十四 【交代?消失?】
クロウの体から完全に黒い霧が抜け出るとそのまま倒れ込み、ガイアが最後に言い残した言葉のお陰で何とも言えない空気に。
とりあえずエドガーは倒れたクロウを抱えてソファーに寝かせた。
「エドガー、ドク……あいつが言ってたことって本当なの?
そもそもクロウと何の因果関係があるわけ?」
「……まずクロウを起こすぞ。魔力を消費していないはずだからすぐに起きるだろ」
エドガーとドクはアンナの問いに答えなかった。
クロウの肩を揺すり、頬を軽く叩くとエドガーの言う通りすぐに目覚めた。
「頭痛った~……あの野郎、ガイアって名前なんだな。
こんな感じでいつも出てきてたのか?」
「え!?お前意識があったのか!?」
クロウの意識は微かに残り、ガイアが話す内容は頭に入ってきていたようだ。
ガイアと思われる者が過去や現在の話しを夢の中でしていたことを伝えると、エドガー達は憶測でクロウとガイアが徐々に意識の共有が出来るようになってきていると感じていた。
そして今までも人外種絡みで突然出て来ていたことや昨日にクロウが気絶している間にも出て来ていた話しをした。
「……勝手に人の意識奪いやがって。
あぁーもう!聞きたい事がまた増えたわ!!
とりあえずエドガー!行くぞ!」
「はっ!?お、お前も行くのか!?」
「当たり前じゃ!色々思い出すためだよ!
それに俺が行けばその……死体持ち帰る必要なくなるだろ!多分!
向かう道中に俺が聞きたい事全部話せよ!?」
ガイアにすぐに向かえと言われていたが、昨日の今日で休みなく動く事となり、エドガーはため息を吐く。
マーシャルとケビンが同行すると言ってくれたが、エドガーは特に必要はないと言って全員アジトで待機を命じた。
すると、ドクがクロウに一言だけ呟いた。
「平行世界に関してお前さんに現時点でこちらが知っておる事を伝えても困惑させるだけじゃ。
あまり勧められんのぅ」
クロウは聞くだけ聞きたいだけだと自分の部屋に行き、すぐに用意を済ませてエドガーと二人で車に乗り込み例の少年の元へ向かった。
車を走らせると、クロウは外を見つつ素朴な疑問が浮かび上がった。
「あのさ、今更なんだけど色々聞く前にまず質問。
アジトもそうだけど、ここ……何処?」
「え?……ハハハッ!
そうだよな!ニューヨークで拉致られてから覚えてないんだもんな!」
ここはノースカロライナ州の都心部から離れた片田舎のようだ。
クロウは国名が変わる前の世界でも州を言われたところで有名な大都市しか元々知らなかったこともあり、全くぱっとしなかった。
ちなみにブランドンの屋敷はバージニア州にあるとエドガーは言う。
聞いても車載のナビを見ても良く分からないので、クロウは頭を傾げながら「アメリカって広いねぇー」で片づけてしまった。
クロウは組織に入ったばかりの時も、元々道を覚える気も地名さえも覚えなかったので、頭の上にクエスチョンマークを浮かべている様子を見てもエドガーは必要以上に教えなかった。
「んじゃ~これから行く所は何処なん?」
「アイオワ州まで行くからなぁ、今からヘリで向かっても途中で給油して〜またヘリだな(笑)」
「何じゃそりゃ!?アイウエ……って遠いのか!?」
目標地点まで1000キロメートル以上あるので、所有している中型ヘリでも一度の飛行では八百キロメートルが限界。
なので一度燃料補給が必要らしい。
国内線の飛行機を使えば良いのではないかと聞くと、
「国内線?……そんな物はないぞ?」
こちらで飛行機を使えるのは国から国へ向かう国際線だけだそうだ。
個人所有のプライベートジェットはあるにはあるが、政治家等や富豪しか所有、使用できないようだ。
ブランドンも所有しているようだが、専用機らしくエドガーでも使えないようだ。
何だこの世界?
「あっそ。じゃあ時間はたっぷりあるな!
しっかり話せよぉ〜?
話してる途中であの野郎に邪魔されたんだからな」
「……分かったよ。
まぁお前と二人だけになったのは丁度良いかもだしな」
聞かれたくない事でもあるのか、エドガーは話しをするにも二人で話す方が都合が良いようだ。
クロウはまず、話しが途中で終わっていた平行世界について問い始めた。
「お前は……確かにこことは異なる世界から来た人間だよ」
「!!」
エドガーは、元々クロウがこちらと似た世界の住人だと知っていた。
しかし、それは全てブランドンが実験対象者捜索に協力した人外種から知らされていた事だと言う。
クロウが囚われた理由として、実験内容が特殊能力を持つ人外種を探すために行われた。
何人もの人外種が実験対象となり、人外種の末裔であるクロウが実験体となった訳だが、実験対象のアジア人の中に異世界から来る人間が居るとエドガーはブランドンから聞いていたようだ。
「人外の奴が異世界から来るって言ったからってお前等はそれをすぐ信じられたのか?俺は人外種なんて奴等がいること自体信じらんねぇのに」
「確かにそうだな。でも俺は異次元亜空間の話しをブランドンから聞いていたからな。
平行世界があると聞いてもそこまで驚きはしなかった。
お前が実験体となった時も尋問で訳の分からない話しを話していたからな。
何となく信じられたよ」
組織からして平行世界はそこまで重要視されていないようだった。
クロウが元居た世界との違いを知りたかったが、クロウは世界情勢など詳しい訳でもなかったのでほとんどが不明。
分かった事は通貨や国名等の名称の違い以外は見受けられなかったので、ブランドンも興味を持つこともなく特殊能力の覚醒と向上だけに目を向けられていた。
「……そんなもんなん?そんじゃあ元々こっちの世界の俺は何処いったんだよ?」
「そう、それが不思議なんだ。
こっちのお前も旅行に出ていたんだが、本当に事故に合っていたかもしれないんだ」
「かも?どゆこと?」
クロウが拉致られたその日、こちらでは本当に飛行機事故は起きていた。
アメリカまで来た経緯を調べると、不可解な事に日本の航空券の記録とクロウが持っていた航空券には時刻のズレがあり、本当ならその墜落事故を起こした飛行機に乗っていたはずだった。
しかし、平行世界から来たここにいるクロウはそれよりも前の便に乗っていて少しのズレがあった。
こちらのクロウが記録通りの時間に搭乗して事故死しているなら隠蔽工作が楽になると思われていたのだが、不可解なことに事故を起こした飛行機からクロウの死体は発見されなかった。
「それって……上手く両世界の俺が入れ換わったってことなのか?
それとも消えた?……なんじゃそりゃ!?
そもそも何で俺がこっちに来てんだよ!」
「分からない。
このことに関してこれからどう解明されるかも分からないが、お前は多分こっちに向かっている飛行機の中で世界が変わった……のか?
すまない、これは俺等も分からないんだ」
これは本当に誰も分からない謎でドクにも話しは聞いているが、当時ドクは組織にもまだ属していなかったので分からないようだ。
なぜこちらの世界に来たのか。
こちらの世界の自分は何処へ行ってしまったのか。
結局クロウは自分が逆側から来た人間ということが分かっただけで、謎が形を変えただけだった。
まぁ良いか。
今考えても異世界なんて良く分からんし。
でも、向こうで昔何かあったような……。
話しを聞いても詳細不明だったが、クロウはあまり気にしていなかった。
なぜなら、自分の意識を奪う"悪魔"が存在しているということ。
この悪魔は全てを知っていると内心確信付けていたからだ。




