二十一【躊躇無き殺害】
考えなしに銃を撃っては人の肩の関節まで外し、クロウ自身も人を殺しているのにも関わらず、なぜここまで慣れたように冷静なのだろうと過去の自分を疑っていた。
クロウは両腕が使えなくなった男を立ち上がらせ、また案内を再開させた。
階段に行くと、恵華が銃で撃ち殺した男が胸から血を流し倒れており、銃も落ちていた。
それをクロウは拾って恵華に使えと手渡すと、
「あっ、要りません!と言うか持てません。身に着けてる金属はどっか行っちゃうので(笑)」
「……なるほどね」
重力の壁を使う時の問題だろうと何となくクロウは恵華の言っている意味を理解し、拾った銃を捨てた。
階段を上がり二階に着いて見渡すと、一階と同じような作りだった。
長い廊下で見渡しは良い。
道案内をさせているこの男の言う事が本当ならば、ルイスの部下はもうほとんど屋敷には残っていないはず。
二階はとても静かだった。
それに、気付くといつの間にか外の銃声の止んでいる。
このままアンナの居る部屋に突っ込もうとクロウは盾代わりにするため、男に銃を突きつけ肩を掴みながら進む。
しばらく廊下を進むと男が口を開いた。
「……あそこの、一番奥の部屋だ」
一番端の角部屋だった。
一見なんの変哲もない部屋の扉なので、中は普通の部屋なのかと男に聞くと、他の部屋に比べて中は広く、天井も高いようだ。
人質を捕え、数人で待機するのには一番良いと角部屋にしたようだ。
必要であれば、クロウは窓からの侵入も考えたが、このまま扉から行くと恵華に伝え、先行させている男に扉を開けさせた。
[ガチャッ……]
[――ダダダダダダダダダダダ!!]
「!!」
部屋の扉を開こうとノブを回した瞬間、中からマシンガンで乱射されてしまった。
盾にしていた男は即死したが、そのおかげでクロウは無事だった。
恵華もとっさに重力の壁を作り無傷。
そのままクロウは死んだ男を前で盾にしながら後退するが相手は撃つのを一向に辞めない。
相手の乱射により、扉に無数の穴が空いた事で少し中が見えてきた。
撃たれながらも中を覗くと、一人の男が扉の向こうで銃を撃っている姿が見えた。
すると恵華がクロウの前に出て銃弾を防ぎ、銃弾を弾きながらクロウに問いかける。
「クロ様!どうしますか!?」
ここには隠れる場所もない。
このまま恵華に守ってもらい続ける訳にもいかない。
相手の弾切れを待つのも得策だとクロウも恵華も頭の中で考えるが、相手もこっちがここまで来た事でアンナを他の場所に移動させられてしまうかもしれない。
クロウは恵華にこのまま重力の壁を出したまま部屋に入れるか頼んだ。
「ゆっくり……前に進むくらいなら……」
恵華は両手を前にかかげ、重力の壁に集中しながらゆっくりと前進する。
しかしながら、扉の前まで来て恵華は止まったまま動けないようだった。
「どうした!?開けられねぇのか!?」
「す、すいません!やっぱりこの状況だと歩くのがやっとです!」
恵華は集中状態で銃弾を弾くので精一杯だった。
ドアの金具も壊れてしまっているようで、重力の壁で近いてもビクともしない。
クロウ仕方ないと盾にしていた男を捨てて恵華の後ろで銃を構え様子を伺う。
「恵華!相手がリロードに入るまで気合い入れろ!俺が合図したら壁を解いた後すぐにしゃがめ!」
恵華に次の行動を伝えた後に、クロウは扉から真正面に銃を構え、丁度恵華の後頭部辺りに狙いを定める。
そして数秒後、激しい銃声がピタッと止んだ。
「オラァァ!!」
クロウの気迫と同時に恵華は重力の壁を解いてしゃがみつつ横にズレた。
恵華の後頭部が沈むと同時にクロウも一気に連弾発砲。
するとクロウは四発目を撃つと、穴だらけの扉に突如突っ込み飛び込んで行った。
「えっ!クロ様!」
恵華はまさかのクロウの行動に驚き、急いでクロウの後に続こうと腰を上げた瞬間、後ろから一発の銃声。
恵華の反射神経は鋭く、瞬時に重力の壁を発動させ、ギリギリで銃弾を弾いた。
後ろを振り向くとルイスの部下と思われる男女二人。
「!!」
恵華はその女を知っているようで臨戦態勢に入る。
「恵華ぁ〜久しぶりだねぇ!相変わらずクロウのケツ追っかけてんだぁ(笑)」
この女は何者なのか、恵華とクロウを昔から知っているようで、笑い飛ばした後にすかさず銃でもう一人の男と共に恵華に発砲。
恵華は重力の壁を作り銃弾を弾きながらその女を睨む。
"エリザ"さん……いつの間にあの人の傘下に入ってたの?もう一人は誰だろ?なんか変な感じがする……。
「何ですかぁ!?邪魔しないで下さいよ〜!ぶち殺しますよ〜」
「良いねぇー!やってみな!!」
女はエリザ。
恵華と因縁があるのか、組織内の構成員だが、クロウファミリーが結成されてからは、ほとんど顔を合わせる事もない人間。
チッ!クロ様、ごめんなさい。
恵華は心の中でクロウに謝り、この二人をそのまま相手にする事にした。
――その頃部屋の中に突っ込んだクロウは、部屋の中に転がり込みつつ瞬時周りを確認した。
部屋に入る前に銃を撃った時の弾丸は、マシンガンを乱射していた男をしっかり仕留めていた。
すると、部屋の片隅で頭から血を流している別の男に手錠をかけられている女が銃を突きつけられている。
「うぅ……クロウーー!!!!」
女は泣きながらクロウの名前を叫んだ。
この女が?
「!……私がアンナよ!ごめんなさい!こんな事になって……」
「オラ!黙ってろ!大人しくしろ!殺すぞ!!」
男はクロウの流れ弾を頭に銃弾がかすったのか、顔半分が血だらけで興奮状態にある。
泣きっぱなしのアンナを見ると殴られた後に口を拭わされたのか、口元に赤みがあり胸元と服に血が付着している。
それを見たクロウは頭に血を上らせながらもこの部屋にルイスが居ない事に疑問を持ちつつ、男に銃を向けて撃鉄を起こす。
「……もうここは俺等が囲っちまってる。
女を今すぐ放せ。じゃなきゃぶっ殺す」
男はクロウの言葉に動揺を隠せない。
ここまでに会った男達もクロウの"殺す"の言葉には焦っていたが、一切冗談やただの脅しに思われないところを見ると今まで相当な事をルイス達にやってきた事が窺える。
先程から男はなぜか窓や部屋の扉の方を何度もチラ見していることにクロウは気付いた。
仲間を待っているのだろうか。
すると、先程の廊下の方から微かに話し声と銃声も聞こえてくる。
恵華!?
恵華が部屋に入って来ないのは他の部下とやり合っているのだろうと思いながらも、クロウはまず目の前のアンナをどうにかしなければいけないと恵華を信じ、早くケリをつけてアンナを解放させようとクロウは銃を構えながら一歩前に出た。
「お前その女が誰の"物"か分かってやってんのか?」
「くっ……状況が分かんねぇのか!?」
「あぁ?状況って?」
「俺の銃が見えねぇのかってんだ!!こいつの頭を吹っ飛ばすぞって……」
「──うるせぇんだよ」
[パパーン!!]
二発の銃声が部屋に響き渡り、アンナは驚き目を閉じた。




