四 【異なった人種】
「まぁ、世界の話しはこの位にしておこう。
不明要素が多い分にこれ以上語っても意味がない。
一応頭には入れておいてくれ」
ドクは世界の話しを切り上げると、次は人外種について語り始めた。
人外種はいつの時代からかは不明だが、昔からこの世界に多く生息し、人間と共に暮らしていた者も多かった。
しかし、文明の発達に連れて次第に共存が難しくなってしまう。
ある時を境にプラズマ亜空間が開き、そちらに移り住むことの出来た人外種も居るが、この世界で人里を離れて暮らす者も多かったようだ。
ただ、例外として人間とほぼ外見に差のない者は、人間社会に溶け込むことが可能なので現在でも変わらず人間として暮らしている。
見た目から共存の難しい人外種は、科学文明の発達したこの世界で人目を避けて暮らすことはほぼ不可能な訳だが、実際に現時点でこの世界でどの位現存しているかは分からないようだ。
「でもこれは憶測に過ぎないわ。
人外種の数が昔と比べて少なすぎることからプラズマ亜空間に消えたんじゃないかって言われているだけ。
現世界で人里を離れて暮らす人外のことはクロウが気にしていたこと……でもクロウは人外の知り合いも多いわよ。
よく医療室で話してくれたわ」
クロウは何かしらの事情でアジトを二、三日留守にすることがあり、帰って来ると怪我を負っていることも多く、医療室でアンナが手当てをしている時などに出会った人外の話をしてくれたようだ。
「あんた達は人外種との交流はあるの?」
「あるけど、共存可能なタイプの人達よ。
クロウファミリーにも人外はいるし。
でも見た目では分からないわね」
「……は?え!?嘘!?誰!?」
仲間の中でクロウ以外に人外種が居ると聞き、驚くエリザ。
しかし全員何も言わなかった。
「その内分かるわ。
詳しくはその時本人に聞きなさい」
当人はクロウファミリー以外にはあまり知られたくない気持ちもあってアンナは教えなかった。
「えぇ〜、まぁ良いわ。
ふーん……この世界に人間以外は生存してないと誰もが思っている世の中で……はぁ〜、凄いね!」
エリザは受け入れるしかないと開き直った様子。
実際に昨日のクロウの姿と力を見てしまっているので、信じる他なかった。
「人外種が世の中に居るのは分かったわ。
じゃあクロウは何で人外種の末裔って分かったの?
何であんな強いのに未だにボスの元に居るの?
クロウは基本的にこの組織で何やってるの?」
エリザの質問攻めをドク達は困惑。
クロウがなぜ捕らえられ、人外種の末裔と判明したのかは、ボス直々の命令からで詳細は分からない。
ドクもクロウが捕らえられた時は、まだ組織に雇われていなかったので分からないようだ。
未だに組織に籍を置いている理由はクロウは死んだことになっているため、帰る場所もない。
同時に今でも身内が人質となっている可能性もあるからだ。
しかし、今クロウには人外絡みでやりたいことがあり、ボスの元に居れば人外種の情報が入ることから黙って身を置いているようだ。
そして、クロウは"対人外種戦闘員"でもあるからと言う理由があった。
「対人外種戦闘員?
仕事で人外種と戦うことがあいつにはあるの?」
「ほとんどない……と思うのじゃが、それがクロウの仕事。
ボスがクロウを手放さないでいるのはこれじゃろうな」
世界には何かしらの能力を持った人外種多く存在する。
それらを捕らえて監視下に置き、クロウのようにマフィアやギャングに雇われている人外種も居るのだとドクは言う。
過去に何度か他国で人外種絡みの抗争があった時にクロウファミリーが遠征したことがあるようだ。
それにエリザは驚いた。
「え!あんた達全員で人外種とやり合ったの!?」
「そんな訳ないじゃないですかぁ〜。
組織に雇われてるような人外なんてやり合うことになったら人間じゃ手も足も出ないですもん。
だから用心棒の人外はクロ様。
組織の人間を恵華達が何とかするんですよぉ?」
人には人、人外には人外。
人外種という未知の力を持った者を相手にするのに組織にクロウの力が必要なのだろう。
しかし、人外種絡みのボスからの指令はほとんどない。
暇があると、クロウは個人的に普通の人間と異なった者を探して気に入らない人間や人外を潰しに行っていた。
「ん〜……もう人外種関連は少しずつ慣れさせて。
クロウがその末裔って事が理解できただけでお腹いっぱい」
エリザはギブアップのようだ。
理解はできたようなので、エドガーもこれだけ聞けば十分だと、話しを一旦切り上げようとすると、
「ねぇ、エドガー、エリザ。
クロウが屋上で殺したあの男は何なの?」
「……」
話しを切り上げようとしたエドガーにすかさずアンナは重要な質問を持ってきた。
するとドクも気になるようにエドガーとエリザを見る。
「……それは、クロウが起きてからの方が良いだろ?」
クロウが起きたら話すとエドガーは質問を拒否した。
そのクロウはもう十時間以上寝ているのに未だ起きて来ない。
心配になったアンナは様子を見に医療室に行くことにした。
「それじゃあ私は今日クロウに付き添うわ。
起きたら全員呼びに行くから一旦解散しましょ」
アンナがそう言いながら立ち上がると、ドクも立ち上がり一緒に医療室に行くことに。
すると突如エリザがアンナを呼び止めた。
「ねぇ、これから私はあんた達の手伝いなんでしょ?行くわ。
それと!"魔力"についても後で教えなさいよね!」
エリザも医療室へついて行くことに。
[ガチャッ]
アンナ達は部屋を出ようとドアを開けた。
すると、廊下に男の後ろ姿が。
「……きゃーーーーー!!!!」
アンナは悲鳴を上げた。
全員即座にドアの方へ走り、クリスがアンナの肩を掴み部屋に入れて廊下を見ると……
そこには衣服を下半身に巻き、まるで裸エプロンのような格好をしたクロウの姿が。
後ろ姿はケツ丸出しの変態。
全員目が点になる。
クロウは振り返り、全員と目が合うと一瞬硬直し、
「ちょ、違っ……いやぁーーーーーー!!」
なぜか奇声を上げて自分の部屋に走り去るクロウ。
「何してんのあいつ?アホか」
クリスは冷静にツッコミを入れると、アンナが何かを思い出したかのように部屋の中から出て来ては、クロウの後ろ姿を真顔で凝視し始めた。
「……嘘でしょ」
「どうしたアンナ?
そんなにあいつのケツが気になるのか?(笑)」
「あれ……」
「?」
「私の上着……」
「……」
下着も履かずにクロウが腰に巻いているジャケットは、医療室に置いていたアンナの物だった。




