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二十二【謎の男】

「おい……おい?大丈夫か?」


 クロウの呼びかけにアンナは目を開くと、すぐ目の前にクロウの顔が。


 状況を確認すると、男が横で頭と腕が吹き飛び無惨な姿で死んでいた。


「きゃっ!!

 ……銃声が二発聞こえたから私も撃たれたのかと思ったわ」


「あ〜、始めに相手の銃を吹っ飛ばしておかないと撃った反動で引き金引かれたらシャレにならねぇだろ?」


 クロウは説明をしながらアンナの顔に男の腕を吹き飛ばした際に着いた返り血を自分のジャケットの袖で拭いてあげていた。

 顔を拭かれながらもアンナは放心状態でクロウを凝視する。


「人の顔見ながらぼーっとすんな!……おい!」


 クロウはアンナの頬を軽く叩き、正気に戻そうとしているとアンナは目覚めたように素に戻り礼と謝罪を始めた。


「ありがとう、ごめんなさい。もしかして他の皆も来てくれているの?」


「当たり前だ。俺には記憶がねぇけど家族なんだろ?そりゃ動くに決まってんだろ?」


「……迷惑かけてごめんなさい」


 アンナは謝りながらクロウの腕から流れる血を見てまた泣き出してしまう。

 泣くなとクロウは慰め、アンナの腕に掛けられている手錠を手に取るが、しっかりした本物の手錠で鍵を使わなければ開かないようだ。

 鍵がある訳もなく、クロウもピッキングの知識もないのでどうにもならない。


 アジトに帰るまで無理だと思い、とりあえずアンナにルイスが何処にいるか話を聞き出した。

 するとついさっきまでルイスはこの部屋にいたらしく、クロウと恵華がすぐそこ迄来た事が分かると、部下に後を任せてもう一人の部下と窓から出て行ったらしい。


 ルイスはまだ近くにいる。


 クロウはひとまずアンナを安全な場所に避難させようと恵華に頼もうとして振り返り、恵華が廊下の方で他の部下を相手にしている事にクロウは今思い出す。


「そういやアイツ……」


 廊下から何も聞こえなくなって、先程から外の方で銃声が鳴っていた。

 もしかすると恵華じゃないかと思い、クロウはここで少し待っていろとアンナに言った。


 アンナに自分の着ていたジャケットを掛けて恵華の所へ向かおうと立ち上がると、アンナが「待って!」と顔と肩でクロウの足を抱き止めた。


「クロウ、ルイスの部下に変な男がいるの。そいつだけ何も喋らないし妙な雰囲気で……ルイスはその男とクロウをぶつけようとしていたわ」


「……」


 しかし、クロウからしてみればこの組織の人間は誰一人覚えていなく、全員マフィアで普通でないと思っているので、特に不思議ではないという感じでしかなかった。


 アンナも組織全体を把握している訳でもなく、幹部の人間を全員知っているわけでもないようだ。

 しかし何処となくおかしかった事をアンナはクロウに必要以上に訴える。


「だから何だぁ?注意しろって事だろ?とりあえず恵華連れてくるから後でな」


「先にその男とエリザがルイスとは別の方向に出て行ったのよ!だから!恵華が今相手にしているのは……」


「エリザ?」


 聞きたい事は山程ある。

 分かる事は恵華が相手にしているのは二人でアンナも知らない得体の知れない奴も居るということ。

 尚更早く行かなければとクロウが向かおうと振り向きざま足を踏み出すと、


「待って!!」


「っな!」


[ビターーーン!]


 アンナに次は両足で両足を掴まれ、その場でクロウは勢いよくコケてしまった。



 ――その頃恵華は、屋上で二人を相手にしていた。


[パンッ!パンッ!パンッ!パンッ……]


