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三【夢の中での無双】

 

 地球から転移してくる前に聞いたばかりの"人造人間"が、ここで出るとは思わなかったクロウは少し驚いた。

 頭を掻きながら再度煙草を取り出し火をつけ、ため息混じりに煙を吐いた。


「人造人間を造るのがここの世界でも流行ってんの?」


「知らぬわ!俺にも皆目見当もつかん。これについては俺が国王と話しをする。城の者で生命力を感知できる者が居ても人造人間など分かるまいしな」


 人造人間を実際に感じ取り、目で見たガイアだからこそ判断ができるが、他の人外種からすれば少女の生命力に多少の違和感を感じる程度。

 ジハードが少女の種族が分からなかったのは、人間が混じっていた事によって感じたことのない生命力だったからなのだろう。

 クロウはイラ立ちながら吸いかけの煙草を魔法で燃やし消し去り、自分の部屋に戻ろうと歩き出した。


「チッ……問題はあるだろうけど、そんなん後回し。これから色々と関わんなきゃならなくなるんなら、やっぱ過去の自分を思い出さなきゃなんねぇ。でも明日は祭りを楽しむぞ!やりたいこともあるし!だからもう寝る!」


「あっ!クロ様おやす――」


[バタンッ!]


 恵華の挨拶も返さずにクロウは勢いよくドアを閉め出て行った。


「……話しは明日にしよう。貴様等もあれから数時間しか寝ていないのだ。ゆっくり休め」


 ガイアも今日は国王の所へ行くのをやめて、自分の部屋に戻り休むと出て行った。

 それに連れて恵華も立ち上がり、ベッドの横に置いてある戦闘によって汚れたバッグを取ると中をあさり出した。


「メアはここでゆっくり休んでください。起きたら適当な時間に部屋にまた来ますから。お腹が空いたら……はい!恵華のお菓子置いておきますね!」


「ありがとう!なにこれ?向こうの世界のお菓子?」


 メアルは恵華に貰ったスナック菓子などをすぐに開けてさっそく食べだした。

 寝る前に良くないと止めようとしたが、空腹だったのだようで凄い勢いで食べている。


「明日はみんなでご飯食べましょうね!祭りでも色んな物を食べましょう!」


「うん!!」


 喜ぶメアルに恵華は微笑み、ジハードを連れて部屋を出て行った。


「それでは私も与えられた部屋に行くとします」


「ハーちゃん!一緒のお部屋で寝ましょう!」


「いや、私は……恵華!あなたは怪我しているのですから走らないで!」


 恵華はジハードの腕に手をまわし、そのまま自分の部屋まで腕を引いた。


「ハーちゃんと色々とお話ししたいんですよぉ!だから今日は恵華と一緒にいましょ♪」


 話しをしたいと言いながら、どこか寂しげな恵華にジハードは仕方なく連れられ部屋に入っていった。


 クロウは部屋を出て行き、さっさと自分の部屋に戻るとそのままベッドに倒れるように横になっていた。

頭に浮かぶ様々な面倒事を深く考えない様にして無理矢理眠りについた。

 すると、クロウはまた過去の出来事だと思われる夢の中へ――。



 …………。


「「あれは……恵華?」」


 暗闇の中から、まるで実験室のような広く綺麗な部屋に風景が移り変わった。

 すると、なぜか目隠しをされて男に銃を横から突きつけられる恵華の姿が現れだし、男がこちらに向かい叫んでいる。


「一人で()()()()のならこれならどうだ?

 この女とは同じアジア人同士で打ち解けてきていた様だが、こういう使い方もできる」


「……」


 今回の夢は外から自分の姿を確認できる夢ではなく、そのまま自分自信が経験したと思われる主観視点の夢だ。


「「初めて明晰夢っぽい感じだけど……自分の意思で動けねぇ。これじゃあ前見た夢と変わんねぇな」」


 まるで自分の意思とは別に、勝手に手足が動いている感覚が気持ち悪かった。

 夢の中のクロウ自身は地べたに膝をついてしゃがんでいる様だが、恵華は怖がることなく逃げようともせずにジッと立っているだけで動こうともしない。


「「これはどんな状況だよ?」」


なぜこんな夢を見ているのだろうと思っていると、クロウは男に向かい手を差し伸ばし大声でやめさせようとしている。


「「は!?なんだこの腕!俺、血だらけじゃねぇか!!」」


 鏡があるわけもないので自分の姿が確認するできないが、差し伸ばした手には大量の血が付いていた。

 すると、男はその言葉を無視をしてゆっくりと銃の撃鉄を起こした。


[……カチャッ]


 その音に反応し、クロウの脳内では引き金が引かれたかのように視界が突然色を無くしモノクロの世界となった。


「うぅぅぅぅぁああー!!」


「「すげぇ〜叫んでいやがる……なんじゃこれ!目がおかしくなったのか?壊れたビデオみたいになりやがった!」」


 周りが白と黒しか見えなくなると同時に、クロウは恵華に銃を突きつけている男に向かって突進した。

 十メートル以上離れているのに、これでは走っている途中で恵華が撃たれるかもしれない。

 しかしどういう訳か、男は全く動く気配がなく余裕で目の前までたどり着くと、男の顔面を右ストレートで吹っ飛ばし瞬殺。


「「うわっ!殴っただけで顔が潰れた!」」


 それを何処からか見ていたのであろう新たに銃を持った男達が何人もぞろぞろと出てきた。


「「これはヤバいだろ!俺はどうなってんだ!?早く恵華と逃げろ!!」」


 クロウは止まらなかった。

 立っている恵華を肩に抱えだし、何かが覚醒したかのように銃をこちらに構える男達を次々と殺していった。


「「どういうことなんだ……なんで俺以外の奴等は皆動かずに黙って殺されてんだよ!?」」


 殴る、蹴る、顔を掴み握り潰す、人間とは思えない怪力で一撃で確実に潰していった。

 とは言うものの、その光景は不思議なものだった。

 止まっているように見えるが、発砲された火薬の火花は確認できる。

 しかし、そんな事には何も気にせずモノクロの世界で動きを見せない男達に対して無双し、部屋に入って来た数十人を全員秒殺してしまった。


「「気持ち悪ぃ。部屋中がモンスターが食い散らかした後みてぇだ。

 今のってスローモーションになったってことか?いや……俺の動きは普通だった。ってことは、俺が超スピードで素早く立ち振る舞ってた?」」


 恵華を助ける為に出すことができた力。

 それは何となくだが、感覚だけは似ている経験をしたことを覚えていた。


「「あの感じ……薬で限界突破した時と同じ感覚だ」」


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