二十四【アーティフィシャル・リミット・ブレイク】
アンナはため息を吐き呆れた。
なぜかというと、スカートの中には太ももの内側にベルトで薬を二本縛って隠していたからだ。
「あーそうなの?全然見てなかった(笑)
っつーか、何でそんなところに隠そうと思ったん?」
「私が薬を外に持ち出すような事はほとんどないし、予備もないから。
バッグは取られたし、案の定中に入れてた銃も取られたわ。
用心しといて良かった……」
もしもの時のために薬だけはとスカートの中に隠しておいたお陰でL,Bと鎮静剤はルイス達に悟られなかったようだ。
それではとアンナは正座したまま腰を上げて両足を開き始めた。
「……うそだろ?」
「りょ……両手が後ろに回ってるんだからしょうがないでしょ!」
「はぁ!?そんなんしたら俺が嫌がる女に手錠掛けた後、イタズラしまくる変態仮面RX……」
「怒るわよ?」
「……ごめんなさい」
クロウは仕方がなくアンナのスカートに手を入れる羽目に。
しかしながら、片手が怪我でうまく使えないので利き手に持っている銃を置き、膝上までの少し短めのスカートの中に手を入れた。
[モゾモゾ……]
「っん……ちょっと!
くすぐらないで!もっと上だから!」
「しょ、しょうがねぇだろ!見ながらやってる訳じゃねぇから分かんねぇの!」
何をしてんねん俺は……ここに来るまでのシリアスモードはどこいったん?
物を探すために見えないスカートの中に手を入れた事なんてある訳がないので四苦八苦。
それでも薬の場所は分かったが片手ではベルトを取ることができないと思い、中で薬だけ抜き取ろうしたが上手く取れない。
力の入れ加減が分からず手が滑ってしまい、
「んっ!……コラ!!クロウ!!」
「はぶっ!ごめん!!」
薬をベルトから引き抜こうとしてアンナの股に手が当たってしまった。
アンナは注射でもするかのように下を見ないようにして顔を赤らめながらもくすぐったいのを我慢している。
クロウもまた手が滑らないよう懸命に薬を取ろうと懸命にまさぐる。
そしてなんとか一本目が取れ、それを床に置いて二本目を取ろうと再度スカートに手を入れると、アンナが取れた薬を見せてくれと言うのでスカートから手を抜いて薬を見せた。
「こっちはL,Bね。
クロウ、鎮静剤は後から取って打った方が良いかもしれないわ」
何らかの体の変化で記憶が欠落したのなら、今L,Bを使ってどのような作用が出るか分からないと言う。
「ふーん。じゃあドクが言ってた"考えたくもない事態"ってのになるかもってこと?」
「……その話しは聞いてるの?」
「いや、聞いてないけど」
やはり過去に仲間に迷惑をかけたことがあるんだなとクロウは思い、鎮静剤は自分で打てなかった時のことを考え、後から気合いで仲間と合流して自分に打ち込んでくれと頼んだ。
「分かったわ。
でも、できれば恵華にお願いしたいから一緒に――?」
アンナが何かに気付いた。
「どうした?」
「この上は屋上よね?何か音が聞こえなかった?」
何かの物音が上から聞こえたようで、二人は耳を澄ました。
すると微かに外から恵華の声が聞こえた。
「恵華か!あいつ何で屋上にいんの!?」
その瞬間、
[ドンッ!]
コンクリートを大ハンマーで思い切り叩いたような音が二人に聞こえた。
「クロウ!恵華が屋上で戦っているのよ!
ルイス……いや、もしかしたらさっきのあの男かも!」
「チッ!」
クロウは舌打ちをすると、突然L,Bを首に当て始めた。
「ちょっと!ここで使うの!?」
「アンナ……鎮静剤頼んだぞ」
クロウはL,B導入剤を首から打ち込んだ。
すると、クロウの露出している肌がみるみる赤くなっていき、息も荒くなっていった。
「スゥーハァー……頭が痛くなってきた。
……ハァ……ハァッハァッハァッハァ……」
「クロウ……大丈夫?」
「……ア"ァァァ……」
クロウは言葉を失ってしまった。
アンナは少し恐ろしくなり、静かに立ち上がり中腰で後ろへ下がろうとした瞬間、クロウはアンナの方へ振り向き、息を荒らげながら近寄って来た。
「ちょ……ちょっとクロウ?ねぇ!聞こえる!?」
アンナの声は届いていないように見える。
クロウは恐ろしい形相で、まるでアンナを殺そうとしているかのように目の前で立ち止まった。
やばいわ……クロウの意識が。
するとクロウはアンナの肩を掴み出した。
「痛っ!クロウ……痛い……クロウ……」
「ヴゥゥゥ……」
クロウは唾液も垂れ流しで獣のように唸っていた。
殺されるかもしれないとアンナは目を瞑り、こうなったのは自分のせいだと神に祈ろうとした。
すると、いきなり掴まれた肩を回され、クロウに背を向けた状態された。
次に何をされるかと思いきや、クロウはアンナに掛けられている手錠を両手の指で鎖の部分だけ掴み始めた。
[バキンッ!]
物凄い力で鎖を破壊した。
「凄い……クロウ?意識は大丈夫なの?クロウ?」
アンナは手錠を壊してもらってすぐにクロウに問いかけるが、形相も変わらず話しもできない。
アンナは鎮静剤を思い出し、スカートをめくり上げてベルトを取ろうとした。
「きゃっ!」
今は打つなということなのか、クロウはアンナの肩を再度掴み軽く突き飛ばし、唸りながら窓の外を見始めた。
アンナは、クロウにやるべきことをやった後に鎮静剤を打てと言われたように思え、クロウの背後へ回り背中に額をつけて囁いた。
「分かったわクロウ。
恵華の所へ行ってあげて……完全に自我を失わないでね。
私も後から必ず行くからね」
アンナがそう言い渡すと、クロウは窓の方へ突進し窓ガラスを蹴破って外へ出ると屋上に飛んで行った。
「クロウ……」




