七 【軽慮浅謀】
クロウは夢の中で見た全てを話し終え、煙草を吹かす。
「それは間違いなく過去の記憶よ。
最後の"白銀の魔法"ってところはなんだか不気味ね……。
そこは分からないけど、記録にも残ってる箇所はあるわ。
クロウからも直接聞いたこともあるし」
「……あのはっきりした夢は事実なんだな」
これは現実なのか?このロベリカ……じゃねぇ、アメリカには人間以外も普通に居るのかよ。
クロウの見た夢は過去の記憶で実際にあった話しだとアンナは言う。
「その中で出てきた龍人は"リルル"のことね。可愛い子よ」
「マジで!?しかし可愛いお名前(笑)お嬢はそいつに会ってんのか?」
龍人は組織で捕らえた龍人族の人外種で、ボスは保護をしただけと言っていたようだが、変貌したクロウが解放しろと脅し、もう一人の龍人も保護した。
龍人はその後にクロウが面倒を見て、今はその妹"ミルル"と共に"ある場所"で一緒に暮らしているらしい。
「そっか……」
夢の中で謎の男の言っていた"今は問題無い"は"助けられた"と言うことだったんだとクロウは納得した。
するとエリザが今迄の話しを聞き、疑問に思うことをクロウに尋ねた。
「ねぇ……あんたは何でボスの元を離れたの?」
「あぁ?そんなん知らね。覚えてねぇ。
っつーか何でお前ここに居んの?
それよりお嬢、メモの解読頼むわ」
「あぁ!?」
再三にわたるクロウの質問にエリザは苛立ち怒りを露わに。
それに対抗し、クロウとエリザはメンチの切り合い。
その場を収めるためにアンナが仲裁に入った。
「クロウ!検査は終わったんだから上で話しましょ!解決しなきゃいけないこともあるのよ」
「いやちょっと待て!まだ俺の白髪になってる理由とかも……」
「それも上で話すわよ!」
何とか二人を引き離し、メモは後で解読しておくと言って四人で三階リビングへ向かった。
――三階に行きリビングの扉を開けると、全員部屋にも戻らずクロウを待っていた。
すると、そこには知らない男達数人がエドガー達の前に立っていた。
その男達はクロウを見るなり、
「え?白髪……ボスですね!!体は大丈夫ですか!?
あっ、ビッグボスから報告です!」
「んあ?お前等誰?俺がボス?ビッグボス?なんじゃそれ?」
男達はクロウファミリーの一員だった。
クロウの白髪を見て驚いていたが、初めて見る姿ではない様だ。
三十人程居ると聞いていて、昨日からほとんど姿が見えないと思っていたが、半数以上は療養中だと言う。
一昨日、つまりクロウの記憶が欠落する前にとある抗争で全員怪我を負ったようで、残りの数名で屋敷の警護や他の部下の面倒を見ていたらしい。
クロウの部下が言う"ビッグボス"とは、組織全体のボス。
つまりクロウやエドガーが昨日本拠地で会ったボスのことだった。
クロウファミリーではクロウがボスのため、部下の中にはクロウをボスと呼ぶ者も居る。
必然的にボスとビッグボスと分けて呼ぶようになったようだ。
「抗争……そうか。
お疲れさん。悪ぃがお前等のことも覚えてねぇんだ。
まぁこれからもよろしくな。
そんで?何の報告?」
どうやらボスの屋敷から一報が来たようで、
内容が
"ルイスがバッチを置いて消えた。
見つけ次第生きたまま捕らえろ"
どうやらルイスは組織から逃亡をしたようだ。
バッチとは組織の幹部にだけ渡されるスーツのフラワーホール用の社章。
エドガーは勿論持っているが、ボスの元へ顔を出す時のみ身に付けている。
クロウと恵華も持っていたようだが、今の屋敷を他の組織から奪い、クロウファミリーが結成された時に自ら幹部を辞めて二人共返却した。
それをルイスは逃亡する際にバッチを捨てて行ったということは、組織を無断で抜けると言っているのと同じ。
普通なら"見つけ次第殺せ"のはずが、生きたまま捕らえろと言うには、何か理由があるのだろう。
「ルイスは何かと問題があるから内密にルイスの部下に監視を命じていた。
……その監視役の死体がボスの敷地内で見つかったらしい」
エドガーはルイスに監視をつけていた。
その監視にはルイスも薄々勘付いていたようで、部下を連れずに何かと単独で動くこともあったらしく、ボスもルイスの行動に制限をつけていた。
なぜこのタイミングなのか、クロウを恐れての逃亡なのかは不明だが、何かを企んでのことなのだろう。
しかし、ルイスの企みは何かとクロウが関わることも多いので、逸早くこちらに知らせが来たという訳だった。
「ふーん……あいつのことも全く思い出せねぇんだよな。
大組織ならその内すぐ見つけるし、俺狙いで何か企んでんなら直接来るだろ?そん時殺せば良い。
だから頭には入れとくぐらいで良いんじゃね?
っつーか俺自身それどころじゃないしな!(笑)」
クロウは昨日の今日でも、ルイスのことは気にも留めなかった。
実際に自分のことで頭が一杯で、とりあえずアンナが無事だったんだから良いだろうとルイス捜索を軽く受け流し、報告を上げに来た部下を引かせた。
「お前がそれで良いなら構わないが……それじゃあクロウ。
全員揃ったから昨日のことを話させてもらうぞ……」
「は?昨日……あぁそうか!聞いてやろうじゃんかエドガーさんよぉ!
ほんじゃ〜、どうぞ!」
クロウはソファーに座り煙草に火をつけて話しを聞く体勢に。
何だそのテンション、話しにくいな……。
完全回復したクロウのハイテンションの中、エドガーは昨日のアンナ拉致事件について話し始めた。




