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四 【ガイアも知らない過去】

 

 無我夢中で周りの知らない者達に対して無双している時、アンナから受け取り自分で打ち込んだL,B導入剤のことを思い出した。

 そのことから予想すると、過去の出来事と思われる夢の中で無双するクロウは、自分の力で特殊能力"限界突破"を引き出すことに成功していたようだった。


「「何で今こんな夢を……俺が望んだから?」」


 すると、血まみれとなった部屋に二人の男が拍手をしながら入ってきた。

 振り向いて男達を見ると、組織のビッグ・ボス、ブランドン。

そしてもう一人がドクだった。


「やっと自らの意思で能力を引き出したか。

 次の仕事までに自在に使えるようになっておけ」


「できることなら魔法の使い方も制御できれば良いのじゃが……こればっかりはあの悪魔に出てきてもらわんと」


「「悪魔ってガイアの事だよな?あいつの存在を知ってるってことは……あれ?これっていつの出来事なんだ?ん?あれ?」」


 過去は過去でも、いつ頃の出来事か分からずに考えていると、視界が段々と暗くなっていき何も見えなくなってしまった――。


自室で寝ていたクロウは目覚め、部屋の壁や窓を見て夢から覚めたことを確認する。


「ふぁ〜……。

なんか寝たのに寝た気がしねぇ。疲れた」


 夢で見た事をしっかりと覚えているため、疲労が取れたように思えず、気だるそうにあくびをしながらクロウは起き上がり、バルコニーへ出て煙草に火をつけた。


「「……なるほどな」」


「ぶぼぉあ!?ゴホッゴホッ!」


 煙を吸い込んだ途端突然頭の中でガイアの声が聞こえ、驚いて咳き込んでしまった。


「「先程の過去の夢は、俺がまだ貴様の中へ容易に入ることができなかった時の出来事だ。まさかあの小娘を助けるがために潜在能力を引き出せたとはな」」


 クロウは慌てて部屋に戻って鏡の前に立つと、目の結膜が真っ赤に染まっている。

 寝ている間にガイアはクロウの中へ入り融合していた。


「ガイア!てめぇ勝手に入ってくるんじゃねぇよ!」


「「昨日言ったであろう、少し魔力供給すると。

 そんなことより、どうなのだ?夢のように能力は使えそうか?」」


 クロウの魔力の自然回復に合わせて、ガイアも融合により魔力を分けて貰いに融合していたようだが、クロウの見た夢までも見られていた。

 ガイアの話しによれば、おそらく夢の出来事は恵華のホームステイ先での事件よりはかなり後の事だと思われる。

 まだその頃はクロウ自身の力で特殊能力を使うこともままならず、対人外種戦闘員としては仕事をしていなかった時期。


「あの部屋で俺はいつもあんな事やってたのか?」


「「分からぬ。以前にも言ったと思うが、容易に貴様と融合することができるようになるまでは時間がかかったのだ。まだその頃は貴様の意識に入れる事すら稀であった時だからな」」


 クロウの中に簡単に入れるようになったのは魔力の波長が上手く合うようになってから。それはルイスによるアンナ拉致事件の時からのようだ。


 恵華がいたんだからあいつに聞けば良いか。

 っつーか、今何時だ?どのくらい寝てたんだろ?


 部屋の時計を見るともう昼過ぎ。

 ガイアはガナフ国王と話しをするので祭りへは先に行ってくれとクロウの中から出ていき、祭りはもう始まっているようなのでメアルの部屋に向かった。


 廊下に出ると、メアルの部屋の前に兵士が立っている。

 レイチェル達がもう来ているのだろうと部屋に入ると全員昨日とは打って変わり、レイチェルまでもがドレス姿から普通の町娘の様な服装をしていた。


「おはようございますクロ様!見てくださいこれ!こっちでの普段着!可愛くないですか!?」


 リルルとミルルはいつも通りだが、他はまるで旧西洋時代の服装。

 確かに昨日の祭りではそのような服装の人種が多く居たが、改めて見ると本当に異世界にいるという実感を持ったクロウ。


「コスプレみたいで良いと思うけど、ジハードのって……それチャイナドレスじゃね?似合うけど、横から太ももめっちゃ出てるよ?それで良いの?」


「私は衣服については詳しくはないので、皆さんにお任せしただけです。ですが……あまり見ないでください」


 少し恥じらいを見せるジハードは可愛かった。

 ミルルが言うには、タスリーフは地球の様々な文化が混ざりあっているので、どんな服装をしていても特に問題はなく目立つこともないようだ。

 色々な年代、色々な国からこの異世界へ送られた者が多く生活するタスリーフならではの異世界文化。


「クロウも着替えますか?それならこちらで用意しますが」


「いや、俺はこのまんまで良い。っつーか風呂入りたいから浴室だけ案内頼むわ。メアルみてぇに貴族のガキんちょ風にされたらたまらんから(笑)」


「は、はぁ!?貴族のガキんちょって、これってそんな格好なの!?じゃあ着替える!」


 クロウの一言で騒ぐメアルを周りが必死になだめている間に、クロウはリルルに浴場を案内され笑いながら部屋を出て行った。


「今日はちゃんと街をまわりたいから案内頼むわ!まずは地球には無いような物が売ってる所に行きてぇ!」


「それは良いけど、まず私達はメアルの友達から探してあげないと」


「あっ、そうだったな」


 忘れていたがそれでもクロウは面倒だとは思わずに祭りを楽しむ前にしっかり協力すると言い、その姿勢にリルルは少し驚いていた。


「どうしたの?絶対に面倒とか言うと思ったけど?」


「あいつは自分を身代わりに一緒に居た奴ら逃がしたんだろ?カッケーじゃんか。このまんま仲間ほっといて祭りに行っても後ろめたさで楽しめねぇと思うし」


 自分が不甲斐ないばかりに迷惑をかけた罪滅ぼしもあるとクロウは言うが、リルルは何も言わずにただ笑みを浮かべながら歩いていた。


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