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十 【子孫】

 

 暗い闇の中の夢に現れた声はガイアだったことに気付いたクロウ。

 依代にしている子供の声とは全く違うが、ジハードの話しで合点がいった。


「あの野郎、俺の夢の中で語りかけていやがったのか。意味わかんねぇ!そんなもん直接言われなきゃ分かんねぇっての!」


「夢の中に?あの方らしいですね。

 それでも伝えてはいたのですから改めて話しを聞きやすいのではないですか?」


 それでもクロウには分からなかった。

 "ここまで抗ったのは貴様が初めての事"とガイアは言っていたが、身に覚えがない。

 やはり記憶が欠落する前の出来事を言っているのだろうか。


「結局はガイアに直接聞かなきゃ分からねぇこともあるんだなぁ〜……それじゃあ何で俺があいつの末裔なのかはどうだ?神だ魔王だって言ってんのに、何で()()の俺なんだ?不明な点が多過ぎてこれについてはマジで分からねぇ」


 クロウとガイアについてはもっとも重要な部分の話し。

 しかしながら、これについてもジハードにも分からないと言う。


「魔力核を持ち合わせているので貴方は確かにあの方の末裔です。地球の人間として生まれている訳ですから、普通なら人間と人外のハーフと言ったことになります。ですが……」


「どうした?」


 ジハードが分からないのはガイアと人間が交わったことにあった。

 これは祭りでジハードの口から直接聞いたことでもあるが、結局ガイアから聞き出せなかった。


「分からないのです……人間が魔王様の子を宿したと言うことは、その時に依代となる身体を手に入れた上でということ。そこまでしてなぜ人間と番いとなられたのかが分かりません」


「ん〜そんなん簡単だろ?地球に来て惚れた女でもできたんじゃねぇの?そんで我慢できなくなって無理にでも身体手に入れてズッコン!バッコン!だ。ダハハハッ!」


[バチンッ!]


 ふざけたクロウの頬にジハードはビンタを一発かました。


「……話しを戻しましょう。魔王様の子は魔王様です。それは人間の生命力核など神の生命力核と同等でありません。人間としての遺伝子など一割も遺伝できず、子を宿しても人間ではありません。貴方の言うところの堕天使が誕生するだけです。それはその後に何代人間と交わろうが変わることはありません」


 人間と神が子を生しても、生まれるのは神。

 しかし、クロウがガイアの末裔ということには矛盾が生じてしまう。

 ハーフが生まれないのなら百パーセント人外種。

 天使や悪魔となるはずだが、クロウは間違いなく人間の生命力核を持ち合わしている。

 実験体となって能力が使えるようになり、今は神のみが使える魔法も扱えるようだが、アメリカに来るまでは普通の人間。

 生まれた時から見た目も人間だ。


「私が分からないのは、なぜそうしたのかです。元の私達の世界にも神話がありまして、そもそも神の使いは子を作ることはないとあります。それは魔力核を子が継承してしまうので神が禁じたからです」


 難しい話しにクロウはビンタを受けた頬を擦りながら煙草に火をつける。


「っつーことは、あいつは禁じられてんのにズッ……交わってしまったが為に俺がこんなんになってるってこと?なんだそりゃ!?」


 ガイアの勝手な行動から自分が今の状況になっていると思い、煙草に火をつけて何度も思い切り煙を吸って吐いてを繰り返す。

 しかし、理由がなければガイアがそんなことをするはずがないとジハードは言う。


「何か思惑があったのでしょう。

 ですが、さんざん暴れまわっていた時期に私達が神の裁きを受けると分かると、この世界に連れてきてくれたのは魔王様です。そんな方が安易に人間と交わるでしょうか?そもそもその時に生まれた魔王様の子は何処へいったのでしょう。末裔とは何でしょうか?……不思議ではないですか?魔王様の生命力核と魔力核を受け継いでいるのですよ?神は寿命など無縁に等しいのですから」


 ジハードは不思議な言い回しをする。

 だが、確かにそうだった。

 自分が本当に末裔だとするならば、クロウ自身の親は何なのだろうと不思議に思った。

 そして別の問題でも、なぜ日本では何もなくアメリカに来てから能力が覚醒し魔法もすぐに使えたのか。


「ジハードはどう思うんだよ?ガイアが言ってたけど、この世界に来て五千年なんだろ?なんであいつのガキを知らねぇの?俺は自分の親父から先祖の話しを一つしか知らねぇ。

 それも人外種とは全く無縁の話しだ」


「……感じ取れはしました。

 私だけだと思いますが、地球から発せられる魔王様以外にもう一つ似た魔力をこの遠い星からでも気づきました。ですが、その魔力は十数年で消え去ってしまい、それから一度も感じ取れたことはありません。これについてもあの方に何度か聞いたことはありますが答えてはくれませんでした」


 生命力が消え去ったのなら死んだということなのだろうが、それだと矛盾が生じる。

 考えられるとすればガイアが自分の子を殺したことになるとジハードは言うが、そうすればクロウが魔力核を持っている説明がつかない。


「わっかんねぇ!どうなってたにせよ、子孫に魔力が継承されていくんならあいつのガキは何とか生命力を隠しながら生きてガイアみたいに……ちょっと待て、おかしくねぇか?」


「やっと気づきましたか?そう、おかしいのです」


 クロウはジハードの話しから一つの矛盾を見つけた。

 それは神の使い、神の生命力核を持つ者が()()人間と交わろうとも人間にはならないということ。


「もし神の使いが子を作り、子が子を作り繰り返すと、この世界はどうなるのか。しかもあの時魔王様は邪心の生命力核を持つ堕天使。その子孫が数をなせばどうなるか分かりません。いずれ対抗する魔王様や私は殺されてこの宇宙は滅んでいたでしょう」


「なんじゃそりゃ!?滅ぶ!?じゃあ俺があいつの力を使えるのは先祖代々受け継がれたとかじゃなくて……」


 クロウも何か気づいたようだが、確信が持てない。

 というよりも、考えれば考えるほど理解が難しくなったからだ。


「そうです。これをできるのは神の力を持つ者でも一握りと聞いたことがあります。

 神が神だということを隠し、下界で生きる為の術。

 クロウ、貴方は貴方でもありますが、あの方の子孫の"魂"をも持っているはずなのです。

 それを私達の世界では――」


 クロウは答えを頭の何処かで分かってはいた。

 それでもジハードが答えるまで何も言わず息を呑んだ。


「輪廻転生と言います」


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