七 【人の優しさ】
この千年たらずの歴史の中で急成長したこの世界でも、昔は弱肉強食。
建国する前の穏健派と過激派が別れる前は殺し合いも多かった。
その中でも戦闘に使える能力を持たない者、特に女性のほとんどが奴隷だったようだ。
「ほとんどの女が?……今でもそれなりに奴隷はいるんだろ?もう面倒せぇから祭りまわって奴隷見つけたら飼い主殺して城に連れてくれば良いんじゃねぇ?」
話しの内容にイライラとしてきたクロウはとんでもないことを言い出す。
「やめて。そんなこと駄目に決まってるでしょ。今の現状を打破する案をお義父さまに出さないと動けない。ハァ……せめてここに修道院でもあれば」
無いものは自分で創るしかない。
その前にどうして奴隷が少なくなっていったのか知りたいところだが、タスリーフに住む人外の中で人間と変わらない普通の人種を除いても、当時を知っている者は極小数。
「ここに居るじゃないですかぁ〜!ガイアと当初からこの世界を見てきたハーちゃん!」
ジハードに抱きつきながら笑いかける恵華に、戸惑いつつもそれを否定した。
「いえ、私はいけません。確かにこの国が創られる前から見てきましたが、私達は何も関与していません。ですが、生命のある所に争いは付き物。
争いがあれば強者と弱者が生まれ、奴隷も必ず存在するでしょう。それが自然の摂理です」
数千万年以上生きるジハードが言うのであれば、種族問わずにどこの世界でも奴隷は存在するのだろう。
なので、それを分かっているガイアも何も手を打たずに今の状況を見守っているだけなのかもしれない。
その言葉にイラ立ちを見せ始めたクロウはジハードに突っかかり出した。
「そんじゃあ何だ、ジハードからしたらこいつ等が奴隷になっても自然の摂理か?別世界の俺がこの件に関与するのはおかしいのか?魔法で何とかできるならしたいっつーのも自然の摂理に反することなのか!?」
「私は龍で龍神族。貴方は人種です。手を貸したいのなら良い事だと思います。
ですが、どんな世界でも年月をかけて自ら問題を片付けて生活を豊かにしていくものですから、力の使い方は間違わないように」
「俺はそういう話しをしてんじゃ……まぁ良い、分かった」
クロウは何か言いたげだったが、ジハードが過去に人種と関わり何か辛い経験をした事を思い出し、話を切り替えた。
「要は中央区の者だってことにすれば良いんだろ?とりあえず今日はメアルと同じような服に着替えて楽しめ!周りには俺等も居るし、何よりこの国の姫も一緒だから誰も何も言ってこねぇしできねぇよ。分かったな?」
「……うん!」
子供達は喜び、ミルルと共に身なりを整えるため部屋を出て行った。
すると、メアルがクロウに話しかけたそうにモジモジとしている。
「何だよガキんちょ」
「ガキんちょって言うな!
その……あの……ありがとう。あいつ等は能力も持たないただの人種だからボクと離れなれたら奴隷以外に生きる道がないんだ。だから、本当にありがとうございます」
メアルはクロウにだけでなく、皆に向かって礼をし始めた。
メアルだけは能力持ちで稼ぐ術があるが、他は何もないただの子供。
自分のことだけでなく、仲間のことを想うメアルに全員感動していた。
そんなメアルを恵華はたまらず後ろから抱きしめながら頭を撫でる。
「メアは偉いですねぇ。大丈夫、レイちゃん達がきっと何とかしてくれるから。それに今はクロ様もいるし――ですよねっ!」
恵華は振り向きざまに手を貸しましょうと言わんばかりにクロウの顔を見る。
「……あぁ。できることが思いついたらなんでもやってやる。レイチェル、何か作りたい物でも何かあれば俺に言ってこい。魔法を使ってでも手を貸しやるから」
「ありがとうクロウ。私が考える政策が整い次第、何かやって欲しい事ができるかもだから、その時はお願いします」
話をしていると、メアルは感動のあまり声をあげて泣き出してしまった。
それに貰い泣きをした恵華もメアルを胸に抱き、「良かったね」と言って二人は大泣き。
わんわん泣くメアルに合わせるように恵華も声をあげて泣き出し、レイチェル達が笑いながらなだめていると
「お前等いい加減泣き過ぎじゃ!ミルル達が戻ったら祭りに出るんだからもう泣きやめ!」
「うっ……うぅ……はい……」
クロウが怒鳴り、二人は涙を拭ってその姿を見合うと、今度は互いに酷い顔だと爆笑し始めた。
泣いたり笑ったり忙しいやっちゃな……ん?
すると、泣き笑いしている恵華達をジッと見つめるジハードが目に入り、何を考えているのだろうとクロウは思わず念話を送った。
「「どうした?こいつ等を見て何か思うことでもあるのか?」」
「「いえ……私は人というものを知ってはいますが理解はしていません。ですが、恵華達を見ていると人とは"このようなもの"という固定概念を捨てなければなりませんね……」」
ジハードの知っている人種とは様々な世界で傍から見てきた中でのことを言っているのだろう。
しかし、人の中へ混じり何かを見て触れ合うことで、見方が変わりつつあるようだ。
「「お前が今まで何を見てきたのかは知らねぇけど、人の汚ぇ部分を理解できているならこの先楽なもんだ。これからはもっと人の良い部分を教えてやる」」
「「良い部分……そうですか。よろしくお願いします」」
今この時から目の前にある人の優しい部分を、これからのジハードがたくさん見ることがあるように願い微笑むクロウだった。
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