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十 【話し進まず】

 アンナが元の話しに戻そうと二人の間に入りビンタ炸裂。

 そして正座をさせて二人に説教を始めた。


「そんなじゃれ合いなんて後でやりなさいよ!子供じゃないんだから!」


 アンナの大きな声が響く中、マーシャルが全員のコーヒーと紅茶を持ってきた。


「クロウは本当に記憶なくなったの?

 昨日の今日なのにいつも通りじゃん(笑)

 はい、どうぞ~」


「ほらクロウ、結局マーシャルが全部入れてんじゃねぇか。礼言え」


 わざとなのか、クリスがまた火種をまいた。


「お前に言われんでも言うわチ〇カス」


「はぁ!?誰がチ〇カスだオラァァ!!」


 またもやバトル勃発。


 [バシンッ!]


 と思いきや、アンナとエリザが二人の頭を叩き止めた。


「お前等いい加減にしろ!」


「だから話しが進まなくなるから!もう二人は喋らないで!!」


 クロウとクリスは睨み合いながらも黙り込み、二人はコーヒーを口にする。


「――お!」


 すると、記憶のないクロウ以外はマーシャルが入れるコーヒーや紅茶は誰が入れるよりも絶品だと分かっているので普通に飲んでいるが、クロウはその味を忘れていたので改めて感動している。


「おぉ!ありがとうなマーシャル!これは美味いわ!!スゲーな!」


「そう?結構前に入れてくれたクロウのブレンドも美味しかったんだよ?」


「マジで!?思い出せねぇ〜……ちょっとマーシャル!もう一回教えて!入れるところ見せて!」


 またもやクロウは振り出しに戻そうとしたところをクリスがツッコもうとしたが、その前にアンナが立ち上がり、再びクロウの頭を叩いた。


「あだっ!」


「……ねぇ、本当にバカでしょ?

 英語分かる?関係ない話ししないでって!

 次喋ったら罰一つ追加ね!!」


 クッソ……お嬢め。

 何だ罰一つって?でもこれ聞いたらまた怒りそうだな。

 っつーかクリスと自然にふざけまくってるけど、マーシャルが言うように記憶なくなる前もこんな感じだったのかな?


 クロウは黙って煙草を吸い始め、アンナが先程の人造人間の話しに戻した。


「それじゃあ、あの男の手掛かりがもうないのならボスに直接聞くしかない訳ね……」


 アンナはボスから直接聞き出そうと考えるが、エドガーは時間の無駄になると話す。


 あの男が改造された人間と説明を受けた時にボスに色々と質問をしたが、何も答えなかったようだ。


 エドガー以外の幹部連中も知らされてなかったらしい。


 これからまたボスの指令や何かしらの事件で、ただでさえ人外種の問題がある中、人造人間という未知の外敵が現れた。


 仲間を危険に晒される事を考えると、アンナは不安で仕方ない。


 するとアンナは忘れていた手掛かりを思い出す。


「そうよ!エリザ!あなたあの男と一緒に居て何か知ってるんでしょ!?」


「……悪いけど詳しくは知らないわ。

 あれはもうロボットみたいなただの"物"だったわよ。

 命じた事だけに反応するだけ。

 うなじにあるボタンを押し込まなければぶっ叩いても反撃もしないただの木偶の坊」


 アンナには助けられた恩があり、素直に口を開いたエリザ。


「反撃しない!?他には!?」


「ごめんね、残念ながらルイスに使い方を教わっただけ。

 何なのか聞いたけど、あいつは都合の良い"殺人マシン"としか言わなかったよ」


 エリザも昨日にルイスから扱い方聞いただけで、詳細は知らなかった。


「悪いわね、力になれなくて……」


「良いわよ、気にしないで。

 うなじのボタン……あの時見た死体からして全てが機械って訳じゃないし。

 フゥー、本当に謎ね」


 エリザは特に有益な情報を持っている訳でもないのに恵華とアンナに助けられて、アジトに来てからどこか罪悪感があった。

 力になれなかったことに少し落ち込むエリザだった。


 アンナは今できる事と、どう解明に近づけば良いか頭を抱えてしまう。


 すると、その姿に見兼ねたエドガーは、


「あれに関しては俺達も探りを入れる。

 必ず面倒事になるからな。だから一人でやろうとするな」


「……ありがとう。

 でも、何か正体を知る手掛かりの一つ位ないかしら」


 謎しか出てこない話しの中で、突然クロウが話しに入ると真面目な発言をし始めた。


「なぁ、その人造人間って俺が顔面潰した奴だろ?

 だったら捨てちまった俺の服とズボンに返り血が付いてんじゃね?

 っつーか何でお嬢がそんなに拘ってるんだよ?」


「それはさっき言ったあいつとの約束……それだわ!それを調べれば……って、えっ!?

 あんたL,B打った後の出来事を覚えてるの!?」


 アンナはあの時の事を思い出し、クロウに声を張り上げ問い詰める。


「誰だあいつって?何だよいきなり。

 全部覚えてるよ?それがどしたの?」


 あの時、クロウが薬を打ち込んだのを目の前で見ていたアンナは勿論、全員が自我を失ったと思っていた。


 あの時は殺されるかもしれない。

 危ない状況になれば発砲してでもクロウの動きを止めようとも考えていた。


「で、でも……あれだろ!

 ちょこちょこ意識がなくなって不安定だったとかだろ?」


 あの時、全員なんとかしようと必死だったのにも関わらず。


「え?いぃや?割とハッキリ。何で?」


  あの時、クロウは自我崩壊など起こしていなかった……。


「!!」


「あれ?何?お前等どしたの?

 スゥー、プハァ〜……」


 全員怒りが込み上げ、アホな顔して煙草を吹かすクロウにどうして良いか分からなく怒りが込み上げ震えだしている。


「ん~?ねぇどしたの?恵華までプルプルして……恵華?恵ちゃん?ねぇ笑って!」


 クロウは皆激怒寸前な模様を察して笑いを誘おうとするが、もちろん逆効果。


 挙句の果てにふざけ出し、


「何じゃお前等!お嬢も何か言えよ!お嬢!お嬢ちゃん!……お嬢ちゃん!?

 ぷくくっ……お嬢ちゃんって……ダハハハハハッ!!」


[ブチッ!]


「何を……自分で笑ってんのよー!!」


[バチーーン!]


 全員怒りが心頭に達し、アンナが強烈なビンタをクロウにかました。


「ぶぅっ!痛ってぇなこのアマー!

 乳揉んだらぁ――!?」


 それに続いてクリスがクロウに飛び掛り、アンナとエリザがそれに便乗し蹴りを入れまくる。


 恵華達からも罵倒の嵐。


「クロ様のバカ!ばーかばかばかばか!!アホ!!」


「お前等マジやめ……電気アンマやめろ!アホか!

 ダメっ!優しくして!初めてなの!〇△✕□▽☆」


 しばらくこのくだらない争いが続いた。

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