしゃる?


 何処まで聞いていたのか、クロウは寝てしまっていた。

 今無理に起こす理由もないので、給油地点まで寝かすことにした。



 ――二時間後。


 給油地点に到着し、クロウを起こして一度ヘリを降りて飲み物を買い一服。

 しばらくして給油と点検が終わり再度離陸。


「あの……クロウ?恵華の話しで質問はないのか?」


「ん?あぁ、そうだ!ガイアがガレージの方に消えてからどうなったん?」


 ……こいつ。


 クロウは重要なところから完全に寝ていたようで、エドガーは先程の話しを要約し改めてクロウに話した。


「――なるほどね。

 んで?何でガイアがそいつ等殺したの?」


 当然の疑問だ。

 これに関してはエドガーが当時に思っていた通りの人外種絡みだった。


 ガイアはあの時、人外種の反応を感知したことで表に出てきた。


 途中で姿を消した時、ガレージの地下に隔離されていた人外種を見つけ、捕らわれるまでの経緯を聞き出した後に救出し、車をぶん投げた。


 ガイアは女達が人外種の拉致、誘拐に関与していたことで自ら手を下した。


「だったら仕方ねぇだろ?

 恵華には悪ぃけど、人外に手を出さなければって話しだろ?」


「たしかにそうなんだけどな。

 今日も言ってたんだが、ある時に恵華はガイアに"貴様のためにやった事"って言われたんだよ」



 ――それはあの事件から間もなくの事。


 クロウへ人外絡みの任務を命じられ、目的地に向かうついでに助け出した人外の女性を故郷に送り届けようとしていた。


 この女性はオリヴィエ。


 容姿はモデルのような綺麗な見た目だが、人外種。

 悪魔族の一種だった。


 ブランドンの元へ連れて行ったが、能力持ちではなかったので組織で囲う必要もないと故郷に送り返すことになった。


 その時にガイアは現れた。


 ガイアは人間に紛れて暮らしているオリヴィエに今まで過ごしてきた環境、家族や周り居た人外のことを聞き話し始めた。


 すると、話しの途中で突然恵華が割り込み、ガイアに問い詰めだした。


「何で殺した……人外が関わってたから話しも聞かずに殺したの?おばさん達は人外を殺した訳じゃないでしょ!?ねぇ!なんで!!」


 ガイアは面倒だなという顔をして舌打ちをしながら仕方なく答えた。


「貴様等がうだうだしているからだ。

 それに貴様の為でもある。俺に感謝しろ」


 貴様の為?感謝?


 恵華はその意味も聞かずに激高。

「殺してやる」と叫びながらガイアに飛び掛かり暴れ始めた。


 ガイアは恵華の攻撃を難なくかわし「邪魔だ小娘」と指先で額に触れた。


 能力を使ったのか、恵華は意識を失い倒れた――。



「これ以降もガイアが現れる度に恵華は突っ掛っていたが、クロウファミリーが結成されてからは少し落ち着いた、かな?」


「ふーん……っつーかよ、他にガイアに何を聞けばいいんだよ?」


 恵華が聞きたいのは女達の過去にやってきた悪事について。


 ガイアは何を見て何を知ったのか、人としての"正道"を外れたと言っていた。


 恵華はあれから人外種のことを色々と知り、世界各国で人外は人間の良いように使われている者も多く、ただの観賞目的の拉致監禁事件も多い。


 女達はガイアに殺されても仕方ないが、いつもは現れては何も言わずに標的を殺していたのに対し、あの時に限っては相手と言葉を交わそうとしていた。


 気まぐれなのか、女達がよっぽどの事をしていたのか恵華は知りたかった。


「それで"貴様の為"って何の事かを聞けってか?」


「そうだろうな。恵華が何回聞いてもガイアは口を開かなかったからな。何があるのか分からないが、たぶんお前にしか聞きだせないだろ」


 ガイアに何を聞けばいいかは分かったが、内容が皆目見当がつかない。


 事によってはそのまま恵華伝えない方が良いのだろうかと悩ましいところだった。


「ま、この後どうなるか分からねぇし考えても仕方ねぇか。

 っつーかさ……もう夜だぞ!遠くね!?」


 それから一時間後目的地近くのヘリポートに着き、車に乗り換えてガイアの言っていた例の少年の居る村へ向かっていた。


 何もない田舎道をしばらく行くと、山に囲まれた集落が見えてきた。


 するとその集落の人間だろうか、村に入る途中で老人が行く手を阻み、止まれと合図する。


 何やらよそ者を警戒している様子だが、窓から見ると八十歳以上と思われるの老人。


「やはりお前さん等か……来ると分かっていたが本当に来るとは。

 ついてきな。昨日亡くなったばかりで家に(ひつぎ)がある」


 老人はエドガーの顔を確認すると、分かっていたように少年の元へ案内された。


 着くと一人で住んでいたのだろうか、木造の小さな小屋だった。

 入ると柩があり、中には十歳前後の少年が眠っていた。


 その老人は案内が終わると「これでお役御免だな」と言って去って行った。


 エドガーが言うには、老人はこの村の村長のようだ。


 あのじぃさん、こんな時間まで俺等を待ってたのか?なんだったら他の奴にでも頼めば良かったのに。


 クロウは小屋の中を見まわし、気になることがありエドガーに尋ねた。


「この子は何なんだ?家族は居ねぇのかよ?」


「居ない。この子は親無しの人外種だ。

 さっきの村長が世話していたが、強いて言えばこの村の大人全員が親代わりだな」


 この少年は人外種の中でも希少な"地"の妖精種だそうで、魂の抜けた体は大地の器となり、遺体をそのまま土葬すれば森を活かす大樹となる。


 平均寿命が三十年と短命で、特にこの少年は体が弱かったようだ。


 それをガイアがどうこうして良いものなのか?


 クロウは物凄く罰当たりな事をしているようで気が進まなかった。


 するとエドガーが、


「……この後どうすれば良いんだろうな?」


「確かに。えぇ~……おい!ガイア!アホのガイア!次どうすんだ!」


 クロウはどうして良いか分からずにガイアを呼び続ける。


 するとそれに応じるかのように黒い霧が現れクロウを囲い始めた。


「おぅ!?これか!出てきたぞ!

 屋敷では苦しくて見てらんなかったけど、夢に出てきた霧に似てるなぁ……ん?今回は苦しくねぇ?」


 黒い霧が体に入り込みだすとなぜかクロウは苦しくはなく、完全に体に入ると眼球の結膜は赤く染まり意識はガイアとなった。

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