 重力の壁で二人からの銃撃を弾き続けている。

 屋敷の中で散々恵華に銃弾を放った後に、クロウの邪魔をされたくなかったら屋上までついて来いとエリザに言われ、恵華はクロウから遠ざけられてしまっていた。


 屋上に着くなり、エリザは恵華を笑いながら男と共にマガジンを何度も交換しながら銃を撃ち続けているが、恵華には傷一つつけられない。

 マガジン予備がなくなったようで、銃撃が止み、


「あんたのその壁……いい加減ウザいわ〜。

 もう私の弾なくなっちゃったじゃない?」


「前から言ってたじゃないですかぁ〜?そんなんじゃ恵華は殺せませんよってぇ〜(笑)」


 前からこんな事をしていたのか、エリザも分かっていたかのように銃を捨てた。

 隣の男もそれを真似するように銃を捨てる。

 恵華はそこで男の妙な雰囲気を感じ取った。


 この人なんだろう?なんか凄くキモい……。


 エリザはニヤケながら男の背後に回り、首元に何かをコソコソとした後、後ろに下がり始めた。


「ルイスからクロウが現れたらやれって言ってたけどー、別に試す位は良いよねぇ〜(笑)」


「クロ様がって、どう――はっ!」


 ふとした瞬間、恵華の目の前まで瞬時に男が踏み込んで来ていた。

 間合いを取ろうと恵華が後ろに下がったと同時に、恵華でもついて行けない速さで腹に強烈なアッパーを食らってしまい、ぶっ飛ばされてしまった。


「っ痛!!腕が……」


 恵華はとっさに腕でガードしたが、体が飛ばされる程の威力。

 無事で済むはずがない。


 やばい……折れちゃった……何あの速さ……。


 恵華はガードした右腕が折れてしまった。

 恵華は小さな体ながらの筋力は他の人間とは度を超えた強さを持っているのが、物理的防御や耐久性は普通の女子と大差無い。

 重力の壁も人間の微力な磁力には反応できないために直で受けてしまった。


「ほぉーーーーー!す、すごーーい!

 こんな面白い物ルイスの奴どっから持ってきたんだ!?見てて痛快だねぇ~!」


 エリザは恵華の吹っ飛ぶ様を見て焦りつつも興奮している。


「……エリザさんって本当変わりませんねぇ〜。

 臆病人任せなところが素敵ですよぉ(笑)」


 恵華は危うい状況にも関わらずエリザを挑発。


「……こいつを黙らせろ!!」


 エリザの一言で男が再び動き出し、恵華の目の前まで地面が割れる程強く踏み込み、一度のステップで飛んできた。


 恵華は男が突進してきた来たタイミングで素早く移動し、背後に回り込みつつその勢いで首に強烈な回し蹴りを食らわす。

 普通人間ならば骨が折れる程の威力。

 男は避けることもせずもろに当たった。


 しかし、男は微動だにせず顔色一つ変えない。


 っ痛〜、何この硬さ……人間じゃない!


 相手の間合いに入っているため、恵華は一度距離を取ろうとした瞬間、男に髪を掴まれてしまった。


 抵抗しても鋼のように硬い腕。

 どうにも出来ない力の差。


 そのまま男は髪を掴んだまま持ち上げ、床に顔から思い切り叩きつけた。


「カハアァッ!」


 恵華は強打に思わず声を上げてしまう。

 叩きつけられる寸前に使える左腕を守り、折れた右腕でとっさに頭部を守ったが、体もあちこち打撲状態となってしまった。


「よ、よぉーし!よくやった!!後はアタシがやるからさがれ!……おい!……おい!!」


 エリザが後は自分がと男を止めようとするが、命令を受け入れない。

 すると次は恵華の髪を放し、首を掴み持ち上げだした。


 そのまま男は恵華を絞め殺そうとしている。

 エリザも焦り、必死に命令を繰り返す。


「おい!もういいって言ってんだよ!そんなに殺りたいんなら周りに転がってる奴等の首でも締めてな!……おい!聞け!!」


 周りにはクリス達が銃撃戦の際に潰したと思われる男達の死体が転がっていた。


 しかし男は恵華から手を離そうとしない。

 エリザは自分の捨てた銃が弾切れなので、男が捨てた銃を拾い発砲した。

 銃弾は恵華を持ち上げている腕や肩に命中するが、男は全く効いていない。


 さすがに恵華も限界か、意識も朦朧とし、瞳を閉じてしまった。


 も……もう意識が……クロ様……クロ様ぁ……。


 すると、諦めてしまいそうになる直前に掴まれた首から男の手が離れ、恵華の浮いた体が落とされたように地面に降ろされた。


「ゴホッゴホッ……!!」 


 咳き込みながら何がどうしたのかと男を見ると、そこには男の顔面を片手で掴んでいるクロウの姿が。

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