十八 【悪魔への怨恨・Ⅲ】
悪魔は空を飛んでいたのか、下りてきた悪魔にエドガーは驚きながらも激怒した。
「お前がやったのか!なぜだ!?答えろ!!」
「……」
悪魔は車を持ち上げ、位置的にエドガーが邪魔だったのか、そのまま真上に飛び上がり空中から車を投げ飛ばしたようだ。
エドガーはこの人間離れした力を何度も見ているが、慣れるものではない。
しかし、なぜ悪魔はこの女達を殺したのかその時は不明だった。
すると悪魔は悲鳴を上げている女の髪を掴み持ち上げだした。
「痛っ……」
「貴様等はこんな事をどれだけ繰り返した?」
なぜ今まで人間に関心を持たなかった悪魔が口を出してくるのか。
今までこの悪魔が動く時は人外種絡みだけだった。
するとエドガーが何かに気付いたようにガレージの方に座っている女を見始めた。
あそこで座っている女は……人外種なのか?
「うぅ……う……あぅ……」
女はショックで悪魔の質問に答えられる状態じゃなかった。
悪魔は話しにならないとため息を吐き、女の髪から顔面を掴み変えた。
エドガーはそれを見てそのまま握り潰してしまうと察して止めに入る。
「や、やめろ!こいつには聞きたい事があるんだ!!」
「黙れ、俺に指図するな」
口で言って何とかなる相手ではない。
エドガーは悪魔に「放せ」と言いながら銃を構えた。
しかし、そんな物に全く動じることもなく女を放さない。
もう駄目だと思い、エドガーは顔面を掴んでいる悪魔の腕を撃とうとした瞬間、
[ガスンッ!]
恵華がエドガーの後ろから飛んでくると、悪魔の意識が表に出ているクロウの顔面に強烈な膝蹴りを入れた。
「おばさんを放せ!!」
恵華は女が殺されると思い、たまらず飛んできた。
しかしながら意識を奪われているだけで、体はクロウ。
今は悪魔が乗っ取っているので、特殊能力の限界突破も自在に操り、体中の筋肉も鋼以上に硬化していた。
悪魔はよろめきもせずに普通に立っているが、恵華は攻撃を続けた。
しかしながら、いくら打撃を当てても急所を狙い打ってもビクともしない。
すると恵華がまた膝蹴りをしようと悪魔の頭を目がけて放った瞬間に、悪魔は突然女の顔面から手を放した。
その手で恵華の攻撃防ぐと、そのまま足を掴んで車が突っ込んだ家の方向へ投げ飛ばした。
恵華は車に体を強打し地面に転がり落ちた。
「うっ……!」
落ちた地面に手を突くと、車に潰された女達の大量の血が手のひらに付着し驚く。
それを見て恵華は激高して悪魔へ再度立ち向かおうとするが、なぜか体が動かない。
エドガーも先程から体が動かなくなり、銃を構えたまま硬直している。
「元々は殺す予定だったのだろう?黙って見ていろ。
この人間共は貴様等と違い魂が腐っている。
平民を装いながら人間としての正道を外れた。
生かす価値はない」
人身売買の話しをしているのだろうか。
この悪魔は確実に女を殺す気だった。
エドガーと恵華はなんとか止めたいが、悪魔が何らか能力を使っているようで体が全く動かない。
「や、やめろー!!お前は関係ないだろ!!……私が殺るから!だから、おばさんを放せ!!」
恵華は悪魔に必死で訴えるが全く相手にしない。
何とか気合で立ち上がろうとするが、どんなに力んでもを立ち上がることができない。
すると、今まで抵抗もせずに混乱して泣くだけだった女が口を開きだした。
「ご……めんなさい……私が始めた事なの。
全部悪いの……ごめんなさい。
恵華ちゃんごめんね……ごめんなさい……」
「おば……おい!やめろ!やめて!
放せ!放してよ!!」
女はもうどうでも良くなったかのように謝罪を口にし、恵華にも謝り出す。
それに対して恵華も更に感情が高ぶり、泣きながら必死の思いで阻止しようとする。
しかし、女は悪魔の質問に答える訳でもなく「ごめんなさい」と連呼している中で、悪魔は女の顔面を再度掴み始めた。
エドガーもやめろと言いながら銃を撃とうとするが、指先まで硬直し撃てない。
もう駄目だと思ったその時、悪魔の体から黒い霧が出始めた。
霧が出てくると同時にエドガーと恵華の体は何かが解かれたように動けるようになった。
「チッ……時間切れだ。
おい小僧、あそこで座っている娘を保護してやれ」
突然エドガーにそれを命じるように言いだし、女を掴んでいる腕を下ろした。
クロウの意識を乗っ取るのに限界が来て能力も何も使えなくなったのだろうとエドガーと恵華は胸を撫で下ろした。
しかし、安心したのも束の間。
「こんな物に魔力は要らぬわ」
「!!」
[グチャッ!]
女の顔面は握り潰され、近くにいた恵華は大量に返り血を浴びた。
悪魔は黒い霧と共にクロウの体から出て行くとその場で倒れた。
女の無残な姿を目の当たりしたショックで恵華も気絶し倒れてしまった。
「……最悪だ」
車が突っ込み、女の悲鳴が響き渡ったお陰で野次馬がちらほら集まってきた。
クロウ頬を叩いて無理矢理起こし、エドガーは素早く車に死体を投げ入れた後に車に火をつけた。
車が爆破し燃え盛る中、悪魔が助けだした女性と恵華を連れて車に戻ると、穏便に片付くよう電話で組織に根回しを頼みその場を後にした――。




