六 【親無しの現状】
転移魔法で一足先に城へ戻ったクロウは、皆の居る部屋には戻らずに屋上に転移していた。
すると、城内の生命力を隅々まで探知して再度転移魔法を使って飛んだ。
空間の開いた先は少女が幽閉されている地下牢。
生命力を辿って牢の中に直接転移したので、すぐ目の前には手足を鎖でつながられた少女が横たわっていた。
当然牢の前で監視する警備兵は驚く。
「な、何だ貴様!?一体何処から……クロウ様!?
困りますよ!すぐに出てください!」
「悪ぃな。すぐに出て行くから見逃してくれ」
クロウは少女の容態と正体を確かめに転移してきた。
しかし、少女の生命力切れは深刻なものだった。
普通ならば食事や睡眠ですぐに回復する生命力だが、少女は眠りについても回復は微々たるもの。
俺には良く分からねぇけど、これが生命力核が傷ついたってやつなのかな?
少女は生命力切れ寸前にも関わらずに能力を使い続け、その上恵華の強烈な一撃をもらい勝負はついた。
しかしながら、その後に気絶しながらも生命力を振り絞って能力を使ったことで、生命力核に大きなダメージを負ったと思われる。
こんな小さいガキがなんで。そもそも何でメアル達を攻撃してたんだ……!?
クロウは何気なく少女の頭に手を当てると、生命力の形がやんわりと入ってきた。
何処かで覚えのある生命力、それはブランドンの別邸で殺した人造人間だった。
やはりガイアの言う通り、この少女は人造人間。
それでも、それが分かったところで謎しか出てこない。
メアルにやった魔法で……ふんっ!
クロウはメアルの頭の中を覗いた魔法を少女にかけ、記憶を探ろうとした。
しかしながら、気絶しているせいで少女から何も見えてこない。
少女にも思考を働かしてくれないと無意味なようだ。
クソッ。無理矢理記憶をこじ開けるってのは無理なのかよ!
どうやらこの魔法は探るというよりも、勝手に覗いているといった魔法のようだ。
探るとなると他人に干渉するということになるようで、全く機能しなかった。
血を飲ませればできるってことだよな?でも……やめとくか。
よく知らない人外種、そして血を飲ませた人造人間が恵華達のように何もなく起き上がるのか分からないので、クロウは記憶を探るのを諦めた。
なぜこの世界で人造人間がいるのか、また地球で造られた少女だとしたら、どうやってこちらの世界に誰が送ったのか。
「このガキから直接聞くしかねぇよな。
ハァ〜……嫌な予感がする」
この時、クロウの中で自分が身を置いている"組織"、そして政府が構成した人造人間軍隊"人外殲滅部隊"が脳裏に浮かんだ。
この世界は世界政府からガイアが守ってるっつってたよな。
もし地球が絡んでるとしたら……面倒くせ。
真相はまだまだ分からないが、とりあえずのところは少女が目を覚ましてくれないと話しにならない。
何ができるわけでもないので、牢の中に居るクロウを凝視する警備兵に謝り、転移魔法を使い出て行った。
皆の居る部屋に行くと、丁度リルルとミルルが戻ってきていて子供達をメアルに会わせていた。
メアルの無事が分かり子供達は泣きながらメアルに抱きつき礼を言っている。
すると、リルルがクロウに戻りが遅かった理由を聞き始めたが、言う必要がないと思いクロウは少女の所に行ったことは言わずにはぐらかした。
「よーし、そんじゃあガキ共の身なり整えたら祭りに行くか!」
「えっ!お祭り?お祭りに行くの?」
クロウの言葉に子供達はざわつき始め、メアルやリルル達の表情を伺いだした。
「ボク達は貧民街の親無しだよ?中央でそれがバレたら……」
「あん?何かまずいことでもあるのかよ?」
「……」
タスリーフでは身寄りが居ない、もしくは財産もなく幼くして身寄りが居なくなった者は、生きる為に他人にすがらなければ生きてはいけない。
そこで、中央区で貴族や生活に余裕のある者、そして商人はそのような子供を自分の私有資産として預かり、食事や寝床だけを保証して労働をさせる者もいる。
要するに奴隷である。
「人を物みたいに扱う奴等の所になんて行きたくないし、力もない女の子は何させられるか……」
表面上では労働を手伝わせて食わせる。
人が生きていく為に仕方のないことでもあるので、暗黙の了解でタスリーフ内では奴隷を認められていた。
しかし、実際は国が認めていない奴隷。
レイチェル達は仕事の手伝いだけではないと言うメアル達の話しを聞き入っていた。
「ボク達の知ってる商人の奴隷になった女の子が貧民街に逃げて来た時に聞いたんだ。仕事を朝から晩まで手伝って、一日一回のご飯を貰うためにやらなきゃいけないことがあって……」
「何を……ですか?」
すると、レイチェルが恐る恐る話しを聞いている中で、窓際で話しを聞いていた恵華が震えているのが見受けられた。
顔を伏せているので、怖がっているのか怒りに身を震わせているのか分からない。
「主人の仕事が終わったら一緒にお風呂に行って手伝いをしなきゃいけなくて、その時に――」
[ポンッ]
突然、クロウが怯えた様子で話す子の頭に手を置いて話しを止めた。
「もういい。教えてくれてありがとよ……恵華?大丈夫か?」
話しの内容は、そこに居る誰しもが想像ついた。
それよりも、様子のおかしかった恵華を気遣っての行動だった。
「え?はい!大丈夫ですよぉ!」
「……そっか」
恵華は顔を上げると、何もなかったように笑っていた。
こいつの話しを先読みして気持ち悪くなっただけか。
クロウ、恵華、レイチェルは人間だが、多少なりとも独裁国家や奴隷制度を知っている。
それでも間近でそのような事が本当にあると分かり、クロウはショックで仕方なかった。
それ以上にショックを受けていたのはレイチェル。
奴隷とされる者が居ることは分かっていたが、全て甘く見ていた。
リルルとミルルも知ってはいたものの、奴隷がどのような扱いをされているか詳細は知らなかった。
「考えれば分かるだろ?今の話しだけでも女の子って時点でどう扱われるか想像はつく。女の貴族や商人なら男の子がその対象だな」
レイチェルは昨日にガナフ国王と話し、身寄りのない子供を保護する児童養護施設などを設けたいと話した。
しかし、どれ程の人数を囲わなければいけないのか、どれ程の人材が必要なのか、話しを深めると夢物語となってしまって話しは終わってしまった。
それでもレイチェルの何とかしたいという姿勢はガナフ国王にも伝わり、反対はしないとのこと。
「っつーことは何?その件はお前が勝手にやれみたいな感じ?」
「お義父さまは忙しいから。でも、昔と比べたら奴隷は少なくなった、状況は良くなったと言っていたわ」
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