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十六 【悪魔への怨恨】

 車はヘリポートに着き、エドガーは操縦士と給油地点や目的地の打ち合わせ。


 その間クロウは煙草を吸いながら待っていた。


 すると携帯電話が鳴り出し、画面を見ると"恵華"と表示されていた。

 しかし、クロウの元の世界では日本に漢字はなかったため読めなかった。


 なんでロベ……英語じゃねぇんだよ。

 誰か分かんねぇ〜。


 それでも、自分の携帯電話にかけてくる者は組織の人間くらいだろうととりあえず出ることに。


 [ピッ]


「……誰?」


「あ、クロ様!今いいですかぁ?ちょっとお願いしたい事がありまして。

 あいつ、ガイアの事で皆さんとお話ししてたんですけど……」


 恵華か。

 何でこいつだけ英語表記じゃねぇんだよ。


 恵華達はガイアのこれからやることについて話していたようで、いつも突然現れては毎回こちらが驚かされる行動をしてきたことから、今回もこちらが困惑する何かをしでかすはずだとクロウに連絡してきた。


 話し合った結果、少年の亡骸に着目した。


 ガイアは何らかの方法で少年の体に入り込み、自分の肉体とするのではないかと予想立てた。


「そんなファンタジーチックな事……今も十分ファンタジーか。

 分かった、そんで?お願いって何?」


「その……もしそうなってクロ様があいつとお話しできるようになったら聞き出して欲しい事があるんです」


 クロウも不思議に思っていた。


 それは誰にでも丁寧口調の恵華が唯一ガイアだけを"あいつ"と呼んでいること。

 ガイアに意識を奪われた時の恵華の態度。

 そしてブランドンの別邸で起きたフラッシュバック。


 その中で恵華が言っていた"あいつ"とはガイアのことなのだろう。


 過去にガイアに恵華は何かされたようだが、内容はエドガーに聞いてくれとのこと。


 その時の出来事は思い出したくもないが、それが解決しないと困ると言う。

 もしガイアが体を手に入れ屋敷に入り浸る事となった時、恵華はどうして良いか分からないようだ。


「ふーん……分かった。

 そんじゃ~もしそうなったらっつーことで。

 何が解決になるかは分かんねぇけど、帰る前に連絡するわ」


「よろしくお願いします。

 それじゃあ気を付けて行って来て下さい……」


 ったく!記憶が欠落してる過去はこの先こんな面倒ばっかなんだろうな。


 携帯電話をしまってこれから使うヘリの方へ向かうと、エドガーも操縦士も準備万端で待たせていた。


 クロウが乗り込むと早速離陸準備に入り、しばらくすると飛び立ち給油地点へ向かった。


「何処の売女(ばいた)と話してたんだ?(笑)」


「はぁ?そんなん居ても覚えてねぇっつーの!

 恵華だよ。何か頼み事されたんだけど、詳細はエドガーに聞けって」


 クロウはエドガーに恵華から言われたことを話した。


 するとエドガーもガイアが肉体を持った時のことを考えてはいたようだ。


 今までガイアが稀に出て来ていたが、恵華との衝突をなんとか避けられていた。

 しかし、もしガイアが肉体を持ったのならどうなるかと。


 どちらにせよガイアが肉体を持ち、クロウの近くに身を置くとなれば屋敷に住み着くこととなる。


 恵華の問題は当然解決しなければいけないとエドガーは言う。


「んで?どんな内容?喧嘩?」


「アホか。端的に言っちまうと、恵華の大切だった人間をガイアに殺されたんだよ」


「……それは無理だろ?解決とかじゃなくね?」


 エドガーの話しによると、恵華がアメリカに来てから知り合いと呼べる者は少なかった。

 しかし、組織に入りしばらくして自分に良くしてもらった者と顔を合わしてしまう出来事があり、その時にガイアが殺してしまったようだ。


「はぁ?何でそうなったんだよ!?それってわざわざガイアが俺の身体使ってそいつ等の所行って殺したってことか!?」


「いや……あれは俺の失態でもあるが、原因はウチの人身売買絡みだ」



 ――恵華とクロウが出会ってまだ日が浅く、二人共口数も少なかった頃。


 ブランドンが仕事の書類をエドガーに渡し命令を下した。


「こいつ等がウチ以外で勝手な取引をして横領しているようだ。

 丁度良い。クロウと恵華を連れて行って来い」


「ペンシルベニア?遠いな……って、こいつ等!

 ……恵華に悟られるぞ?連れて行くのか?」


「最近クロウやエリザが居るようになって表情が出てきたからな。

 全て()()()()恵華に始末させても構わん。行け」


 エドガーは渋々了解し、クロウと恵華を連れて目的地まで向かった。


 任務内容が、ブランドンファミリーの末端の末端構成員が組織の名前を使い人身取引をしては稼ぎを全て着服していた。


 その対象と関わった者の抹殺。


 道中で任務内容を説明したが、エドガーは対象人物を伏せて目的地へ向かった。

 対象は拉致や他の人身売買に協力している者達で、その詳細を恵華は何も知らない。


 恵華にとって非常に酷な任務となるため、エドガーは何とかしてクロウと二人だけで遂行しようと考えていた。


 ヘリに乗って一時間と少しで目的地の近くのヘリポートに着陸し、その後車で三十分程だった。


 恵華を見えない場所で待機させるため、対象の家から少し離れた場所に駐車した。

 できれば悟られないようにもっと遠い所に恵華を置いて行きたかったが、恵華は顔立ちが綺麗な黒髪のアジア人。


 ただでさえ目立ってしまうので、車の中で大人しくしていたとしてもブランドンを知らない同業者やナンパ目的で寄ってきてしまう可能性を考慮した。


 良い角度で家が見えない位置だが、もたもたしてると景色でバレるか……さっさと済ませよう。


 エドガーとクロウは車から降りて、対象の元へ向かった。

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