二十【囁かな変化】
恵華は驚きの連続。
しかし、なぜアンナの居場所を聞かずに撃ったか疑問を問うと、
「そんなん……こいつの視線がイラついたからだ!」
クロウはそう言い放つと、突如振り向き恵華の後方へ銃を向けて即発砲した。
恵華は振り返り見ると、天井にあるダクトカバーが開いており、その下にクロウに撃たれたと思われる男が倒れていた。
男は片腕をかすったようで、肉が少し抉れて吹き飛び血が吹き出している。
悲鳴を上げ、苦しみながらも男はクロウを睨みつける。
「クロウ……てめぇ……記憶なくしたんじゃねぇのかよ!」
クロウは記憶をなくしたことにより、クロウファミリーの中では戦力外と思ったのだろう。
しかし、それに驚いているのは恵華も同じで、先程からクロウを凝視。
クロウは男に近寄ると、すかさず男に銃を向けだした。
「拉致った女は何処だ?すぐに言わなきゃお前も頭吹っ飛ばす」
すると、先程殺した男とは違ってすぐに自供し始めた。
「待てっ!話す!教える!そもそもあの女を拉致ったのもまたルイスの独断だ!!」
また……。
クロウは引っ掛かりつつも男に話しを伺った。
結局のところはエドガーが言っていた"過去"のクロウへの怨み。
あの時クロウとエドガーでボスの所へ出向いた時に、記憶をなくしたクロウを脅して手なずけようとしたところでエドガーが現れた。
ルイスはコケにされ、そしてイラ立ち、そのとばっちりを部下達が受けた後に、ルイスはなぜかボスに呼ばれその場から居なくなった。
その直後だった。
そこへアンナがヘリで到着してしまい、警備をしている部下にクロウ達の居場所を訪ねていると、屋敷からルイスが足早に出てきては、アンナを無理矢理別邸へ連れて行ったようだ。
「ん?あのおっさん……ボスは関与してねぇのか?」
「そ、そんな事分からねぇよ!俺等はボスの命令でルイスの傘下に入ってるからあいつに逆らえねぇし、あの女をここで囲んでる理由も知らねぇ!」
何か土妻が合わねぇな……。
嘘をついているようには見えないが、ボスや幹部連中は現在本邸の方には居ないとのこと。
アンナが捕えられた後、すぐに何処かへ出てしまったらしい。
ボスの命令なのか、それともクロウを怨むルイスの企てをボスが容認しただけなのか。
しかし、今はそれよりもアンナだとクロウはまた尋問するため男の頭に銃を突き付けてルイスが拉致った女は何処だと尋問を始めた。
男は先程頭を吹っ飛ばされた男をチラ見。
黙っていると殺されると思った男は、震えながら口を開き、アンナの居場所を吐いた。
どうやら、アンナは二階の一番奥の部屋に居るらしい。
そこには勿論ルイスやその部下が十人程囲っているようだが、クロウ達が来たことによって、大半は面白半分に殺してやろうと屋上へ向かい出て行ったので、今その部屋にはルイスを入れて三、四人だろうと男は言う。
「……そうかい。そんじゃあ案内頼むわ」
そう言って男を立ち上がらせると、身体検査をして他に武器を所持していないか確認をし、足に隠し持っていた銃を一丁奪った。
そして背中に銃を突きつけながら人質として連れて行き、二階のアンナが居る部屋へ案内をさせた。
しばらく歩くと、ボスの居た本邸程ではないが、吹抜けの大きな階段までたどり着いた。
男によれば、ここを上がればルイスの部下が待ち構えているはずだと言うので、クロウと恵華は警戒を高める。
そして先頭を歩かせている男が階段の一段目に足を踏み込んだ瞬間、
「止まれ!」
下からは確認できないが、階段の上から男が大声で叫んできた。
三人は止まり、クロウがそれに対して女は何処だと問いかけると、銃を人質に渡して解放しろと命令される。
クロウはそれに応じる気はない。
このまま通さなければ人質を殺すと返すと、更にあの女が酷い事になると相手も脅し返してきた。
「はぁ!?更にだぁ?……てめぇ等アンナに何してくれたんだ!?ぶっ殺す!!」
クロウは人質にしている男の後頭部に銃を突き付け撃鉄を起こした。
男は本当に殺されると思い、いきなりしゃがみ込んだと思いきや、振り向きざまにクロウの腰に飛びかかってきた。
それをクロウは防ごうとしたが左腕は使えないためにそのまま男のタックルで後ろに倒れ込んでしまった。
男は腰に腕を廻し奪われた銃を取り返そうとした。
クロウは振り解こうとするが、右手の銃を離す訳にはいかないのでどうしようもなく、男のこめかみに銃を持っていき、頭を撃ち抜こうとした。
すると、
[バコン!]
恵華が男の横っ腹を蹴り上げて怯ませた後にクロウから銃を奪い、階段の方へ向かって発砲した。
クロウは男を押さえ込み、恵華が銃を撃った方へ目を向けると、先程の声の主であろう男が階段から転げ落ちて来た。
どうやらこちらで揉み合っている時に恵華がクロウを助けようと蹴り上げ離した瞬間、二階の方から気配があり、見ると男は顔を出していようだ。
そしてこちらに銃を構えようとしていたところに気付いた恵華は、とっさにクロウから銃を取り上げ撃ったようだ。
「……銃を使えない訳じゃないんだな」
「もちろんですよぉ!でも……うぅ〜、クロ様の銃は肩にきますぅ〜」
恵華は銃の反動で肩を痛めてしまい、腕を下ろしてグッタリしている。
クロウは押さえ込んでいる男の胸ぐらを掴み、お前は盾にすると言って男を床に俯けに倒した。
すると、何をするのかと恵華も黙って見ていると、男の肩を片足で踏み押さえながら腕をガサツに引っ張り上げて、肩の関節を無理矢理外した。
「うっ!うあぁぁーー!」
男は激痛に悲鳴を上げるが、クロウは構わず逆の肩の関節も同じように外した。
その行動に恵華はまた不思議そうにクロウに問いかけた。
「あの……クロ様?本当に記憶戻っていないんですか?」
「あ?あぁ……全く」




