十二 【正式な仲間入り】
しんみりとした空気となった中で、クロウはエドガーの背中を叩き立ち上がった。
「泣くなよエドガ〜、バナナ食うか?」
「泣いてねぇし食わねぇよ!何でバナナ(笑)」
クロウは元の位置に戻り腰を下ろし、マーシャルに追加のコーヒーを頼んだ。
「そんじゃあ……アンナも許したみたいだし、エドガーで突っ掛ってたところは大体オッケーだな?
次は俺からの質問タイムと行こうかね?
エドガーにだけじゃない。
俺の疑問にお前等全員答えろ。
耳で聞いた疑問もそうだけど、訳分らん現実味ある夢見たりよ……もうさ、意味不明でしんどいんだよ。
こっちは受け入れ態勢万全だからたのむぜ?」
エドガーの問題が片付くと、次はクロウの中の多くの疑問が残った。
残ったというよりも、クロウ自身の謎解き。
するとエリザが自分の存在を忘れられていることに気付き口を挟んだ。
「……ねぇ、それは私も少ししか聞いてないし興味あるんだけど、私がここに居る問題は良いの?」
「おぉそうだ!お前何でここに居んの?」
「だから……てめぇはそれ以外私に喋れないのか!?」
ここまで話し込んで、エドガーもすっかり忘れていた。
「忘れてた(笑)すまないエリザ。
クロウ、昨日お前が鎮静剤で眠った後のことなんだけどな――」
エドガーはクロウが鎮静剤を打たれ倒れた後の出来事を話した。
「――という訳でエリザを連れて皆で戻ってきた。
こいつも色々知っちまったし、ウチに入れようと思うんだが、了承してくれるか?」
すると、話しを聞いたクロウは前のめりで真顔。
「……あのぉ~、そんな事より俺とその……何?人外種?悪魔?と人格が入れ替わったところが物凄く気になるんだけど?」
「だろうな(笑)
でもその反応からしてエリザの加入は許可してくれんだな?」
クロウはエリザを見ながらため息混じりに答える。
「別に良いんじゃねぇの?
口悪ぃけど、綺麗な顔立ちは恵華とアンナに引け取らねぇし。
エリザもさっきからずっと恵華の隣に居るし。
お前等仲良いんだろ?」
クロウはさらっとエリザの加入を了承した。
「顔立ちって……クロ様!っていうか仲良くないですから!!」
「口が悪ぃのはお互い様だろ!でも、良い事言うじゃんかぁ~!
それに~、恵華~うち等仲良かったじゃーん!
またあんたの服なんかも私が買って来てあげるからさ!……ねぇ?(笑)」
そう言ってエリザは恵華に抱き付きながら頭を撫でると、恵華は「うざい」の一言。
「エリザさんはマスターから恵華の世話係を任命されてたから一緒に居たってだけですよ?」
ブランドンの屋敷に居る時はエリザはずっと恵華に付きっ切りだったようだ。
恵華は組織に拉致られたショックから、人と上手く接することができなくなっていた。
そのせいもあってか身の周りのことに全く興味を示さなくなり、挙句には自分の身なりもどうでも良くなってしまっていたところにエリザが恵華の世話係として傍に置かれたようだ。
クロウにとってのエドガーと同じ存在だったのかと思い聞いてみたが、
「そんな良い関係じゃないですよ。
ただの着せ替え人形にされてたし!
まぁ、あの時は本当に全部どうでも良かったんですけど……」
「恵華……可哀想にねぇ~。これからはまた一緒に居てやるからな!」
「っだから!あの頃と違うんですから!
……んもっ!近いですって!!」
抱き付いて離れないエリザを必死に押し離す恵華。
そうか……恵華も突然拉致られたんだから色々あったんだろうな。
「まぁよ、仲良く楽しくやれや(笑)」
クロウはエリザの加入をすんなりと認めたが、一つだけ肝に銘じてほしいとクロウは言う。
「他の一派はどうか知らねぇし、お前が今までどんな奴と仕事をしてきたかも知らねぇ。
でもな、さっきも言った通り俺達は家族だ。
これは俺にも言えることだけど、今回のことを踏まえて分かったろ?
この先何があるか分からねぇけど、信用と助け合いを忘れねぇでくれ」
急に真面目になるクロウに圧倒されたエリザは思わず身が竦み出した。
「わ……分かった」
「クロ様カッコイイ♡
何かもう記憶戻ってるように見えますけど実際どうなんですかぁ?」
恵華は昨日、ブランドンの別邸に潜入した時から、クロウの豹変を見て記憶はほとんど戻ったものだと思っていた。
周りも同じく今日のクロウを見るに、何事もなく皆と絡み、記憶が欠落したなんてことを忘れさせる程自然だった。
しかしながら、その疑問に対してクロウは自身はよく分からないようだ。
「んー、それが難しいところでねぇ~。
過去の記憶と思われる夢を見たりしてたんだけど……全部が全部過去の記憶じゃないと思うし、俺も思い出した訳じゃねぇんだなこれが。
でも感覚だけは戻って来てると思うんだよねぇ~」
「さっきも言ってたけど、その夢ってどんなんだ?」
エドガーや周りも夢の話しが気になるようだが、クロウはまずこちらの疑問を片付けたいと夢の話しを一旦打ち切った。
「まず聞きたいことが……あれ?
何聞こうとしてたんだっけ?
ちょっと待て!あれだ!……忘れたわ」
「何だそりゃ!?」
クロウは今まで疑問に思っていた細々した事は忘れても仕方無いとあきらめたが、不思議なのが夢の中で見た光景。
医療室で話した夢でさえ朧げとなっていた。
しかし、アンナが過去の記録に残っていると言った部分はそれなりに覚えているようだが、所々があやふやとなっている。
話した時はしっかりと覚えていた夢が思い出そうとすればする程記憶が遠ざかっていった。
クロウが思い出そうと焦っていると、
「クロウ、夢で見た物事を思い出せなくなるのは普通の事じゃよ?
無理をするな。ただでさえ記憶が欠落しとるんじゃから」
ドクは無理に思い出そうとするなとクロウに言い聞かすが、クロウは思い出せない自分の頭にイラ立ち始めた。
「ん~っ駄目だ!もっと分かんなくなってきた!
昨日から色々と頭に浮かんできてたんだけど……とりあえずアンナ、さっき俺が話したこと皆に話してくれ」
「え?わ、分かったわ」




