二十七 【彼奴】
「……何の事だ?」
「ほう……白を切るか。
これは見逃せん……貴様の下っ端に人間として機能していない者が居た。
あれは"人外種"でもない……」
人間と人外種。
クロウの口から思わぬ言葉が出てきた。
しかしボスの部下は驚いている者も多数いるが、クロウファミリーはそれ程驚いてはいなかった。
「どういう事なの!?あの男は実験で造り上げたって事!?」
アンナは何かを知っているようだった。
実験で造り上げたということに周りは驚いているが、それはクロウが囚われた時と同じことを意味しているのか。
「そうか……とぼけるのか……」
そう言うと、クロウはアンナの方へ向かって来た。
アンナは動揺し、恐れながらも動かずに立っていると、手に持っていたクロウの銃を取り上げられた。
そしてシリンダーを横に出し黒い息を中の弾丸に吹きかけ撃鉄を起こすと、それを別邸の方へ向けた。
その方向にはボスの部下や捕まっているエリザも居る。
「チッ!」
危険を察知した恵華がボロボロの体で力を振り絞り、瞬時に移動しエリザを抱えて周りの部下達から遠ざけた。
「……良い子だ」
「お前の指図で動いた訳じゃない!!」
恵華の言葉にニヤリと笑みを浮かべたクロウは別邸に向かい銃の引き金を引いた。
[ドーーーーーン!!!!]
物凄い音と共に黒い炎のような光が建物とその周辺の部下達を跡形もなく吹き飛ばしてしまった。
残ったのはクロウの前に広がるどデカい弾道の跡がどこまでも続いている。
全員その破壊力を見て硬直してしまった。
クロウは再度シリンダーの中に息を吹きかけたると、振り返りボスに銃を向け出した。
「ジジィ……言え……殺すぞ」
脅しかけるクロウに対して悠然と構えるボスはため息混じりに答える。
「お前はこの世界に干渉しないと言っていなかったか?
何人も殺していると思うが?」
「貴様等とそれに関わる人間は別問題だ……吐け……あの人間は何だ……?」
様子が変わったクロウは造られた人間と思われる者にやけにこだわっている。
ボスも先程のクロウの銃撃を目にしているのにも関わらず全く動揺も見せずにいる。
「フン。ウチの別邸の代金はクロウに請求するとして、クロウの記憶を何とかしてやれ。
いざという時に使い物にならなかったら困るんでな。
それとも……お前がクロウの代わりをやるか?(笑)」
「……死ね」
ボスは今のクロウの変化が何か分かっているようで、普通に話しをしている。
周りは話しについていけていない中で、突然アンナがクロウとボスの間に入り込み、変貌を遂げたクロウに対し口を開いた。
「昨日の今日でクロウの体が持たない。
しかも薬を使って疲労してるの……今は意識を返してくれないかしら?」
過去の経験から言っているのか、まるでクロウに悪霊でも憑いてるような言い方をする。
それに対してクロウはアンナを完全に無視。
これ以上クロウの体で"魔力"を使わせられない……。
アンナはクロウの体を考え、どうにかこの状況を何とかしたい。
クロウの中にいる者を宥めなければと、今度はボスの方へ振り向き頼みを申し出た。
「ボス、私はクロウの体が心配なだけ。あの男のことはどうでも良いの。
それに、エリザがこれからどうなるかも想像がつくわ。
エリザは恵華の元同僚。
どうか私達の屋敷へ連れて行く事を許して。
それでこの場は引くわ。
貴方に従順だった恵華の小さな頼みくらい今は聞いてあげて……」
「……」
ボスは放してやれと部下に命じた。
どうやらアンナの申し出を飲んだようで、ボスはエドガーにご苦労だったと言いつつ、何かを耳打ちして車に乗り込みエドガーを残し本邸へ去って行った。
それを見送り、アンナはクロウの銃に手を添えだした。
「私もあの造られたような人間を見るのは初めてなの。
造った方法と……考えたくはないけど量産しているかも調べるから」
するとクロウはアンナの言うことを聞き入れ銃を下ろした。
「……もしこの世界の者だけで造り上げたのなら俺が口を出す事ではない。
だが、人外が関わっていたらジジィ諸共全員殺す――」
そう言ってクロウの体からやんわりと赤黒い霧が出ると同時に、クロウは膝から倒れ込んでしまった。
見た目は白髪のままだが、先程の感じとは全く違って普通の寝顔のクロウに戻っていた。
「……エドさん、クロ様お願いします。
帰りましょう」
「……」
エドガーはクロウを抱えると、黒い霧が薄れ消えていく空を眺めながら大きくため息を吐いて謝罪し始めた。
「今回は……いや、今まで本当に悪かった。
クロウが目覚めたら改めて謝罪する。
それと……何が狙いでこんな事になったかも話す。
あいつも出て来ちまったからな」
「当たり前だろうが!
エリザ!お前も来い!ルイスが消えちまった今、お前の居場所はねぇんだ!
これもクロウ……のお陰だ!洗い浚い話してもらうからな!!」
「わ……分かってる」
クリスは怒鳴り散らし、クロウが別邸を消し飛ばした弾道の跡を残しその場を後にして全員でアジトへ向かった。
アンナを救出し、事は終えられたが問題は多くある。
エドガーも戻り、薬を使ったクロウも暴走することなく、全員が言う最悪の事態を避けられた。
しかし、人並外れた力を持った不気味な者が現れ、クロウの中に現れた何者かがそれを許容外だと言って現れた。
「エドさん、あいつ……最近よく出てきますね」
「……そうだな」
"彼奴"。
いつも丁寧口調の恵華も好いてはいないようで、クロウの中にいる者をそう呼んだ。
何気ない旅行からの突発的なアクシデント。
クロウは囚われて知らぬ間に二年以上時を過ごし、今まで生きてきた道には戻れなくなった。
マフィア組織に入れられ、人間でない者まで現れ、謎が深まるばかりだが、クロウは記憶が欠落した状態でこれ等をどう対処するのだろうか。
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