八 【事の発端】
「まず、言わせてもらう。
本当にすまなかった……」
エドガーは全員に謝罪を始めた。
クロウは謝罪の意味が分からないと質問をすぐに投げる。
「エドガー、謝るってことはやっぱりお前もアンナの拉致に噛んでたってことか?」
「……そうだ。すまない……」
エドガーが事件の発端に噛んでいたことを認めると、途端にクロウはエドガーを睨みつけ始め、場を凍らせた。
「……まぁ良いや、終わったことだし。
俺も聞きたいことがあるからよ。
簡潔に話せ」
クロウも話したいことがあるようで、エドガーも伝えなければいけないことをまとめて事件の始まりから話し始めた。
「始めに、クロウ。
記憶がなくなる前の話しを色々と端折っていたのは気付いているな?」
「あぁ……お前等全員何か隠してるだろ?」
クロウは周りを見渡しながら答えた。
「クロ様それはち――」
「うるせぇ!……エドガー続けろ」
恵華やクリス達も言い訳をしようと話しを割るが、クロウに怒鳴られ黙ってしまった。
昨日からごまかしながら話していたことが、今から話す事で大体は明らかになるとエドガーは言う。
後程、ここに居る全員クロウの質問攻めに遭うのだろうと覚悟してエドガーの話しを聞くことに。
事の始まりは昨日、クロウが記憶をなくして目覚めた時にすぐにボスに報告した。
その時にクロウを試す事が既に決まっていたと言う。
今のクロウの能力や内なる悪魔の状況を確かめるためにボスから命令が下った。
「あっ!おい!その悪魔って――っつ、続けて」
夢に出てきた男の話しかとクロウは聞こうしたが、自分で聞きたいことは後でと言ったのを思い出し質問を取り下げた。
「……続けるぞ」
ボスからの命令と言っても、アンナを拉致したのは行き掛かりのことだった。
始めはボスが用意した"ある男"をクロウにぶつけろという命令だったようだが、アンナが単独で動いたことで状況が変わってしまった。
クロウとエドガーがボスの元へ向かっている途中にアンナから連絡が入っていたが、それをエドガーは無視した。
なぜなら、その時すでにアンナをボスの部下に捕えさせようとエドガーの頭にはあったからだ。
アンナから連絡が来る前にドクからエドガーへメールを事前に送っていたのだ。
内容は、
"アンナがクロウのL,Bを届けに行った。
まだヘリに乗ってなければ待ってやってくれ"
このメールが来た時にエドガーは、ボスの企てにアンナを使おうと考えていた。
「……」
全員エドガーに物言いたげな目で話しを聞いているが、話しを止めないようにグッと我慢する。
しかし、
クロウの中で過去に見た夢の一場面がフラッシュバックし、突然豹変してエドガーに飛び掛り顔面を殴り飛ばした。
驚きつつも男連中は一斉にクロウを羽交い締めにして止めに入る。
「クロウ!気持ちは分かるけど今は抑えろ!話しが進まないだろうが!!」
クリスはクロウの腕を押さえながら必死に宥める。
「エドガー!てめぇ!!
前にもお前と"ブランドン"にそそのかされて俺もこいつ等も死ぬ思いしたの忘れたのか!?
今回も俺一人で済むのもんをまた全員巻き込みやがって!!」
「!?」
以前にも同じような事があったのか、クロウは周りを巻き込んだことに激怒していた。
しかし、なぜその事を覚えているのか。
殴られてふっ飛んだエドガー含め、全員が驚いた。
すると、エドガーはゆっくりと起き上がりながらクロウに問い始めた。
「クロウ……何でその事を?記憶が戻ったのか?」
「あぁ!?……ん?
あれ?何だ?一瞬だけ思い出した?あれ?
ブランドンって誰だ?」
クロウはエドガーの話しの途中、一瞬過去の出来事や人物を思い出したようだが、徐々にまた記憶が曖昧になっていった。
「確かに……まだ言ってなかったな。
"ブランドン"はボスの名前だ。
さっき居た部下の言うビッグボスがブランドンだ」
ボスの名前はブランドン。
組織の本元は"ブランドンファミリー"だった。
記憶が欠落する前のクロウは、ボスの事を一度も"ボス"と呼んだことはなく、ブランドン、もしくはオッサンとしか呼んでいなかったようだ。
「そう……なんだ。
って!それも後じゃ!簡潔にさっさと話せや!!」
「お前が殴り掛かって止めたんだろ!アホ!!」
「……ごめんなさい」
クリスにツッコまれ、少ししゅんとするクロウ。
エドガーは改めて謝罪し、仕切り直して話しを戻した。
ボスに所にクロウを連れて行った後、クロウを外で待たせている間に記憶の欠落、今後の対応などを話し、アンナがこちらに向かっていることを伝えた。
するとボスは窓の外を見ながら、「それは使える」と笑っていた。
ボスが窓から見ている先には、クロウがルイス達に囲まれている光景が。
今のあいつだと殺されるぞと言って、ボスはエドガーに向かわせた。




