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十一 【止むを得なかった裏切り】

 自我を保っていた事はともかく、ふざけ過ぎた結果クロウは散々な目に合わされ謝り倒す始末。


「悪かったよ!ごめんなさい!分かってたけど、そんなに怒んなや!

 実際に意識はあったけど俺は俺で大変だったんだよ!」


 アンナからL,B導入剤を受け取り体に打ち込んだ瞬間、心拍の急上昇によって常に頭痛や目眩が引き起りとても辛く苦しかった。


 そして常に何かを壊したい、自分の胸を血が出る程掻きむしりたくなるような衝動に駆られ、少しでも気を緩めていたら近くに居たアンナや恵華は確実に殺していたとクロウは語る。


「やはり実験の時と同じじゃな。

 薬で無理に限界突破を促しても身体がついていかなくなるんじゃよ」


 ドクは元々実験の過去例から予想はしていたようだ。

 過去にクロウが引き起こした()()もあり、できればあまり使いたくなかった代物。


 しかし、L,B導入剤がなければ恵華は人造人間に殺され、後から駆け付けた者達全員やられていた可能性もある。


「結果オーライじゃん?お嬢も助けられて恵華も死なずに済んだし」


 確かにその通りだった。

 始めはクロウの暴走だけが気がかりだったが、誰も人造人間なんて者が居るとは知る由もなかった。


 あの時、実際の脅威は二つだった事になる。

 それを考えると、苦しみながらも仲間を見分けつつ人造人間を退治したクロウを責めることは全員出来なくなった。


 アンナと恵華は改めてクロウに感謝し、礼を言い始めた。


「確かにそうよね……記憶をなくしたのにも関わらず来てくれたのよね。

 少し怖かったけど、本当にありがとう」


「そうですよ!恵華なんて窒息寸前に助けられたんですもん!

 ありがとうございます!クロ様♡」


 改まって礼を言われ、照れ隠しに煙草を咥えるクロウ。


「俺だけじゃない。俺自身も人を殺す感覚を思い出すまで恵華にも助けられた。

 こいつ等だって必死に動いてくれたんだ。

 それに、俺等は家族なんだろ?当たり前だ」


 クロウの言葉を聞き、もし記憶が完全に戻らなくとも、クロウはクロウ。


 根本は何も変わりはしないと全員安心感を持った。


「ん~っ……クロ様ーーーー!!」


[ガチャーン!]


「おいっ……アホ!怪我してんだろが!」


 恵華は我慢出来ずに、車椅子からクロウに抱き付き、その反動で肋骨や体の節々に激痛が走った。


「にゃっ!……痛っったぁ~い!!」


 恵華の行動で周りは笑いに包まれ、クロウは恵華を優しく抱き上げ、ゆっくりと車椅子に降ろした。


 昨日とは違い、今日は何かを思い出せるよう落ち着いた和やかな一日にしたいとクロウは煙草に火をつけた。


 ……。


「あの……待ってくれ。何だこの空気?

 まだまだ全っ然っ話す事あるだろ!!」


 これから皆で外食にでも出かけるような雰囲気にエドガーがカットインした。


「ぷっ!エドガーってツッコみ入れられんだ」


「滅多に見れないけどな!(笑)」


 ツッコミを入れたエドガーに笑いながらもエドガーに謝り、全員ソファーに腰を下ろした。


「ゴホンッ。

 え~、とりあえずクロウ。

 俺の手、これは誰がやったか分かるか?」


 エドガーはクリス達も不思議に思っていた手の怪我をクロウに見せた。


「俺だけど?怒ってはるんですか?」


「!!」


 いつクロウはエドガーに怪我を負わせたのか、全員驚いている。


「俺はお前達とバラけてからボスと落ち合うために本邸に行き、中の状況はルイスの部下から報告を貰っていた。

 それで屋上からライフルスコープで監視していたんだ」


「そうだろうな」


 クロウは分かっていた。

 限界突破したクロウが屋上へ行き、恵華を助けた後に両足をどこからか撃たれていた。


 その後立ち上がった時に本邸の方を確認し、エドガーだと認識していた。


「えっ!?じゃあ、あの時の意味不明に

 マーシャルからライフル取り上げて撃ったのって……」


「その時の怪我だ。

 だが、こんなものは小さな代償だ。

 お前達を裏切った上にクロウを撃っちまったしな……」


 全員信じられない事に驚き続きだった。


 驚くのも無理はない。

 恵華達も確認していたが、本邸までの距離が遠過ぎてエドガーどころか人影すら見えない距離だった。


「クロウ、よく見えたな?ってか、よく狙えたな?」


「本当だよな……今は俺自身も驚いてんだよ。

 あん時は見ようと思ったら見えたんだよなぁ。

 今は……見えそうないわ(笑)

 でもエドガーの腕じゃなくてライフル壊したんだけど、破片が当たっちまったんだな……悪ぃ」


 クロウは目を細めて窓の外を見るが、エドガーを撃った時のようには遠くが見えなかった。


 すると、L,B導入剤で細胞の活性化まで促せることが出来るため、眼力に集中すればクロウなら可能だとドクは言う。


「ふーん……まぁそこらへんは追々。

 とりあえず、あの時エドガーは俺から恵華を助けようとして撃ったんだろ?

 もし本当に俺が意識なくして恵華を襲ってたらヤバかったんだからよ!

 気にするな!なんか知らんけどもう治ってるし」


「本当に回復早いですよねぇ~(笑)

 エドさん、ありがとうございました!

 もしもって時のためにライフル構えて見てくれてたんですかぁ?」


「いや、ボスの命令だ。

 それに……礼なんか言うな。

 恵華が男に首を絞められているところも俺は見ていたんだぞ?

 もしもってのは合ってるが、お前達全員のためじゃない……」


 エドガーは話し辛そうに口ごもる。

 それを見て、大体を察していたクロウが代わりに答え出した。


「俺だけのためだろ?

 多分ブランドンは"監視対象だけ危うくなったら守れ"。

 そんで恵華がやられてる時はあのジジィが近くに居て動けなかった。

 でもお嬢と俺が接触したことを報告受けて俺が屋上に来るのを願ってたんだろ?

 思い通り俺が来て人造人間を潰したけど、理性を失ってると思ったお前は恵華が俺に殺されると思って命令に背いて撃った……だろ?」


「……そうだ。

 もし人造人間の男にクロウが敵わなくて殺されそうになった時は、首を狙って刎ね飛ぶまで撃てという命令だった。

 それ以外は手を出すなと。

 でも……お前達にも死んでほしくない……クロウに恵華を殺させたくない……そう思っていたら引き金を引いていた……本当にすまない」


 昨日はボスに従順なエドガーに全員怒りを覚えていたが、俯きながら事実を告白するエドガーに対して怒りから感謝へ変わっていた。


 エドガーには立場もある。


 しかし、ボスには逆らえない立場でありながらも仲間を守っていた。


「……そっかぁ」


 クロウは立ち上がり、エドガーの隣に座ると肩に腕を回した。


「エドガー、俺等の大事な家族守ってくれてありがとよ」

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